写真:NHK「おむすび」より
朝ドラ「おむすび」にこんな場面がありました。
主人公の米田結が、福岡西高野球部の四ツ木翔也を神社の境内に呼び出す。
「急に呼び出してごめん。ちょっと話したいことが。ウチ、四ツ木君のことが…」
「ごめんなさい! 交際できません!」
結はがっかりして
「ウチ、帰る」
と言って歩き出した。
「待ってくれ! おめが言いたいことはわかってる。それは俺もおんなじ気持ちだ。俺の夢は甲子園に出ることだ。今は野球だけのことを考えなきゃいけない。今、おめにその言葉を言われちったら、今、俺がその言葉を言ったら絶対に気持ちが揺らぐ。んだから、俺が甲子園に行ったら、米田結が好きだって告白する! それまで待ってくれ!」
私の感覚では、「告白」は何か重大で悪いことを相手に明かすこと。
過去の罪を告白する、とか。
「愛の告白」という表現は、外国の小説の中には出てきても、日常生活で使う言葉ではない。高校生が相手のことを好きだと打ち明けることを「告白」というのは、少し大げさな気がします。
朝ドラの舞台は2006年頃の福岡県糸島。当時の高校生は、日常的に「告白」という言葉を使っていたんですね。
私は1996年から2007年まで日本を離れており(韓国に駐在)、当時の若者の言葉遣いにはうとい。
辞書を調べてみました。
こくはく【告白】〔秘密などを〕うちあけて知らせること(三省堂国語辞典第4版1992年)
こくはく【告白】〔秘密などを〕うちあけて知らせること。「愛を告白する」(第5版2001年、第6版2008年、第7版2014年)
2001年版に「愛を告白する」という用例が追加されました。
最新版の第8版(2022年)では、
こくはく【告白】①〔秘密などを〕うちあけて知らせること。「真実を告白する・罪の告白」②特に、愛を打ちあけること「先輩に告白する〔→告る〕」
「愛を告白すること」は、別の語義として独立しました。
なお、「告る」は、
こくる【告る・コクる】〔俗〕(好意を)告白する。「突然告られる」(第8版)
この言葉が最初に立項されたのは、第6版2008年です。
語義が保守的とされる『新明解国語辞典』は、
こくはく【告白】〔他人には言うまいと隠していたことを〕相手を信用して打ち明けること。「罪の告白」(新明解第7版、2013年)
で、「愛の告白」の用例はない。
大修館の『明鏡』は、
こくはく【告白】①心の中の思いや秘密を打ち明けること。また、そのことば。「愛[己の過ち]を告白する」②キリスト教で、自分の罪を神に打ち明け、罪の許しを求めること。(第2版、2010年)
で、愛・過ちの両方を用例として挙げ、キリスト教用語を別立てにしています。
岩波書店『日本語語感の辞典』は、
こくはく【告白】それまで秘密にしていた事実や言いにくいことなどを思い切って他人に打ち明ける意で、会話にも文章にも使われる漢語。…内容が悪事であれば「白状」と言い、それが取り締まりの場であれば「自白」、また、医者が病名などを患者に告げる場合は「告知」と、それぞれ使い分けることが多い。「告知」より個人的・情緒的。(2010年刊)
将来、日本語教師になるのであれば、若者の言葉遣いも学ばないと…。
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