犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

ミャンマー便り~飲み屋事情

2015-08-27 23:33:59 | ミャンマー

 昼ごはんは、時間も遅かったし、量も多かったので、夜になってもお腹がすきません。

 9時近くになり、幸い雨も止んでいたので、ホテルの周囲を散策しました。ホテルはヤンゴン中央駅北側のビジネス街にあるので、周囲には日本語の看板も目につきます。しかし、日曜日のため、たいてい閉まっている。

 結局、前回の出張時に行った日本料理屋をのぞいてみることにしました。

 幸い、「一番館」は営業中でした。隅の方の席に座り、ミャンマービールと野菜炒めを注文しました。客は全員日本人。酔いが回り、大声で話しています。店の感じといい、メニューといい、値段といい、日本そのもの、まったく外国を感じさせません。

 店に置かれていた新聞に、たまたまキリンビールがミャンマー最大手のビール会社を買収するという記事がありました。ミャンマービールを製造している会社です。

 カウンター席で女将さんと話しをしていたお客さんが帰ったので、女将さんに挨拶しました。

「こんばんは。おひさしぶりです」

「ああ、たしか前は5月頃いらっしゃいましたね」


 覚えていてくれました。

 ここはヤンゴンでもっとも古い日本料理の老舗。ヤンゴン在住日本人が一度は訪れる店とのこと。

「次はいつになるかわかりませんが、また来ますね」

「よろしくお願いします」


 ホテルに帰ったのが10時頃。少し飲み足りない気がします。上座部仏教の国ミャンマーで酒を飲むミャンマー人は少ない。地元のバーというものはないようです。

 私が泊まっていたホテルは、歴史は古いけれど、設備は悪い。一階にあるカフェテリアには酒もあるようですが、閑散としていて、雰囲気もあまりよくありません。

 通りをはさんだ向かいには別のホテルがあって、こっちは新しくて大きいので、なにかあるかもしれないと思って行ってみました。

 地下に飲めるところがあるようです。

 入り口で、

「今日は、日曜日だからサービスです」

と言われました。普段は入場料を取るようです。

 店内はかなり広く、真ん中に楕円形のカウンターがあり、中で数人の男性がカクテルなどを作っています。それを取り囲むようにカウンター席があり、周囲にはテーブル席が20ぐらい、いちばん奥には大きなスクリーンと舞台があります。ディスコのようですが、踊っている人はありませんでした。

 カウンターには、西洋系の外人と、アジア系の人(日本人かもしれません)が数人飲んでいました。

 私も生ビールを注文しましたが、しばらくすると、奥のテーブル席にいた女性の一人がやってきました。

「こんばんは。どこから来ましたか」

「日本です」


「今晩、女性が必要ですか」


「?」


 奥にいる数人の女性がじっとこちらを見ています。どうやら、人類最古の職業に従事している女性のようです。

「いえ、必要ありません」

「そう。じゃ、ゆっくり飲んでね」


 あっさりと席に帰っていきました。彼女たちは、男性客が来るたびにそばに行って交渉しているようです。交渉が成立すると、しばらくいっしょに飲んで、二人で店を出ていきます。

(ここ、そういう場所なんだ)

 生ビールが空いて、次をどうしようかと考えているとき、まだ頼んでいないのに新しい生ビールが差し出されました。

「向こうのお客さんのおごりです」

 見ると、3メートルぐらい離れたところで一人で飲んでいたアジア系の男性です。

 席を立ってお礼を言いにいきました。

「日本の方ですか?」

「いえ、私はマレーシア人です」


 中華系なんでしょう、見た目には日本人と区別がつきません。

「観光ですか」

「いえ、学会で招待されて来てるんです」


 大学教授だということで、いろいろ話してくれましたが、私の英語力がないのと、彼の英語の発音が独特なため、話の内容は半分ぐらいしかわかりませんでした。

「失礼ですが、ムスリムですか」

「いえ、私は仏教です。だからお酒も飲みます」


「マレーシアはムスリムが多いのでは?」


「全員というわけではありません。60%ぐらいです」


「ところで、あそこの女性、売春婦みたいですね」


「ここにいる女性は全員売春婦ですよ」


 自信をもって断言していました。ここのホテルに泊まっていて、毎日来ているようでした。

 おごってもらったビールが空きそうになり、

「今度は私がおごりましょう」

というと、

「いえ、もう十分飲みましたから」

といって、残っていたビールを飲みほし、自分の部屋に帰って行きました。

 私はもう一杯追加し、お勘定をしてもらいましたが、チャージやサービス料がついて20000チャット(2000円)ぐらい。日本のホテルのバーよりは安いと思いますが、ミャンマーの人にとっては高すぎると思います。


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