翌日は、某独立行政法人へ行って、ミャンマーにおけるビジネスについてブリーフィングを受けることになっていました。
場所は、ホテルから近い。地図を持ってホテルのフロントで聞いてみました。
「近いですよ。10分ぐらいです」
「タクシーで?」
「いえ、歩いて」
「ランシャウ トワー フナイン ダラー?」(歩いて行けるんですか?)
「フナインデー」(行けますよ)
その言葉を信じ、歩き始めたら、本当に10分で着いてしまいました。アポイントの時間まで、1時間もあります。周囲に喫茶店らしきものは見当たらないので、訪問先の入っているビジネスセンターに入ったところ、幸いコーヒーショップがありました。ところが、店は窓が開放されていて、クーラーが効いてないのですね。
日も高くなり、気温は30度をはるかに越えています。
アイスコーヒーを飲み終わり、少し早いけれども、訪ねていくと、予定より前倒しで始めてもらうことができました。
仕事の話が終わり少し雑談をしました。
「昨日、屋台でモンヒンガーを食べたんですよ」
「それは危ない! 私はミャンマーに20年住んでいますが、屋台には一度も行ったことがありません」
前日の私の行為は相当に無謀だったようです。
事務所を出ると、小雨がぱらついています。傘なしでは歩けないくらい本降りになったころ、一軒の日本風レストランがあったので、入りました。
「いらっしゃいませ」
店員は全員ミャンマー人ですが、日本語ができるようです。メニューもぜんぶ日本風。
「カツカレーとサラダ」
「かしこまりました」
店に備え付けの日本語の情報誌をめくりながら昼食をとり、食べ終わったあとはバルコニー席に移って、たばこを吸いながらコーヒーを飲みました。しめて10000チャット(1000円)。日本並みの価格です。
次の訪問先の場所について、店員に聞いてみました。
「それほど遠くないですよ」
「タクシーで3000チャット(300円)ぐらい?」
「いえ、そんなにかかりません。私が交渉してあげますよ」
流しのタクシーを止めようとしている間、少しおしゃべりをしました。
「日本語うまいですね。日本に行ったこと、あるんですか」
「いえ、ありません」
「日本語はどこで習いましたか」
「僧院です」
僧院!
そういえば、私が東京で習っていたミャンマー語の先生も、日本に来る前に僧院で日本語を習ったと言っていました。
僧院では、ほとんどボランティアで教えてくれる先生がいて、正式な学校に通えない貧しい家庭の子弟に初等教育を施したり、大人に外国語を教えているんだそうです。
その店員さんのおかげで、タクシー料金の交渉は2500チャット(250円)で成立。次の取材先に向かいました。
コンドミニアムという名の大きなビルディングが二つ並んでいて、一階には商店や語学学校、上の会には会社の事務所が入っています。一般の住居もあるのかもしれません。
仕事が終わったあと、一階の商店街を回っていると、
「ミャンマーに来たなら、ミャンマー語を勉強しよう! 生徒募集中」
という、日本語の看板がありました。ぼくはミャンマーに住んでいるわけではないけれど、おもしろそうなので、ちょっと話を聞いてみることにしました。
ミャンマー語教育は片手間で、メインは日本語学校のようです。
受付にいた女性(校長先生かもしれません)に、ミャンマー語について聞いてみると、
「あ、あれですね。実は宣伝はしてるんですが、まだ始まってないんです。生徒が集まったら始めようかと思って」
流暢な日本語で答えてくれました。
「先生はいるんですか」
「それもまだです」
「……」
日本をはじめ、外国の企業が続々とヤンゴンに事務所を開くので、ミャンマー語学習の需要を見越して新しくミャンマー語のコースを始めるらしい。
「日本語学校のほうは、長くやってるんですか」
「いえ、1年ぐらいです」
「『新幹線』っていうのが、学校の名前ですか?」
「はい、新幹線みたいに早く日本語がマスターできるという意味で」
この辺の感性は、日本人には多少違和感があります。
先生は、日本に留学したことがあるらしく、日本語は流暢。通訳や翻訳の仕事もあるだろうけれど、日本語学校で勝負に出た、というところでしょうか。
バンコク行きのフライトは夕方。まだ時間があるので、ヤンゴン大学にも行ってみました。
ヤンゴン大学はミャンマーの最高学府、かのボージョー・アウンサン(アウンサン将軍)も学んだというから、創設はイギリスの植民地時代に遡るのでしょう。
8888民主化運動(1988年8月8日)では、反政府運動の拠点となり、徹底した弾圧が加えられました。広大は敷地に校舎が点在し、校舎間の移動は車がほしくなるほど。月曜日なのにキャンパスは閑散としていて、学生の姿はあまり見られません。
ふたたび雨が降り出し、幸い構内を流していたタクシーがいたので、それに乗って空港に向かいました。
たった二日間の滞在でしたが、ミャンマーの国情を知るのに大変有益でした。
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