犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

大阪最後の夜

2021-02-16 23:15:44 | 大阪暮らし
 引っ越しの日は、特別休暇をとりました。

 午前中に、引っ越し会社の梱包係の女性二人が来て、たいして多くはない荷物を段ボール詰めしてくれました。午後はまず、レンタル会社の回収係が、すべての電化製品、家具を持っていきました。ドアから出せない大型のもの(食卓とベッド)を解体するのに手間取り、回収だけなのに1時間以上もかかりました。夕方は、引っ越し会社の荷出し係が来て、手際よく30分ほどですべてを大型トラックに積み込み、運び去って行きました。

 あとは、翌日にマンションの管理会社に部屋のキーを渡すだけです。

 ベッドも布団もなくなったマンションに泊まるわけにはいきません。

 この日の夜は、近くのホテルを予約してありました。

 昨年の1月に新しく開業した地上32階建ての高層ホテルで、オープンしてまもなく新型コロナ感染症に直撃され、いきなり閑古鳥が鳴く夜が続く、という不運に見舞われました。そして、ほどなくして親会社が資金繰りに行き詰って倒産、最後には別の会社に買い取られたという、悲劇のホテルです。

 ビジネスホテルではなく、高級シティホテルですから、宿泊費は高く設定されていましたが、緊急事態宣言で空室だらけ。今はたたき売り状態です。

 私は高層階(27~30階)の、普通なら1泊数万円するであろう部屋を、朝食付き8000円で予約し、引っ越しが一段落した夕方5時ごろにチェックイン。

 28階の部屋からの眺望は素晴らしい。

 夕暮れの淀川と、梅田の高層ビル群が一望できます。

 そして、つくづく思いました。

 大阪の街って、きたないなあ、と。

 ま、しゃーないっすよね。ヨーロッパの街並みと比べるのは酷です。

 そして、大阪最後の夜。

 馴染みのピアノバーに行く約束をしていました。

 大阪に転勤になった最初の年に見つけ、その後だいたい週1回のペースで通いました。回数ではBlueblueに及ばないけれど、支払った額はたぶんいちばんでしょう。店のママさんのお母さんは往年のピアニスト。私の誕生日にピアノで祝ってくれたこともありました(リンク)。

 緊急事態宣言が出てからは予約営業。予約の無い日は店を開けないそうです。

 この5年間、私にもママにも、いろいろなことがありました。

 ママは乳癌が発見され全摘手術。抗がん剤で一時は髪の毛が全部抜けたりもしましたが、回復し、昨年は2度目の結婚。私のほうは、兄がマラソンの練習中に心臓麻痺で亡くなったり、妻がクモ膜下出血で倒れたり。一昨年、昨年は立て続けに孫が4人も生まれたり…。

 そういうプライベートなことを、この店ではいつもオープンにしていたので、ある意味、家族のようにつきあっていた感じがあります。

 8時を回ったところで、店を出ました。

「また大阪、来るんやろ?」

「コロナが落ち着いたら、出張で来るよ」


「そのときはまた寄ってや」


「それまで、ちゃんと持ちこたえてね!」


「わからんなあ」


「万博まで頑張れば、お客さん、増えるでしょう」


「それまで生きてるかわからへん」


「ほなまた!」

 最後は大阪弁であいさつすることができました。

 ホテルの部屋に戻ってから見た夜景は、夕闇の景色よりはきれいでした。

 明日は、午前中にマンションを明け渡して、新幹線で東京に向かいます。

 大阪、さいなら!
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