これまでインドネシア料理のレストランは、中津の「バグース」、東三国の「ハッピーバリ」に行ったことがあります。インドネシア語の先生からは、心斎橋においしい店があると聞いたので、会社の帰りに行ってみました。ネットで検索すると二つあり、そのうちの一つが「カフェ・ビンタン」。
ビンタンは島の名前でもありますが、普通名詞としての意味は星。「星のカフェ」とはロマンチックな名前です。
心斎橋筋から少し外れたところに星カフェはありました。
夜7時半ごろの店内は、かなり混んでいました。私はL字型のカウンター席に。ビンタンビールとテンペ(インドネシア風納豆の揚げ物)を注文しました。
しばらくして、あることに気付きました。テーブル席はおおかた埋まっていて、中には小さな子どもを連れた家族もいます。なのに店内は静粛なのです。ナイフとフォークが皿に当たる音と咀嚼の音しか聞こえない。お客さんたちは無言またはひそひそ声で話しているようです。客は全員インドネシア人で、女性はみな頭にヒジャブを被っている。きっとみんなムスリムなのでしょう。お酒は飲まないし、食事も静かに食べないといけないという戒律でもあるんでしょうか。
ただ、店にはアルコールも置いています。私はビールを飲み終わり、アラックというココナツ酒を頼みました。
そのとき、やはりヒジャブを被った女性が入ってきて、カウンター席の、私から少し離れたところに坐りました。30代前半の感じです。注文したのはナシゴレンのようなご飯もの。料理が運ばれてきた直後、その女性が急に席を立ち上がり、皿を移動させました。そして店員を呼びます。駆けつけた店員は手に「ゴキジェット」を持っています。どうも、女性の目の前にゴキブリが出現したようなのです。
女性はゴキブリとゴキジェットの噴射から避難して、私のすぐ隣の席に移ってきました。
「ゴキブリですか?」
「えっ、あ、そうそうゴキブリ」
女性は、日本語があまりよくできないようです。これをきっかけに話しかけてみました。
「日本には留学で来たのですか?」
「ええ、今は働いていますが」
「日本は長いんですか?」
「6年になりますけど、大学院の授業は全部英語なので、日本語はあまりできません」
「専攻は?」
「数学です」
差し出された名刺を見てビックリ。なんと大阪大学の特任教授でした。
「今、インドネシア語と日本語のできる人を探しているんですけれど、どなたかご存じではありませんか」
「ああ、いますよ。ちょっと待ってください」
といって、さっそくスマホで電話をします。同じ大阪大学で、日本語を勉強している博士過程3年の学生で、電話を代わってもらうと、日本語がぺらぺらでした。くわしくはメールで連絡することにして、電話を切りましたが、たまたま入ったレストランでこんな出会いがあるとは…。
これもみなゴキブリのおかげです。
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