犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

人生いろいろ~大統領秘書官② 

2007-05-03 06:16:59 | 人生いろいろ
 私がソウルに赴任したとき,李君から電話があり,飲み会に呼ばれて行くと,すでに数人の日本人駐在員が集まっていた。
「李○○君後援会」の結成式だという。

「おい,そんな話聞いていないぞ!」

 でもまあ,みんな冗談半分で

「頑張れ,李君。大統領を目指せ!」

などと囃していました。

「ぼくが大統領選に出馬した暁には,1000万ウォンぐらいは出してくれますよね」

 みな酔った勢いで

「いいとも~!」

 その日の夜の惨状については,以前書いたことがあります(→リンク)。

 さて,「日本の専門家」として秘書活動を始めた李君から,私のもとに,さらなる依頼が舞い込みました。

「ヘンニム!」(兄さん,ヒョンニムの釜山なまり。私の知らないうちに義兄弟の契りを結んだことになっちゃっていました)
「お願いがあります。○○先生に,毎月一回,日韓関係についてのレポートを出さなくちゃなりません。助けていただけませんか。ついては,必要な新聞,雑誌代金は私が負担します」

 仕方ねえなあ,でも乗り掛かった船だ,ということで,翌月から私の家には,朝日新聞,サンケイ新聞,アエラが送られてくることになりました。そしてめぼしい記事をスクラップし,それらの記事を引用しながら,マンスリーレポートをまとめる。これが私の日課になりました。
 はっきり言って迷惑でしたが,それなりに日韓関係の勉強になったことは事実です。

 そうしたある日,李君から電話がかかった。

「犬鍋さん,ちょっとご相談があるんです。結婚相手のことで…」

 何人かで飲んだあと,私だけが李君の独り住まいの屋根部屋(建物の屋上に後から作った架設の部屋)に行って,さらに焼酎を飲みながら話を聞きました。

「候補が二人いるんです。一人はドイツに音楽留学に行ったヴァイオリニストで,美人。家もそれなりの資産家です。もう一人は在日。親は福岡でいくつもパチンコ屋を持っていて,桁違いの金持ちです。ベンツとフェラーリを持っているらしい。でも問題があります。ブスなんです。どっちにしたらいいでしょうか?」

「……」

「お金をとるか,美貌をとるか。悩むんですよねえ」

「……結婚って,そういう問題じゃないんじゃない?」

「でも,大統領選挙には金が必要でしょう。それにファーストレディは外見も重要だし。犬鍋さん,ちょっとは真面目に考えてくださいよ!」

 馬鹿馬鹿しくなった私は,適当なことを言って,李君の家の布団を被りました。

 数カ月後,結婚式の案内状が来ましたが,相手は芸術家でもなくパチンコ屋の娘でもない,延世大学医学部在学中のかわいらしい女性でした。きっと家も資産家なのでしょう。

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