二日目の晩。
この日も夕食が早く終わりました。ほかのメンバーは、ホテルでメールチェックなどがあるからといって部屋に帰りました。
私は暇をもてあまし、地下鉄に乗って、自分が唯一知っているスクンウィット街へ飲みに行くことに。
以前よく行っていたソイ(路地)は、24。タノン(大通り)の反対側を歩いていて、なかなか横断歩道がないので渡れない。タイの路地は、大通りの片側に偶数が、反対側に奇数が並んでいます。
結局、よくわからないながら、ちょっとにぎやかそうなソイ33に入って行きました。この界隈は日本人をはじめ外国人が多く、日本語や英語の看板が散見されます。いかにもあやしいマッサージなどをやりすごしたあと、女性たちが手持ち無沙汰にたむろしている小さなカラオケに入りました。
出てきたママさんは日本語がペラペラ。
「どの子にしますか」
(そうだった、女の子を選ぶんだった)
「日本語のできる子にしてください」
「じゃ、○○ちゃん」
店は閑散としており、客は私一人。まだ時間が早いからかもしれません。
「どういうシステムですか」
「飲み放題で、1時間800バーツ。サービス料が10%です」
頭の中で3.5を掛けます。
(3千円ちょっとか)
運ばれてきたお酒は「響」。
「いい酒出すね」
「中身は違うわよ」
「やっぱり?」
女の子は自称25歳。小柄で華奢。暗がりの中ではもっと若く見えます。
「昼は別の仕事?」
「そう。電話番とパソコン」
この仕事を始めて10か月とのこと。
「前は何をしてたの?」
「アサヒガール」
アサヒガールとは、アサヒビールのキャンペーンガールで、大きめのレストランに行くと、ビール各社それぞれのコスチュームをつけた女性が、客を席に案内します。客がそのビールを頼むと、女の子たちの収入になるようです。
「歌いましょうよ」
「あ、ぼくは歌のほうはちょっと…」
「じゃ、私が歌っていい?」
日本の最近の歌を上手に歌います。日本語を正式に習ったことはなく、歌とお客さんとの会話で日本語を身につけたそうです。
私の方も、勧められて場違いな韓国の歌を歌ったりしているうちに、あっと言う間に1時間が過ぎ、30分単位で延長。
片言の日本語で会話をするうち、この店の給与システムがだんだんわかってきました。
女の子たちの日給は250バーツ(900円)。インラック首相の公約だった最低賃金がたしか300バーツだから、それ以下です。これは、酒席に座っても座らなくても同じだそうです。指名があると300バーツ、「同伴」(お客さんと食事をしていっしょに店にくること)だと350バーツだそうですが、大した違いはないですね。結局、お客さんの酒席に出て、最後にチップをもらうのが主な収入のようです。
「もっと高い店もあるけど、そういうところはきれいな女の子が多くて、あまり指名がもらえないから…」
延長時間が終わるころ、ママさんがやってきました。
「また延長しますか」
「いえ、今日はこれで」
「お持ち帰りはどうしますか?」
「えっ?! お持ち帰り?!」
かつて、韓国のキーセンでこの言葉を聞きました(→リンク)。「お持ち帰り」という同じ日本語の表現がここタイでも通用しているようです。
(そーか、そういう店だったんだ。するとこの子も売春婦?)
女の子は隣で俯いています。
「いえ、結構です」
ママが精算のために下がったとき、お持ち帰りの値段を聞いてみました。
「お店に800バーツで、女の子は2500バーツ」
2500バーツは全額女の子がもらえるらしい。彼女たちの主な収入はこれだったのですね。田舎の出身だけれども、今は家族全員がバンコクに住んでいて、学生の妹とぶらぶらしている弟を、長女の収入で支えているらしい。
「タイではいちばん上の子がみなの面倒を見るの」
お父さんも働いているとのことですが、高収入の長女の仕事内容を知らないはずがない。
昔の軍慰安婦とは違って、親に売られたとか、女衒に騙されたとかではなく、自発的にこの職を選んだのでしょう。
(タイもまだまだ貧しいんだなあ)
女の子の明るさと職業のもつイメージのギャップに戸惑つつ、席を立ちます。
「じゃ、頑張ってね」
今の相場をよく知らないのですが、奮発したつもりで500バーツのチップを渡しました。
「コープクンカー!」
「サワッディークラッ」
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