ちびまる子ちゃんの作者、さくらももこのエッセイにポンテギにまつわる話があったので、ちょっと紹介します。
韓国の人達は、「ポンテギ、ポンテギ」といいながら、スナック菓子のようにポイポイ口に運んで食べていた。聞けばスタミナのつく食べ物だという。栄養があるらしい。主人と私は「一応ポンテギの味を知っておくのも良いのではないか」等と言い合い、買ってみる事にした。
ポンテギは、小さな紙袋いっぱいに詰められ、50円位で私達の手に渡された。近くで見ると、なるほど昆虫のさなぎの形をしており、虫特有のテラテラとしたこげ茶色の照りを発して不気味に輝いている。
正直言って食べたくなかった。ポンテギの入った紙袋を持っているのも嫌であった。私と主人は長い間ポンテギを口に入れてみる勇気が出ず、道端に立ちすくんでいた。
しかし、いつまでもポンテギを食べないわけにはゆかぬ。別に食べずに捨てても良いのだが、そうしたら「……あの時、せっかく韓国まで行って、ポンテギを買ったのに食べなかったんだよな……」という後悔が一生つきまとうであろう。だから食べぬわけにはゆかないのだ。
まず、主人が一個口にいれた。そして、噛んだとたんに「うっ」という声を発し、「虫を噛んだら、こんな感じがするであろう、という体験だ」という感想を述べた。
次は私の番だ。ポンテギを一個つまんで口の中に放り込む。主人は「噛めよォ、噛まなきゃポンテギを堪能したことにならない。ただ飲みこむなよォ」と指令を出している。私は主人にあおられて、ひと思いに噛んでみた。……クシャッという潰れた感触と,中から出たポンテギの熱い体液……。
私は一瞬にして後悔の虜になった。この体験を後悔と言わずしてなんと言おう。体験しない後悔よりも、してしまった後悔の方が,後悔度は大きかった。
さくらももこの『ももこのいきもの図鑑』(1998集英社文庫)より、「ポンテギ」でした。
さくらももこさんは,文章がうまいね。
060404ポンテギの話(1)
060406ポンテギの話(3)
060407ポンテギの話(4)
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