では,いったい見坊のワード・ハンティングとはどんな作業だったのか。それは,彼の『ことばの海をゆく』(朝日選書、1976年)に描かれています。
「新聞・雑誌・単行本などから、採集したいことばを含む前後の文を、適当な長さだけ切り抜く、用意したカードに張り付ける、それに見出しを書く、筆者名、題名、出典名、日付け・ページ数を記入する」
「こういった単純な作業を、一枚三分間ぐらいの速さで、一日じゅう黙黙として繰り返すことは、相当の忍耐心や体力を必要とします」
「多くの人々にとって、仕事が終わって家へ帰れば、寝るまでは自分の時間、まずは何でも自由にできる時間だと思います。それこそ晩酌でもしてくつろげる時間です。しかし、私のばあいは、夜こそが大切な時間です。日曜・祝日は輪をかけて書き入れ時とでもいうべきなのです。というのは、夜は新聞・月刊誌・単行本などから用例を採集する時間で、新聞を二時間、月刊誌を一時間、単行本を一時間という割合で読みます。とくに、新聞は絶対に欠かせません。日刊新聞だけで一日分の総ページ数は二百ページに上るので、その日のうちに読まないと、次の日は四時間ぐらいかかって四百ページに目を通さなければなりません。そこで、日曜・祝日には、臨時の用で読めなかった雑誌や単行本を読んで埋め合わせをつけるのです。ジャン狂(きち)が徹マンをするように、私も時には完徹をしながら、用例採集などを続けるわけです」
「私とて人間ですから、ときには「三日分ぐらいの仕事を先に片づけて旅行でもしたいな」と思うこともあります。しかし一泊二日の小旅行でも、夜帰れば翌日は、合わせて三日分、六百ページの新聞がたまっています。その後始末にはどうしても二晩かかります。そのほか旅行ちゅうに撮影した看板・掲示など屋外の文字資料の整理もあります。ほんとうに、あすの仕事をきょう片づけることができればいいと思うのですが、それができない毎日なのです」
こんな生活を,一日も欠かさずに,50年!
すばらしいというか、お気の毒というか。
そして,作った用例カードが145万枚!!
一日一回ブログを更新するのとは,わけが違います。
とても真似のできるものではない。
「新聞・雑誌・単行本などから、採集したいことばを含む前後の文を、適当な長さだけ切り抜く、用意したカードに張り付ける、それに見出しを書く、筆者名、題名、出典名、日付け・ページ数を記入する」
「こういった単純な作業を、一枚三分間ぐらいの速さで、一日じゅう黙黙として繰り返すことは、相当の忍耐心や体力を必要とします」
「多くの人々にとって、仕事が終わって家へ帰れば、寝るまでは自分の時間、まずは何でも自由にできる時間だと思います。それこそ晩酌でもしてくつろげる時間です。しかし、私のばあいは、夜こそが大切な時間です。日曜・祝日は輪をかけて書き入れ時とでもいうべきなのです。というのは、夜は新聞・月刊誌・単行本などから用例を採集する時間で、新聞を二時間、月刊誌を一時間、単行本を一時間という割合で読みます。とくに、新聞は絶対に欠かせません。日刊新聞だけで一日分の総ページ数は二百ページに上るので、その日のうちに読まないと、次の日は四時間ぐらいかかって四百ページに目を通さなければなりません。そこで、日曜・祝日には、臨時の用で読めなかった雑誌や単行本を読んで埋め合わせをつけるのです。ジャン狂(きち)が徹マンをするように、私も時には完徹をしながら、用例採集などを続けるわけです」
「私とて人間ですから、ときには「三日分ぐらいの仕事を先に片づけて旅行でもしたいな」と思うこともあります。しかし一泊二日の小旅行でも、夜帰れば翌日は、合わせて三日分、六百ページの新聞がたまっています。その後始末にはどうしても二晩かかります。そのほか旅行ちゅうに撮影した看板・掲示など屋外の文字資料の整理もあります。ほんとうに、あすの仕事をきょう片づけることができればいいと思うのですが、それができない毎日なのです」
こんな生活を,一日も欠かさずに,50年!
すばらしいというか、お気の毒というか。
そして,作った用例カードが145万枚!!
一日一回ブログを更新するのとは,わけが違います。
とても真似のできるものではない。
でもこういう人が世の中を変えるのでしょうね。