ならば,協定の原文はどうなっているか。日本版ウィキペディアには,ともに正本である日本語版,韓国語版,英語版が載っています。引用部分は第二条です。
第二条
千九百十年八月二十二日以前に大日本帝国と大韓帝国との間で締結されたすべての条約及び協定は、もはや無効であることが確認される。
제 2 조
1910년 8월 22일 및 그 이전에 대한제국과 대 일본제국간에 체결된 모든 조약 및 협정이 이미 무효임을 확인한다.
(1910年8月22日およびそれ以前に大韓帝国と大日本帝国の間で締結されたすべての条約及び協定は、すでに無効であることを確認する。)
Article II
It is confirmed that all treaties or agreements concluded between the Empire of Japan and the Empire of Korea on or before August 22, 1910 are already null and void.
これを見ればわかるように,問題の部分は,
日本語版では「もはや無効」,
韓国語版では「이미 무효(すでに無効)」,
英語版では「already null and void(すでに無効)」
となっています。
つまり,東亜日報はこの記事を書くにあたり,原文になかった「源泉」という言葉を挿入し,条文を改竄しています。しかし,あとから言い訳ができるように,あえて引用符号なしで記述した。まことに姑息なやり方です。
日韓基本条約締結にいたる交渉の経過は日本ではすでに詳細が明らかにされており(金東祚『韓日の和解-日韓交渉14年の記録』),韓国側は「当初から無効」という表現を主張したが,日本側は頑として譲らず,結局,経済援助資金がほしかった韓国の朴正煕政権は,この部分で妥協し,「もはや無効」という表現で決着したことが知られています。
そして,「もはや無効」という表現を韓国では「当初から無効」というふうに解釈することについて,日本が暗黙の了解を与えた。その結果,韓国では条約締結時から今にいたるまで,「当初から無効」の解釈をとり続けているわけです。
これと似たことが,日清戦争が終わったあとの下関条約についても行われている。下関条約では,「朝鮮の独立」が実現されたのですが,それ以前に朝鮮が清の属国であったことが明らかになるのを恐れ,韓国の教科書では,この項目が伏せられている。
韓国民は,自国にとって都合の悪い歴史上を事実を知らされない状態が続いているのですね。このような状態で,日本と韓国の国民同士が共通の歴史認識をもつことは不可能だと思います。
今回の「進歩的知識人」の宣言は,この条約の解釈を変更することであって,日韓基本条約の見直しを主張するのに等しい行為です。幕末に,黒船の大砲に脅迫されて日本が結ばされた一連の不平等条約を,「当初から無効だった」と主張するのにも似た,アナクロニズムです。
第二条
千九百十年八月二十二日以前に大日本帝国と大韓帝国との間で締結されたすべての条約及び協定は、もはや無効であることが確認される。
제 2 조
1910년 8월 22일 및 그 이전에 대한제국과 대 일본제국간에 체결된 모든 조약 및 협정이 이미 무효임을 확인한다.
(1910年8月22日およびそれ以前に大韓帝国と大日本帝国の間で締結されたすべての条約及び協定は、すでに無効であることを確認する。)
Article II
It is confirmed that all treaties or agreements concluded between the Empire of Japan and the Empire of Korea on or before August 22, 1910 are already null and void.
これを見ればわかるように,問題の部分は,
日本語版では「もはや無効」,
韓国語版では「이미 무효(すでに無効)」,
英語版では「already null and void(すでに無効)」
となっています。
つまり,東亜日報はこの記事を書くにあたり,原文になかった「源泉」という言葉を挿入し,条文を改竄しています。しかし,あとから言い訳ができるように,あえて引用符号なしで記述した。まことに姑息なやり方です。
日韓基本条約締結にいたる交渉の経過は日本ではすでに詳細が明らかにされており(金東祚『韓日の和解-日韓交渉14年の記録』),韓国側は「当初から無効」という表現を主張したが,日本側は頑として譲らず,結局,経済援助資金がほしかった韓国の朴正煕政権は,この部分で妥協し,「もはや無効」という表現で決着したことが知られています。
そして,「もはや無効」という表現を韓国では「当初から無効」というふうに解釈することについて,日本が暗黙の了解を与えた。その結果,韓国では条約締結時から今にいたるまで,「当初から無効」の解釈をとり続けているわけです。
これと似たことが,日清戦争が終わったあとの下関条約についても行われている。下関条約では,「朝鮮の独立」が実現されたのですが,それ以前に朝鮮が清の属国であったことが明らかになるのを恐れ,韓国の教科書では,この項目が伏せられている。
韓国民は,自国にとって都合の悪い歴史上を事実を知らされない状態が続いているのですね。このような状態で,日本と韓国の国民同士が共通の歴史認識をもつことは不可能だと思います。
今回の「進歩的知識人」の宣言は,この条約の解釈を変更することであって,日韓基本条約の見直しを主張するのに等しい行為です。幕末に,黒船の大砲に脅迫されて日本が結ばされた一連の不平等条約を,「当初から無効だった」と主張するのにも似た,アナクロニズムです。
「無効」と訳されている部分に相当する英文は「null and void」なので、これは外交文書の慣例上「当初から無効」即ち「源泉無効」を意味します。
果たして「源泉無効」と訳すのがしっくりくるか否かの問題は残りますが、英文の解釈としては東亜日報の記事を改竄とするのは無理筋でしょう。
それが「外交文書の慣例上「当初から無効」即ち「源泉無効」を意味」することは,存じあげておりませんでした。
東亜日報が,やはり正文である韓国語版を引用するのではなく,英文を「解釈」(韓国後で解釈は,翻訳と同義)したと断り書きを入れるべきでした。
「源泉無効」という用語、聞いたことありません。ググってみると韓国・中央日報の記事か、それを転載したブログがヒットするだけです。「源泉無効」という言葉は韓国だけで通用するものなのではないでしょうか。
「null and void」はともに無効を意味する言葉を重ねた法律文特有の言い回しですが、「当初から無効」などという訳はしないでしょう。犬鍋さんが言われるように単に「無効」と訳すのが通常でしょう。
日本語版の「もはや」という表現も気になりますね。「条約」の文章にしては口語っぽいというか。
もう少し調べてみようかと思っています。
日韓交渉が難航したのは日本による朝鮮統治の評価であり、日韓協約および韓国併合条約が合法であるか否かでした。日本が日韓協約および韓国併合条約は合法であり当然有効だったという立場であったのに対し、韓国は日韓協約および韓国併合条約ははじめから無効だったという立場を崩しませんでした。この対立が交渉自体をぶち壊しにしてしまいかねない状況に追い込まれていたのです。そこで考え出されたのが「もはや無効」という表現。サンフランシスコ講和条約第二条において朝鮮の独立を認めている以上、1965年時点では韓国併合条約はもはや無効であったので1910年当時の評価をすることなく日韓関係を前進させる方策として編み出されたのでした。
いってみれば玉虫色の決着を図ったのですが、基本条約締結からまもなく半世紀になろうとしているのにいまだにこの点が問題になるとは適切な解決策だったのか疑問です。
朝鮮統治が不法だったり「侵略」だったことになると,「賠償」なんていう問題が浮上してきちゃうので,なんとしても避けたかったんでしょうね。
基本条約とセットで結ばれた請求権資金に関する協約では,日本はあくまで「経済協力」という名目に固執しました。
この問題にこだわり続ければ,条約は延び延びになり,韓国はのどから手が出るほど欲しかったお金がもらえなくなり,経済開発もできなかった。
あの解決は,適切だったのではないかと思います。