犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

竹島/獨島をめぐる日韓の主張(2)

2012-09-17 00:10:42 | 近現代史

 続いて、第二次世界大戦終了後の状況についての日韓の主張を見てみましょう。

 まず韓国の主張。

3)第2次世界大戦の終戦後、獨島は韓国の領土に戻り、大韓民国政府は確固たる領土主権を行使しています。

 1943年12月に発表されたカイロ宣言には、「日本は暴力と貪欲によって略取した全ての地域から追い出されるべきだ」と明記されており、1945年7月に発表されたポツダム宣言もカイロ宣言の履行を規定しています。

 また、連合国最高司令官総司令部は、1946年1月の連合国最高司令官覚書(SCAPIN)第677 号及び1946年6月の連合国最高司令官覚書(SCAPIN)第1033号を通じ、獨島を日本の統治・行政範囲から除外しました。

 こうした経緯から、獨島は第2次世界大戦終戦後独立した大韓民国の不可分の領土となり、これは1951年のサンフランシスコ講和条約でも再確認されました。

 次に日本の主張。

5.第二次大戦直後の竹島

1.連合国は占領下の日本に対し、政治上または行政上の権力の行使を停止すべき地域、また、漁業及び捕鯨を行ってはならない地域を指令し、この中に竹島を含めました。しかし、これらの連合国による規定には、いずれもこれは領土帰属の最終的決定に関する連合国側の政策を示すものと解釈してはならない旨が明記されています。

2.関連の連合国総司令部覚書(SCAPIN)の内容は以下のとおりです。

(1)SCAPIN第677号
 (イ)1946(昭和21)年1月、連合国はSCAPIN第677号をもって、一部の地域に対し、日本国政府が政治上または行政上の権力を行使すること及び行使しようと企てることを暫定的に停止するよう指令しました。
 (ロ)その第3項には、「この指令において、日本とは、日本四大島(北海道、本州、九州及び四国)及び約一千の隣接諸小島を含むものと規定される。右隣接諸小島は、対馬及び北緯30度以北の琉球(南西)諸島(口ノ島を除く)を含み、また次の諸島を含まない」とし、日本が政治上・行政上の権力を行使しうる地域に「含まない」地域として鬱陵島や済州島、あるいは伊豆、小笠原群島等に並び竹島も列挙しました。
 (ハ)しかし、同第6項には、「この指令中のいかなる規定も、ポツダム宣言の第8項に述べられている諸小島の最終的決定に関する連合国の政策を示すものと解釈されてはならない」(ポツダム宣言第8項:「日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国竝ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシ」)と明記されています。

(2)SCAPIN第1033号
 (イ)1946(昭和21)年6月、連合国は、いわゆる「マッカーサー・ライン」を規定するSCAPIN第1033号をもって、日本の漁業及び捕鯨許可区域を定めました。
 (ロ)その第3項には、「日本船舶又はその乗組員は竹島から12マイル以内に近づいてはならず、またこの島との一切の接触は許されない。」と記されました。
 (ハ)しかし、同第5項には、「この許可は、当該区域又はその他のいかなる区域に関しても、国家統治権、国境線又は漁業権についての最終的決定に関する連合国の政策の表明ではない。」と明記されています。

3.「マッカーサー・ライン」は、1952(昭和27)年4月に廃止が指令され、またその3日後の4月28日には平和条約の発効により、行政権停止の指令等も必然的に効力を失うこととなりました。

 韓国側は、上記SCAPINをもって、連合国は竹島を日本の領土と認めていなかったとし、韓国による竹島の領有権の根拠の1つとしています。しかし、いずれのSCAPINにおいても領土帰属の最終的決定に関する連合国側の政策を示すものと解釈してはならないことが明示されており、そのような指摘が全く当たらないことは明らかです。

 なお、我が国の領土を確定したのは、その後に発効したサンフランシスコ平和条約です。このことからも、同条約が発効する以前の竹島の扱いにより、竹島の帰属の問題が影響を受けるということがないことは明らかです。


6.サンフランシスコ平和条約における竹島の扱い

1.1951(昭和26)年9月に署名されたサンフランシスコ平和条約は、日本による朝鮮の独立承認を規定するとともに、日本が放棄すべき地域として「済州島、巨文島及び鬱陵島を含む朝鮮」と規定しました。

〈参考 サンフランシスコ平和条約からの抜粋〉

第二章 領域
第二条
(a) 日本国は、朝鮮の独立を承認して、済州島、巨文島及び欝陵島を含む朝鮮に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。

2.この部分に関する米英両国による草案内容を承知した韓国は、同年7月、梁駐米韓国大使からアチソン米国務長官宛の書簡を提出しました。その内容は、「我が政府は、第2条a項の『放棄する』という語を『(日本国が)朝鮮並びに済州島、巨文島、鬱陵島、独島及びパラン島を含む日本による朝鮮の併合前に朝鮮の一部であった島々に対するすべての権利、権原及び請求権を1945年8月9日に放棄したことを確認する。』に置き換えることを要望する。」というものでした。

3.この韓国側の意見書に対し、米国は、同年8月、ラスク極東担当国務次官補から梁大使への書簡をもって以下のとおり回答し、韓国側の主張を明確に否定しました。

 「…合衆国政府は、1945年8月9日の日本によるポツダム宣言受諾が同宣言で取り扱われた地域に対する日本の正式ないし最終的な主権放棄を構成するという理論を(サンフランシスコ平和)条約がとるべきだとは思わない。ドク島、または竹島ないしリアンクール岩として知られる島に関しては、この通常無人である岩島は、我々の情報によれば朝鮮の一部として取り扱われたことが決してなく、1905年頃から日本の島根県隠岐島支庁の管轄下にある。この島は、かつて朝鮮によって領有権の主張がなされたとは見られない。…」


 これらのやり取りを踏まえれば、竹島は我が国の領土であるということが肯定されていることは明らかです。


4.また、ヴァン・フリート大使の帰国報告(→リンク)にも、竹島は日本の領土であり、サンフランシスコ平和条約で放棄した島々には含まれていないというのが米国の結論であると記されています。

 韓国は、1943年の米英中の首脳によるカイロ宣言を持ち出します。

 そこには「日本は暴力と貪欲によって略取した全ての地域から追い出されるべきだ」とあり、暗に、獨島がその地域に該当するかのように示唆しています。しかし、竹島の領土編入は武力で奪取したものではなく、平和裡に閣議決定のもと行われたものですから、無理があります。

 カイロ宣言は、日本が第一次世界大戦以後に得た南洋諸島、清から得た満州や台湾、そして太平洋戦争中の占領地を日本に放棄させることを謳ったもので、上の朝鮮に関してはその後の項目で「朝鮮の人民の奴隷状態に留意し、やがて朝鮮を自由かつ獨立のものとする」と規定しています。米英中の首脳が、「暴力と貪欲によって略取した全ての地域」に朝鮮の土地を含めていなかったのは明らかです。

 また日韓ともに、二つの連合国総司令部覚書(SCAPIN)に言及しています。

 677号では日本の領土に含まれない地域として鬱陵島、済州島、伊豆諸島、小笠原とともに竹島も入っています。またいわゆるマッカーサー・ラインを規定した1033号には、日本が竹島から12マイル以内に近づいてはならない、と記されています。

 韓国はこれをもって、アメリカが獨島を日本の領土から除外し、韓国の領土と認めた証拠としています。

 一方、日本は、それぞれの覚書に「国境線の最終決定ではない」という意味のことが明記されていることから、これは日韓の国境線とは関係がないと主張しています。

 さらに日韓はそれぞれ1951年のサンフランシスコ平和条約にふれています。韓国の主張は、先の引用ではあっさりしたものですが、外交通商部のPDF資料の「獨島に関する一問一答」のQ13に、あらためてサンフランシスコ条約が触れられています。

 条約では、日本が放棄する地域が「済州島、巨文島及び鬱陵島を含む朝鮮」となっていて、SCAPIN677では入っていた獨島がなくなっています。

 これを日本は、アメリカが竹島を韓国領ではなく日本領とした証拠と見ています。

 一方韓国は、Q13の解説で、「同条項には、3000余りある韓国の島の中で、済州島、巨文島及び鬱陵島だけが例示的に挙げられているのであり、同条項に獨島が直接的に明記されていないからといって、獨島が日本から分離される韓国の領土に含まれないことを意味するものではありません。1943年のカイロ宣言や1946年の連合国最高司令官覚書(SCAPIN)第677号などに示された連合国の意思を勘案すると、同条約に基づいて日本から分離される韓国の領土には当然獨島が含まれると見るべきです」と説明しています。

 これについて日本は、条約の草案を見た韓国が、条約に獨島を入れるようにアメリカに求めたにもかかわらず、アメリカはその要求を拒否したことを、「ラスク書簡」という証拠を挙げて説明しています。

 「ドク島、または竹島ないしリアンクール岩として知られる島に関しては、この通常無人である岩島は、我々の情報によれば朝鮮の一部として取り扱われたことが決してなく、1905年頃から日本の島根県隠岐島支庁の管轄下にある。この島は、かつて朝鮮によって領有権の主張がなされたとは見られない。」

 さらに追い打ちをかけるように、ヴァン・フリート特命報告書(機密文書、1986年に機密解除)には、

「合衆国は日本の主権の下に残すことを決定し、平和条約の日本が所有権を放棄する島々には含めなかった。韓国は合衆国の竹島に関する意向を内々に知っていたが、合衆国はその意向を公表しなかった。合衆国は竹島を日本の領土であると考えるが、紛争への介入は拒否した」

とあり、アメリカが竹島を日本領と考えていたことが明らかになりますが、韓国は当然、これらの資料に言及することはありません。

 さらに日本は、1952年にアメリカが竹島を訓練区域として使用し続けること、1953年にはその使用を中止することを日米行政協定でとりきめたことから、アメリカが竹島を日本領を考えていたことを証拠付けています。

 日本は、「竹島問題」の起源を1952年の李承晩大統領による「海洋主権宣言」(李承晩ライン)に求め、その不法性を主張していますが、韓国はいっさいこれに触れません。李承晩ラインに国際法上問題があることを、韓国も気づいているのかもしれません。

 こうして見てくると、竹島/獨島をめぐる日韓政府の論争は、あきらかに日本に軍配が上がります。韓国が、国際司法裁判所への付託をかたくなに拒否しているのは、もし国際的な場で論争をしちゃうと負けることが確実だからなのでしょう。

 なお、Q14の回答によれば、韓国は1954年に国際司法裁判所付託を拒否した際、

 「日本政府の提議は司法手続きを装ったもう一つの虚偽の試みに過ぎない。韓国は獨島に対する領有権を持っており、韓国が国際裁判所でこの権利を証明しなければならない理由は何一つない。
 日本帝国主義による韓国の主権侵奪は、1910年に完結するまで段階的に行われ、1904年日本は強制的に締結した「韓日議定書」や「第1次韓日協約」を通じてすでに韓国に対する実質的な統制権を獲得した。
 獨島は日本による韓国侵略の最初の犠牲である。日本の獨島に対する非合理的で執拗な主張は、韓国国民に日本が再び韓国侵略を試みようとしているのではないかという疑念を抱かせる。韓国国民にとって獨島は単なる東海上の小さな島ではなく、韓国主権の象徴である」

との立場を表明し、その立場は「現在も全く変わりありません」とのことです。

 さてみなさんは、日韓の主張のどちらに説得力を感じたでしょうか。


コメント (19)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 竹島/獨島をめぐる日韓の主... | トップ | 幻の波浪島 »
最新の画像もっと見る

19 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
中国のデモ (スンドゥブ)
2012-09-18 13:16:50
中国でデモが活発化して、うかうか外を歩けない状況です。
警察が黙認しているという報道もありますが、下記のようにデモに関わっているというものまであります。
http://www.epochtimes.jp/jp/2012/09/html/d89533.html
返信する
Unknown (アホか)
2012-09-18 13:54:47
国境の、しかも絶海の孤島であれば対岸の諸国各々に一定の関与があったろうに、オール・オア・ナッシングの硬直した議論ばかりだと何も進まないだろうさ。
そもそも西洋伝来の国際法ですから、土地は全て神様のもの、管理責任を果たし、地上を遍く法の光で照らしさえすれば誰が管理しても差し支えないのだろうと思われます。
返信する
併合前の韓国 (アホか)
2012-09-18 14:20:52
朝鮮語の標準化が行われて居らず、島嶼などの地名には訓読みが多かったようだ。
済州島の南側西帰浦に「セソム」と呼ばれる島があります。地元の人たちは「セ(茅)+シマ(島)」の意味で呼んでおりましたが日帝強占期(笑)には日本人が漢字で「鳥島」と表示したらしいですが、今は「セソム」に戻っております。

石島についても、「トルソム」若しくは朝鮮南部の発音から「トクソム」と呼び習わしていたとしても何ら違和感はないですね。
犬鍋さんは印象を薄めたいのか「訛り」と表現しましたが、標準化によって石=トルの訓読みに統一される以前ですので、南部朝鮮の標準的発音でよろしいかと。
返信する
Unknown (アホか)
2012-09-18 14:30:10
日本側の説明は条約解釈上はかなり苦しいですね。
確かに「ラスク書簡」や「ヴァン・フリート特命報告書」では日本領と云っていますが、いずれも非公式です。
日本が韓国よりも先に独立して居れば、或いは日本側の解釈も可能かもしれませんが、事実は韓国が先に独立していますので、国際法の原則上は先に独立し既に行使されている韓国の権利を明示的に取り上げる必要があるのですが、日本側は全くその事には触れずにスルーです。
子供の言い訳みたいで面白いです。
返信する
韓国は日本より先に独立した (パボヤ)
2012-09-18 15:51:26
アホさんのおっしゃる「韓国は日本より先に独立した云々」というのは竹島の権限になんの意味もありません。
それとも韓国は日本より先に独立したのだから当時主権の行使を制限されていた日本の島々(たとえば小笠原でもどこでも)を韓国は自由に割譲し好き勝手に自国領とすることができたとでも仰りたいのかな?
韓国が日本より先に独立した云々は竹島の権限の正統性を議論する上でまったく関係ありません。
歴史上に突然現れた独島の呼称の言われトルソムだかなんだかの話も学術的な根拠というよりも後付けのこじつけとしか思えません。
子どもの言い訳よりたちが悪い冗談としか思えませんな(笑)
返信する
韓国の独立 (パボヤ)
2012-09-18 16:17:02
そもそも韓国が日本より先に独立しようが後だろうが、竹島(独島)は1905年以前に一度も韓国(朝鮮)領だったことがないんだから(笑)
返信する
Unknown (アホか)
2012-09-18 18:53:04
パボヤさんが何を云いたいのかさっぱり分かりません。

もしかしたら国際法上確立されていない「残存主権(潜在主権とも云う)」を持ち出した議論をなさりたいのかもしれませんが、その場合当方は全く興味ありません。

私の投稿で指摘させていただいたのは、国際法の確立した原則ですので、そこを完全スルーで何を仰りたいのか全く理解できません。
私の指摘とは別にご自身の主張を述べられるのは自由ですが、その場合は私の投稿と関連づけられますとはなはだ迷惑なのでご遠慮願いたい。
返信する
Unknown (アホか)
2012-09-18 19:46:33
犬鍋さんの文章を読み返してみましたが、やはり旧来日本政府が犯してきた論理的欠陥は現在も尚修正されていないとの感想を持ちました。

非公式の「ラスク書簡」や「ヴァン・フリート特命報告書」が法的な意味を持たないことは云うまでもありませんが、連合国が独島を韓国に統治させた状態で独立させたことも事実です。
現実に統治され権利が行使されている状態にも係わらず、それを当事者不在の条約で剥奪できるのか、はなはだ疑問に思うわけです。
また、それについての合理的な説明は皆無です。
根本的にこの点について何ら説明がない以上、残念ですが日本政府の説明には論理的な欠陥があると云わざるを得ないでしょう。
返信する
韓国の独立・・・ (パボヤ)
2012-09-19 09:02:12
韓国自らの力で独立を勝ち取ったものではなく日本の敗戦と連合国の戦後処理によって朝鮮半島は日本から分離され独立させられた。
もしこれが韓国自らが日本から勝ち取った独立であったならその後の日韓関係は大きく違っていたでしょうね。

それにしてもアホさん相変わらずですな(笑)
返信する
スルーといえば (パボヤ)
2012-09-19 09:08:57
日本の1905年の竹島編入より以前に韓国(朝鮮)が竹島(独島)を領有したことがないという最大のポイントをスルーしておいて都合の良いことだけを言うあたりアホさん相変わらずですな(笑)
韓国は日本より先に独立したから好き勝手に日本の領土を割譲する権利があったとでもお考えですか?
返信する

コメントを投稿

近現代史」カテゴリの最新記事