北朝鮮の誤算

　金正男殺害事件は、いろいろな情報が飛び交っていますが、いくつかの報道を総合すると、北朝鮮のシナリオをこんな感じだったのではないでしょうか。

－ベトナムの女性とインドネシアの女性のそれぞれに、猛毒の化学兵器、ＶＸガスの材料になる薬品を持たせ、金正男の顔に塗り付けさせた。

－金正男の顔の上で二つの薬品が混ざり、ＶＸガスが生成された。

－薬品は、即死せずに１時間ぐらいあとに効果がでるような微妙な配合になっていた。

－金正男は、顔に変なものを塗られたが、そのまま搭乗手続をして、飛行機に乗る。

－そして飛行機の中で薬が効いてきて、息を引き取る。

－マカオ到着時、死んだ状態で発見されるが、心不全と診断される。

－一方、二人の女性にも時間の経過とともにＶＸガスが効果を及ぼし、それぞれ別の場所で亡くなり、たんに変死した二人の外国人女性として、処理される。

　かくして、北朝鮮による完全犯罪が成立する…。

　でも、金正男は予期に反して係員のところにいき、その後予定の飛行機に乗らずに医務室で息を引き取ってしまった。
また、女性の方は、手に違和感を感じてトイレで手を洗ったりしたので、嘔吐した程度で死には至らなかった。そのうえ、逮捕されてしまった…。

　北朝鮮の誤算でしょう。

　思えば、大韓航空機爆破事件でも、蜂谷真一・真由美の自称親子がバーレーンで拘束。シナリオでは、二人とも逃げきるか、見つかっても自殺して、日本人の犯行に見せかけるはずだったのでしょう。しかし、真一のほうは青酸カリの入った煙草を噛んで死んだけれども、真由美（金賢姫）のほうは自殺に失敗、長い取り調べの末、工作員であることを自白してしまった…。

　思い通りにはいかないものです。

　すでに中国は、この事件に対する（ミサイル発射もあるかもしれませんが）不快感を表明するために、北朝鮮に対する石炭輸出禁止措置をとり、マレーシアは国交断絶も辞さない構え。

　北朝鮮の誤算は今後も続きそうです。