写真:朝ドラ「おむすび」の一場面
新しい朝ドラ、「おむすび」の舞台は2004年の博多。
主人公、米田結の姉、あゆは「伝説のギャル」なんだそうです。
結の8歳上ということですから、1990年代後半にギャルとして活躍していたと思われます。
実は、私は1996年から2007年まで韓国に駐在していたので、90年代後半の日本の世相に疎い。
ギャル全盛のころは知りません。
ギャルという言葉を三省堂国語辞典で引いてみました。
第8版(2022年)には以下の語釈があります。
ギャル〔俗〕①若い女性。「テニスギャル・ギャルズ」〔1970年代からの用法〕②ファッションのどぎつい少女「ギャル系メイク」(1990年代末からの用法)
①の「若い女性」という意味でのギャルは、第3版(1982年)からあって、
ギャル〔俗〕女の子。ガール。
とシンプル。
これが第6版(2008年)では、
ギャル〔俗〕〔はでなファッションの〕若い女性。女の子。ガール。
となります。
第7版(2014年)では、語義が初めて二つに分かれ、
ギャル〔俗〕①若い女性。「テニスギャル・ギャルズ」〔1970年代からの言い方〕②顔を黒く焼いたりした、ファッションのはでな若い女性。「ギャル系・ギャル語」〔 1990年代末からの言い方〕
そして8版で、
ギャル〔俗〕①若い女性。「テニスギャル・ギャルズ」〔1970年代からの用法〕②ファッションのどぎつい少女「ギャル系メイク」(1990年代末からの用法)
となりました。
第6版は「はでなファッションの若い女性」、第7版は「顔を黒く焼いたりした、ファッションのはでな若い女性」、第8版は「ファッションのどぎつい少女」と、記述内容が少しずつ変わりました。
「はでな」は「どぎつい」という否定的な修飾語に変わり、「若い女性」が「少女」になりました。そして第7版にだけ「顔を黒く焼く」という具体的表現がありました。
実は、三省堂国語の第5版~第7版には、ギャルとは別に「コギャル」も立項されていました。
第5版
コギャル〔俗〕流行のファッションやことばづかいをする女子高校生など。〔「高校生ギャル」の略という〕
第6版
コギャル〔俗〕ファッションがはでで、ことばづかいが乱暴な女子高校生などを呼んだことば。〔「高校生ギャル」の略という〕
第7版
こギャル【コギャル】〔俗〕顔を黒く焼いたりする、ファッションがはでな女子高校生など。〔1990年代からの言い方。もと、大人の女性をまねして遊ぶ女子高校生をさした〕
ここでも、「流行のファッションやことばづかい」→「ファッションがはでで、ことばづかいが乱暴」→「顔を黒く焼いたりする、ファッションがはで」と、記述の変化が見られます。
そして、第8版では「コギャル/こギャル」の項目は消え、「ギャル」だけが残りました。
第5版、6版では、「高校生ギャル」の略という語源を紹介していましたが、第7版ではそれがなくなると同時に、見出し語は「コギャル」から「こギャル」に変わりました。
「コ」は高校生の略ではなく、子供の子なので、見出し語をひらがなにしたのかと思われますが、説明はありません。
三省堂は、『三省堂国語辞典から消えたことば辞典』(2023年)というマニアックな本を出しています。著者は、『三国』の編集主幹を長らく務めた見坊豪紀のお孫さんの見坊行徳。それによると、三省堂からことばを削除する基準は、
・そもそもの存在が確認し難い語(幽霊語)
・時の流れで忘れ去られた語(死語。例:壁訴訟、ダベリング)
・制度の変更などにより消滅した用語(廃語。例:営林署、小荷物)
・モノとして下火になったり、需要が減ったりして、存在感の薄れていった語(例:MD、オート三輪)
・編集方針上ふさわしくないと判断されて削られた語(D、ボイン、タカラジェンヌ、ヅカ)
など。
「コギャル」は、下火になって存在感が薄れた語に当たるでしょうか。
「おむすび」に出てくるのは女子高校生なので、「コギャル」と呼ぶのが正しいように思いますが、第6版の記述にあるとおり(~を呼んだことば)、コギャルは周りの人が呼んだことばで、当人たちは使わず、「ギャル」を自称していたのでしょう。ですから、ドラマの中での使い方が正しいのかも。
ドラマの中での周囲の人の会話から類推すると、2004年の段階で、「ギャル」は流行遅れで存在感も希薄になっていたようですね。
私の4人の娘たちは、私より2年早く、2005年に帰国しました。
帰国時に高校1年生だった次女は比較的校則の厳しい学校でしたが、夏休みになると髪を染めたりして「コギャル風」のファッションをしていたようです。三女は大学に入った2010年頃にかなり「はでなファッション」をしていました。いずれも「遅れてきたコギャル/ギャル」といった感じだったのでしょう。
時は流れ、今は皆、結婚して子どもがいる。
なつかしい思い出です。
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