土曜日の朝,もう一人の出張者といっしょに日系人の多いリベルダージに行きました。彼は以前の駐在時代の知り合いが多く,日本のおみやげを渡すという。
最初に行ったのが散髪屋さん。同僚が駐在時代に通っていた店だそうです。親父さんは日系人で,頭を刈ってもらいながら移民以来の苦労話をいろいろ聞かされたらしい。客がいなければ,散髪してもらおうかと思っていたそうですが,やはり日系人らしきお客さんがいたため,私を待たせるのが悪いと思ったのでしょう,おみやげを渡して店を出ました。
もう一軒は,健康食品のお店。目玉商品は「癌に効く」と喧伝されているプロポリスです。
実は,同僚は日本の複数の人からプロポリスを頼まれていて,かなり値の張るプロポリスを大量に買い込みます。おしゃべりな日系のご主人は,初めて来た私相手に,店にあるさまざまな商品を熱心に説明してくれる。
曰く,
この石鹸はアマゾンの薬草で作っていてニキビがなくなるよ,
これは糖尿病に効くよ,
酒を飲む前にこれを飲んでおくと悪酔いしないよ…。
あまりにも一生懸命なので,何も買わないのは悪いような気がしてきます。申し訳ばかりに,プロポリスの錠剤一瓶と,悪酔い防止のための「ガジツ」という薬を買いました。
私の父が食道癌を発病したのは48歳。ちょうど今の私の年齢です。
(癌は遺伝だっていうし,そろそろ予防を心がけたほうがいいかな)
もう一つのガジツを買うことにしたのは,2日前に蜂蜜入りカシャーサでひどい悪酔いを経験していたからです。残り一週間の出張で酒を飲む機会もまだありそうです。
実は,この日の午後,ブラジル職員の結婚式に招かれている。それがここ,リベルダージの近所なのですね。招待状にあった地図をご主人に見せます。
「ああ,ここね。そんな遠くないよ。タクシーで5分ぐらいだよ」
「歩いても行けますよね」と同僚。
「うーん」と顔をしかめるご主人。
「でも,この途中の道がちょっと危ないからねえ。日本人だと見ると悪いことするやつがいるから…」
(……)
なんでも,つい数日前,駐車中のカップルが襲われ,男性が射殺されるという強盗殺人事件が起こったばかりだそうです。これがサンパウロのもう一つの現実です。
「結婚式はいつ? 3時半? じゃまだ時間あるね。食事はどうするの? 近くにおいしい店があるよ」
ご主人のお勧めにしたがって,この店から目と鼻の先にある,やはり日系人経営の食堂に行きました。
名物は煮込み料理。フェイジョアーダ(→リンク)が定番ですが,私たちは「ハバーダ」というテール煮込みと,「ドブラジーニャ」という牛の胃袋(センマイ)の煮込みを頼みました。どちらも壺入りで供され,塩味ベースでじっくり煮込んであります。これを別の皿に出てくるごはん(インディカ)にかけ,フェイジョン(煮豆)と混ぜて食します。
「どう,おいしいでしょう」
サトー食堂の女主人(日系)が巨体を揺らしながら話しかけてきます。
「うちはサッカー選手もよく来るよ。日本のチームがブラジルに来たときね,選手たちが食べに来て,NHKにも紹介されたよ」
何の変哲もない小さな食堂。プロポリスのおじさんの紹介がなければ,けっして見つけられないお店でした。
食べ終わったあと,また健康食品のお店「ヒロセ」に戻って一休み。「とてもおいしかった」と伝えると,相好くずして喜びます。
「まだ時間あるよね。どっか観光してきなよ。荷物はここにおいてさ」
「お勧めありますか」
「そうね,サンパウロはあんまり見るとこないね。しいていえば美術館かな」
結局,時間をもてあましたわれわれは,ご主人の言葉に甘えてみやげ物の袋を店に預け,地下鉄で10分ほどの美術館に行くことにしました。
あまり期待をしていなかった美術館は,なかなかどうして,巨匠の絵画を多数揃えたすばらしいコレクションでした。入っていきなりルーベンスの大きな肖像画がわれわれを迎えます。「肖像画」をテーマにした部屋には,レンブラントの有名な自画像をはじめ,ゴッホ,ゴーギャン,ピカソ,モディリアニなどが目白押し。その他,ルノワール,ドラクロア,マネ,ロートレックなどの作品,ロダンの彫刻など,あまり美術に詳しくない私にとっても馴染みのある画家の作品を見ることができました。
プロポリスのおじさん,さまさまです。
最初に行ったのが散髪屋さん。同僚が駐在時代に通っていた店だそうです。親父さんは日系人で,頭を刈ってもらいながら移民以来の苦労話をいろいろ聞かされたらしい。客がいなければ,散髪してもらおうかと思っていたそうですが,やはり日系人らしきお客さんがいたため,私を待たせるのが悪いと思ったのでしょう,おみやげを渡して店を出ました。
もう一軒は,健康食品のお店。目玉商品は「癌に効く」と喧伝されているプロポリスです。
実は,同僚は日本の複数の人からプロポリスを頼まれていて,かなり値の張るプロポリスを大量に買い込みます。おしゃべりな日系のご主人は,初めて来た私相手に,店にあるさまざまな商品を熱心に説明してくれる。
曰く,
この石鹸はアマゾンの薬草で作っていてニキビがなくなるよ,
これは糖尿病に効くよ,
酒を飲む前にこれを飲んでおくと悪酔いしないよ…。
あまりにも一生懸命なので,何も買わないのは悪いような気がしてきます。申し訳ばかりに,プロポリスの錠剤一瓶と,悪酔い防止のための「ガジツ」という薬を買いました。
私の父が食道癌を発病したのは48歳。ちょうど今の私の年齢です。
(癌は遺伝だっていうし,そろそろ予防を心がけたほうがいいかな)
もう一つのガジツを買うことにしたのは,2日前に蜂蜜入りカシャーサでひどい悪酔いを経験していたからです。残り一週間の出張で酒を飲む機会もまだありそうです。
実は,この日の午後,ブラジル職員の結婚式に招かれている。それがここ,リベルダージの近所なのですね。招待状にあった地図をご主人に見せます。
「ああ,ここね。そんな遠くないよ。タクシーで5分ぐらいだよ」
「歩いても行けますよね」と同僚。
「うーん」と顔をしかめるご主人。
「でも,この途中の道がちょっと危ないからねえ。日本人だと見ると悪いことするやつがいるから…」
(……)
なんでも,つい数日前,駐車中のカップルが襲われ,男性が射殺されるという強盗殺人事件が起こったばかりだそうです。これがサンパウロのもう一つの現実です。
「結婚式はいつ? 3時半? じゃまだ時間あるね。食事はどうするの? 近くにおいしい店があるよ」
ご主人のお勧めにしたがって,この店から目と鼻の先にある,やはり日系人経営の食堂に行きました。
名物は煮込み料理。フェイジョアーダ(→リンク)が定番ですが,私たちは「ハバーダ」というテール煮込みと,「ドブラジーニャ」という牛の胃袋(センマイ)の煮込みを頼みました。どちらも壺入りで供され,塩味ベースでじっくり煮込んであります。これを別の皿に出てくるごはん(インディカ)にかけ,フェイジョン(煮豆)と混ぜて食します。
「どう,おいしいでしょう」
サトー食堂の女主人(日系)が巨体を揺らしながら話しかけてきます。
「うちはサッカー選手もよく来るよ。日本のチームがブラジルに来たときね,選手たちが食べに来て,NHKにも紹介されたよ」
何の変哲もない小さな食堂。プロポリスのおじさんの紹介がなければ,けっして見つけられないお店でした。
食べ終わったあと,また健康食品のお店「ヒロセ」に戻って一休み。「とてもおいしかった」と伝えると,相好くずして喜びます。
「まだ時間あるよね。どっか観光してきなよ。荷物はここにおいてさ」
「お勧めありますか」
「そうね,サンパウロはあんまり見るとこないね。しいていえば美術館かな」
結局,時間をもてあましたわれわれは,ご主人の言葉に甘えてみやげ物の袋を店に預け,地下鉄で10分ほどの美術館に行くことにしました。
あまり期待をしていなかった美術館は,なかなかどうして,巨匠の絵画を多数揃えたすばらしいコレクションでした。入っていきなりルーベンスの大きな肖像画がわれわれを迎えます。「肖像画」をテーマにした部屋には,レンブラントの有名な自画像をはじめ,ゴッホ,ゴーギャン,ピカソ,モディリアニなどが目白押し。その他,ルノワール,ドラクロア,マネ,ロートレックなどの作品,ロダンの彫刻など,あまり美術に詳しくない私にとっても馴染みのある画家の作品を見ることができました。
プロポリスのおじさん,さまさまです。
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