二日目の夜は、韓国の友人たちと旧交を温めました。
一人は日本人で、元延世大学留学生さん。当ブログの常連コメンテイターの一人です。韓国在住20年というからエラい。韓国出張のたびにお付き合いいただいていますが、出張そのものが久しぶりだったので、前回飲んでからもずいぶん間があいてしまいました。
もう一人は、取引先の韓国人の金某さん。元日本留学生で、出会いは1994年ですから、20年来の友人です。このブログにも何回か登場していただいています(リンク1)。
オーナーの一存でいとも簡単に馘首される韓国の企業に、20年以上も勤務し続けられているというのはエラい。
で、元延さんと金某さんも、前世紀から旧知の仲です。
場所は、シンチョン(新村)のコムチャンオのお店。駐在していたころ気に入っていたお店が再開発で次々に姿を消す中で、この店はしぶとく残っています。
最初にこの店を知ったのは、たしか前世紀でしたから、飲食店の興亡が激しい韓国において、この店もなかなかエラい。
何度も来ているにもかかわらず、店の名前はよくわからない。看板には「サンコムチャンオ」とあるので、「サンコムチャンオのお店」と呼びならわしていますが、店の名前は別にあるのでしょう。
コムチャンオというのは、日本ではあまり見ない食材で、ヌタウナギ。姿はウナギと似ていますが種類が違うようで、背骨がない。原始的な生物です。
サンは、山と同じ綴りですが、サルダ(生きる)の連体形。サンコムチャンオは「生きたヌタウナギ」という意味です。
最初の頃は、文字通り生きたままのヌタウナギが運ばれてきて、生きたまま炭火の業火で炙り、のたうちまわるのを鑑賞しながら食すという野趣あふれる珍味だったのですが、店の社長がかわってから、「チュグン(死んだ)コムチャンオ」の店になってしまいましたから、今となっては看板に偽りありです。
金某氏は、仕事の都合で30分遅れるというので、コムチャンオと釜山オデンで先に始めていたところに金某氏が現れました。
「犬鍋さん、言った通り30分きっかりでしょう」
彼のこんなところが、長期勤続できた理由の一つかもしれません。
コムチャンオの追加と、パダチャンオ(海のうなぎ=普通のうなぎのこと)も注文。
「ビールですか、焼酎ですか」
「ぼくは、最近はソメクです」
ソメクとはソジュ(焼酎)とメクチュ(麦酒)を混ぜたもの。
「焼酎は7分目にしてください」
焼酎グラスに7分目の焼酎を測りとって、ビールグラスに注ぎ、ビールを満たします。
「この比率がいちばんうまいんです」
ビールも焼酎も、混合比率にこだわるほどデリケートな飲み物じゃないはずですが、口には出しませんでした。最近、韓国ではこの飲み方が流行っているようで、元延さんもソメク。私もお付き合いしました。
話題は自然と昔の思い出話になります。途中、金某氏に奥さんから電話が入ります。
「実は、今日犬鍋さんと飲むといったら、妻も来ようかしら、なんて言っていたんです」
奥さんも日本語学科出身で、日本語が堪能。結婚式で会って以来、一度もお会いできていません。
「そういえば、マンションは値上がりしましたか」
「うーん、それが…。韓国の不動産はもうだめですね」
お父さんが不動産の仕事をしていて、本人も投資用の物件をいくつか買ったという話を、ずいぶん前に聞いていました(→リンク)。
「自分はそんなに損はしていませんが、父の会社はここ数年赤字です」
例の旅客船沈没の話も出ました。
「本当に可哀相です。ぼくたちみたいな年代の人が死ぬのならともかく、高校生でしょう。韓国の未来そのものですよ。今度アンサン(安山)で行われる追悼式に、家族で行くつもりです」
コムチャンオもパダチャンオもオデンもなくなり、二次会に向かいます。
知っていたアガシたちは、今やほとんどが連絡不能になっているのですが、唯一昔の電話番号につながったアガシは、地下鉄9号線のなんとかいう駅の近くで働いているとのこと。電話で何度聞き返しても聞き取れないので、元延さんに代わりました。
「ヨムチャン駅だそうです」
9号線は新しい路線で、駅名で馴染みがないので聞き取れなかった。金浦空港のほうだそうです。
タクシーを降りて、教えられた道をいくとアガシが迎えに出てくれていました。看板には大きく「CAFE」とだけあって、店の名前がよくわからない。コムチャンオの店と似ています。
彼女と知り合ったのはワールドカップのときですから、10年以上の付き合い。71年生まれだから40歳以上ですが、もともと童顔で30代前半にしか見えないのはエラい。
ついでに言えば、このブログもかれこれ8年ぐらい続いているから、けっこうエラいかも。
今日はエラい人たちが集合した飲み会になりました。
店はけっこう広いのに、客は少ない。アガシはもっと少ない。
「お客さんがたくさん来たらどうするの?」
「外からアガシを呼ぶのよ」
「トウミ(助っ人)だね」
「呼びましょうか」
「いらない、いらない」
いちばん安いヤンジュ(洋酒=ウイスキー)に、クァイル(果物)の小をとります。彼女は日本語ができないので、会話は韓国語に。金某氏は初めてですが、元延さんは彼女とは旧知の仲。
ここでもやはり、話題は昔話に。彼女はいろんな店を転々とし、そのほとんどに行ったことがあるというのは、エラいのかエラくないのか。
金某氏は、今ではかなり飲めるようになったとはいうものの、もともと酒が強いほうではなく、こっくりこっくりし始めます。
「さて、三次会行く?」
「1時で閉店だから、そのあとならいいわよ」
「おいおい、あと2時間も待てないよ」
ということで、方向の違う金某氏とはそこで別れ、私は元延さんとタクシーにハプスン(合乗=相乗り)して、ミョンドンのホテルへの帰路につきました。
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2 コメント
コメント日が
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- エライ (犬鍋)
- 2014-05-21 00:12:23
- 関西方言でエライはつらいという意味です。
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- 現在下関に来ています (元延世大留学生)
- 2014-05-19 23:56:52
- そうか…。あの晩は全員エライ人たちばかりだったんですね(^^)v
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