コトバヲツグムモノ

「口を噤む」のか「言葉を紡ぐ」のか…さてどちらの転がっていくのか、リスタートしてみましょう。

あわれというも中々おろかなり

2011-02-22 23:32:12 | 真宗

今朝、おばあちゃんが死んだ。
ずっと病院で寝たきりだったし、93歳ということもあり、そう遠くない時期にこの日が来ることは予想できた。

先週には知人の訃報があった。
今まで知人の告別にはできるだけ赴いていたが、なぜか今回は気が向かなかった。
家庭や仕事の予定がやりくりつかず、葬儀には連れ合いだけがいくことになったときは、不思議な安心感があった。

日曜日には日曜礼拝で法話をし、その知人の話題を持ち出しもし、大人の座談会では当然のごとくその話題にもなった。

でも、メールや人の言葉で知人の死をしるだけで、面と彼の姿と向き合うことを避けて、リアルではないところに自分を置こうとしていた気がする。

今から思えば、この来るべき祖母の死…よりー身近なリアルな死を予感していたからこそ、逃げていたんじゃないだろうか。

昨晩、病院からの連絡があり、院長先生から状況を聞き、今後の方針を相談した。
その中の一部は家族の同意が必要な項目だったために、呼ばれて説明を受けた。
その時点で、結末は予想できた。
でも、予想なんてものは妄想妄念と同じで、リアルなものではなく、自分の想像しえる範囲で作り上げたものでしかない。

連れ合いに連絡をし、時間が遅かったんで寝ていた息子二人を残して、娘二人は最後の挨拶をさせた。

付き添うという母だけ残して帰宅し、朝に母からかかってきた電話で病院に向かった。
その電話をかけて病室に戻ったときには、すでに息を引き取っていたそうだ。
私はそんな状況でも「まだ間に合う、会える」という、何の根拠もない思いを旨に、朝の混雑した道を車を走らせていた。
そう、この期に及んでも、おばあちゃんが死ぬということはリアルではなく、想定外だ。
まったくもって、自分の都合でしかものを考えていない。

病室に居たおばあちゃんは、穏やかな顔をしていた。
呼吸マスクやいろんな装置がすでにはずされていたため、これまでよりも楽そうに見えた。
手は暖かかった。
私の手なんかより、はるかに生気があった。
でも、命はそこになかった。


お寺、葬儀社など、いろんな手続きを請負い、事務的にこなしていく。
逆に、感情的なことを感じることがない感じで、淡々とことを進めていく。
一度、家につれて帰り、今後の相談をする中、祖母が世話になっているお寺のご住職が来られ、枕経をお勤めしていただく。
臨済宗のお勤めで、南無妙法蓮華経。

日時などを打ち合わせして、家族交代で家に帰り色んな準備。
私は夕方に一度帰り、子どもらをつれて戻った。
普通の布団に寝ている、身近な状態を息子らに見ておいて欲しかった。
祖母の家に向かう途中で、息子らに初めて祖母の死を告げる。
どこにどう反応しているのか、泣きじゃくる息子ら。
説明や理屈じゃないところなんだろうと思う。

祖母の家に着いたら、うちの家族と母とだけで白骨の御文章をあげさせてもらう。
何かお勤めをしようかとも思ったが、息子らに聞いてもらうにはこの方がいいだろうと。
御文章そのままあげたあと、その意味を説明する。
浄土真宗に縁の浅い母にも何か伝わればと。

祖母の残した写真やノートをみんなで見る。
私と出かけたときのことを記して「食事に連れて行ってもらった。うれしかった」などと…

そのままそこで食事をして、今帰ってきた。

おばあちゃんの死を、受け止めることが出来ているのか、まだリアルじゃないのか、それすら分からない感じに包まれている。

ましてや、自分の死などまったく現実感がない。

白骨の御文章を、今一度拝読すべきはこの私のほうだ。
このあはれなものに問われているのだ。

それ、人間の浮生なる相をつらつら観ずるに、おおよそはかなきものは、この世の始中終、まぼろしのごとくなる一期なり。
されば、いまだ万歳の人身をうけたりという事をきかず。
一生すぎやすし。
いまにいたりてたれか百年の形体をたもつべきや。
我やさき、人やさき、きょうともしらず、あすともしらず、おくれさきだつ人は、もとのしずく、すえの露よりもしげしといえり。
されば朝には紅顔ありて夕べには白骨となれる身なり。
すでに無常の風きたりぬれば、すなわちふたつのまなこたちまちにとじ、ひとつのいきながくたえぬれば、紅顔むなしく変じて、桃李のよそおいをうしないぬるときは、六親眷属あつまりてなげきかなしめども、更にその甲斐あるべからず。
さてしもあるべき事ならねばとて、野外におくりて夜半のけぶりとなしはてぬれば、ただ白骨のみぞのこれり。
あわれというも中々おろかなり。
されば、人間のはかなき事は、老少不定のさかいなれば、たれの人もはやく後生の一大事を心にかけて、阿弥陀仏をふかくたのみまいらせて、念仏もうすべきものなり。
あなかしこ、あなかしこ。

 

 


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5 コメント

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南無阿弥陀仏 ()
2011-02-23 05:15:59
南無阿弥陀仏 動植物の死 人間の死 知人の死 親族の死 家族の死どこまで死がこの“稜”に迫ってきても他人事 こうごうたしょうに私に真実を知らしめんと“いのち”を投げ出し、先手先手で無常である我が身、無知で無明であることを、いま、このとき、この瞬間に至るまで、離れることなく“南無”と呼び続け、叫び続けている真如に南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏と合わぬ手が、あう不思議をmanuさんのブログを通じて聞かせて頂いています。不思議なもので母の一回忌を前に、Sさんの訃報、その少しまえから今週末の支部法座テーマを「白骨御文章」に決めて毎日目を通し、拝読していたこと、そしてmanuさん祖母の死を通じてね説法は、みな、いま、この“稜”一人に聞かす阿弥陀さまのお働きと知らせていただきます。勿体ない。ありがとうございます。南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏 後先逆になりましたがお婆様のご逝去に際して心よりお悔やみを申し上げます 合掌 南無阿弥陀仏
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re:南無阿弥陀仏 (MANU.)
2011-02-23 09:18:31
「稜」さん、どーもです。
どこまでも無常が分からんやつやと痛感します。
それがお目当ての南無なんだとも。
そこを喜ばせてもらえます。

でも、喜ぶだけでは…分からんやつやというだけでは…
ここのところに、大事な何かがあるんですが、今はうまく言葉になりません。
南無に触れて、頭をたれるのと、「まぁお任せだから」と胡坐をかくのとは違う…そこのところかな。
やっぱうまく言葉になりません。
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法然さん、親鸞さんの時代から ()
2011-02-23 16:00:46
こんにちは。真面目で求道熱心なmanuさんならではの“伝える”ということでのお悩み(ジレンマ)というか、そのようなものを感じました。“でも、喜ぶだけでは…分からんやつというだけでは…。ここのところに、大事な何かがあるんですが~”“~胡座をかくのとは違う”“今はうまく言葉になりません”に、manuさんの人柄というか、真摯に、大切に物事に関わっておられる姿勢を垣間見るかんじです。お恥ずかしい限りの放逸無惨な私です。でも、manuさんと同じよう法然さん、親鸞さん、蓮如さんもそこでご苦労をなさったのですね。原文はみたことないですが、ご消息や御文章などをみると私のような人間がいたことを知らされます。ご法話、座談で聞かされ、導き頂いても直ぐ様自分の手柄にしてしまいた私をみます。「領解も機にはとどまらす仏にかえる」ときいたことがあります。manuさんのコメントから今のようなことを味わいました。ありがとうございます。南無阿弥陀仏 なんまんだぶ 南無阿弥陀仏
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誰の人も早く (かりもん)
2011-02-23 18:28:32
南無阿弥陀仏
改めて、お悔やみ申し上げます。

修正会や初産式でもお会いしたことがありましたね。本来なら、浄土真宗のご縁がない御方だったであろうに、最後にお孫さんのお念仏で見送られていかれたわけですね。

哀れというも、おろかなりの私に向かって、「人間のはかなき事は、老少不定のさかいなれば、たれの人もはやく後生の一大事を心にかけて、阿弥陀仏をふかくたのみまいらせて、念仏もうすべきものなり。」
と教えてくださっていいるんですね。
東京法座でも皆さんと頂きました。あらためて、「誰の人も早く」のお心を聞きながら、共にお念仏させてもらいました。

南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏
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ありがとうございます (MANU.)
2011-02-28 16:20:05
昨日、初七日逮夜を済ませ、ちょっと一息の感じです。

「稜」さん、どーもです。
いやぁ、褒められるようなもんじゃないですよ。
この記事やコメントを書いたときは、あまり”伝える”ってことを意識はしてなかった感じです。なんというか、むき出しでいろいろ思い浮かぶことを、整理せずに書きなぐった感じでしょうか。むしろ、「稜」さんがコメントしてくださったことで、さらに深く自分に帰ってきた気がしますね。ありがとうございます。

「かりもん」さん、どーもです。
そうですね、お念仏に縁がなかったかもしれない祖母が、私や連れ合い、ひ孫らのお念仏に出会ったのも不思議な感じです。
先日の日曜礼拝で「老少不定」のことを話したのですが、そのことがさらに深く息子らに染み入ったようです。まぁ、のどもと過ぎれば忘れっぱなしなのは私も一緒ですが。
七日ごとのご縁を通じて、祖母のためではなくそこに集う縁者のために、「白骨の御文章」をくりかえしあげさせていただこうと思ってます。

南無阿弥陀仏
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