バルセロナ最終日は、朝早く宿をチェックアウトし、タクシーで空港に行きます。
この日で、4女とはお別れです。4女はひとりでコペンハーゲン経由スウェーデンに向かい、これから一年間、スウェーデンのルンド大学での留学生活が始まるのです。
流しのタクシーを拾おうとしているとき、
「あ、またいた、骨折してる人」
脚にギブスをしているおばあさんがいました。
実は、3週間ほど前、妻が自宅の階段でつまづいて踏み外し、足の親指を骨折したのです。旅行で歩けなかったらどうしよう、と心配していたのですが、幸い、添え木で固定するだけでギブスの必要がなく、全治3週間で旅行の日にはほぼ治っていました。でも、それもあってか、スペインに来てから、やたらと骨折の人が目につくといって、そういう人とすれ違うたびに盛り上がっていたのでした。
「もう20人ぐらい見たね!」
「こんなニュースあったよ」
三女がスマホも見せます。
「読んで」
「スペイン北西部のガリシア州ビーゴにある海岸で12日夜、木製の遊歩道が崩落し、377人が負傷する事故があった。うち9人は、骨折などの重傷を負った。当局によると、事故当時はラップ歌手による公演中で、この歌手が跳びはねるよう客に要求したところ、遊歩道が崩れたという(リンク)」
「ハハハッ。それで骨折してる人、多いんだ」
「他人の不幸を笑っちゃいけないよ」
空港に着き、LCCのカウンタ―で搭乗手続きをすませます。
「一人で行くの、なんだか寂しいなあ」
「大丈夫。すぐ向こうで友だちできるよ」
「ハイジの写真、いっぱい送ってね」
ハ イジというのはわが家の飼い犬の名前。四女がとりわけかわいがっていました。ちなみに四女の名前はクララです(リンク)。
四女が名残を惜しみながら保安検査場に入って行ったあと、残った3人は、バスでレンフェのバルセロナ駅に向かいました。スペイン語の少しできる3女が、購入するAVEの情報(人数、何等か、出発時刻)をメモにして、英語ができないかもしれない当日券の窓口に出しました。
「ペルフェクト!」
すぐに買うことができました。
「あれ? 行きと同じ値段だよ」
「へえ、もしかしたら昨日がお休みだったので、配慮してくれたのかもね」
当日売りは高額だと覚悟していたのに、ラッキーでした。
マドリードは、エアビー(民泊)ではなく、一般のホテル。安めのホテルでしたが、民泊とは違い、設備は整っていました。
「またプラド行く?」
「いいや。ほかに面白いとこないの」
「王宮とか」
「そこにしよう」
計画性のない旅です。
「でも、お腹空いたからまずはお昼ごはんにしよう」
「まだ行ってない店、あるんじゃない?」
私が知人からもらっていたレストランリストを取り出しました。
「じゃ、ここ行ってみよう。牛肉の煮込み料理の店。歩いて行けるよ」
ところが…。
「8月20日までお休みです」
の貼り紙が。
「レストランの人もバカンスとるんだね」
「じゃこっち。これはタクシーじゃないと無理だな」
タクシーの運転手にレストランの住所を教えます。行ってみると、またもや夏休み。
「7月25日から8月31日まで…。書き入れ時なのに、ふざけてんじゃない?」
バルセロナではお休みの店に出会いませんでしたが、マドリードはバカンスをとる店が多い。マドリードよりバルセロナのほうが観光客が多いのでしょうか。
「どこかマドリードっぽい料理のレストランありませんか?」
運転手さんに助けを求めました。
「そうだね。夏休みの店も多いけど、今は時間が悪いね。ランチは4時までだから、店がやっていても入れない。ぼくがいいところ知ってるから、そこに案内するよ」
「グラーシアス(ありがとう)」
「そこの角曲がったところね」
行ってみると…、すでに二日目に行った「サンミゲル市場」でした。
しかたなく、市場でタパスとビールで腹ごしらえし、歩いて王宮に向かいました。
「すごいね!」
王宮は、大理石の壮大な建築物です。王宮の裏にはカテドラル。
「ベルサイユよりすごいかも」
妻と三女は、7年前にパリに行ったことがあります。
「スペインって、お金持ちの国なんだね」
「中南米から略奪したからね」
「そうなんだ」
三女は大学入試で世界史をとらなかったようです。
王宮の入り口には行列ができていました。
「美術館みたいに、夕方は入場無料になるのかな」
案内文を読んでみると、EU居住者に限り、6時以降入場無料とのことでした。
「ぼくたちはダメだね」
「あっ、馬だ!」
2頭の馬がひづめの音を響かせながら、王宮前を闊歩します。騎手はどちらも女性。ポリスの制服を着ています。
「スペインの警察って、馬なんだ!」
「ここだけでしょう?」
お土産物屋をみながら再びマヨール広場に戻り、バルで軽食。
「もう一軒、行きたいお店があるんだけど」
妻がガイドブックを差し出します。チュロスとホットチョコレートのお店でした。
「チュロスにホットチョコレートをつけて食べるんだって。おいしそう」
場所はプエルタデルソルの近くでした。
妻も三女もしず地図が読めない女なので私が案内すると、30人以上の大行列でした。
「あきらめよう」
ホテルに戻ってからも、妻はあきらめきれない面持ち。
とっぷりと日が暮れた夜10時過ぎ、
「やっぱり行ってみようよ」
「もうやっていないでしょう?」
「このお店、24時間営業らしいわよ」
「えっ? 夜中に行くお客さんとか、いるの?」
「あそこ、繁華街だから」
1か月以上のバカンスをとるレストランがあるかと思えば、24時間営業のチョコレート屋さんもある…。スペインは奥が深い。
乗り気ではありませんでしたが、最後の夜だし、つきあうことに。
11時近くだというのに、店には10人以上の行列が。でも昼間よりはマシです。
並んでいる間、しばし店を観察。客は中国系の観光客が多い。
「この店、1894年創業らしい。日清戦争のころだな。そんなころからチョコレート食べてたんだ!」
結構回転は速く、10分ほどで入れました。
「おいしい!」
妻と三女が声を揃えます。
「並んだ甲斐があったね」
スペイン最後の長い夜が終わりました。
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