今回は、面白古文書『吾妻美屋稀』の8回目、「浮世たくさんな人すくない人の見立角力」です。世の中で、たくさんな人とすくない人をそれぞれ23人ずつあげて競う、見立相撲です。
いつものように、全体を4分割して、右上から。
浮世たくさんな人すくない人の見立て角力
たくさんな方
大関 金もちのしハんぼう(金持ちのしはん坊)
【しはん坊】ケチな者
関脇 むすめのしばゐずき(娘の芝居好き)
小結 よめいじりのばゝさん(嫁いじりの婆さん)
前頭 後家のせわやき(後家の世話焼き)
同 上ざいくしののら(上細工師ののら)
【のら】なまけ人
同 としよりのじんばり(年寄りの腎張)
【腎張】精力絶倫なこと
同 げい子のつめなが(芸子の爪長)
【爪長】非常にけちな人
同 びんぼう人のとし子(貧乏人の年子)
同 すれがらしのおなごし(擦れからしの女子)
同 かヽにまかれるていしゆ(かかに巻かれる亭主)
同 おなごのあんま(女子の按摩)
同 気のきいた風のあほう(気の利いた風の阿呆)
同 なりあがり者のぎり知らず(成り上がり者の義理知らず)
同 かゝけつのぜいもの(空穴の贅者)
【空穴】一文無し
【贅者】見栄っ張り
同 わかい人のしつやミ(若い人の疾病)
同 やまめのしらミ(やまめの虱)
【やまめ】一人暮らしの男
同 すゞミのあんま(涼みの按摩)
同 おなごのいもずき(女子の芋好き)
同 はなしずきのながじり(話好きの長尻)
【長尻】人の家に座り込んでなかなか帰らないこと。
同 へたのしやうぎずき(下手の将棋好き)
同 しやうだんするでつち(商談する丁稚)
同 ふろやでやたら二しやべる人(風呂屋でやたらにしゃべる人)
同 かヽをねさして朝おきする人(かかを寝させて朝起きする人)
行司 節季のつまらん人(節季の詰まらん人)
【節季】年二回の掛売支払い
【詰まらん】やり繰りがつかない
少ない方
大関 いろけはなれた出家(色気離れた出家)
関脇 太夫になるかむろ(太夫になる禿)
【禿(かむろ)】太夫などの遊女に仕えて、見習いをする少女
小結 しうとめにかう/\な嫁(姑に孝行な嫁)
前頭 白ねづミのばんとう(白鼠の番頭)
【白鼠】主家に忠実な番頭や雇人。
同 役しやのめいじん(役者の名人)
同 やうし婿のとくじつ(養子婿の篤実)
同 おやまのはらぼて(女形の腹ぼて)
同 しやうたくの子もち(妾宅の子持ち)
同 十年もつヾく薬やの客(十年も続く薬屋の客)
同 お家さまになるおやま(お家さまになる女形)
【お家さま】上方で、中流以上の商家の主婦を敬っていう語。
同 おとなしいおうば(おとなしい御乳母)
同 商売にせいだす息子(商売に精出す息子)
同 ぶぜにかしの泪もろいの(夫銭貸しの泪もろいの)
【夫銭】年貢以外に、使役やその代わりに納めさせた金銭
同 しろいもじの本むく(白い綟の本無垢)
【綟】麻糸で織った目の粗い布
同 やまひあがりのかミのけ(病上がりの髪の毛)
同 しつやミのむきず(疾病みの無傷)
同 仕にせの常店(老舗の常店)
同 おたふくのはなばしら(お多福の鼻柱)
同 素人浄るりの玉かぶ(素人浄瑠璃の玉歌舞)
同 二十五六のあらばち(二十五、六の新鉢)
【新鉢】処女
同 そうバはりのかねもち(相場張りの金持ち)
同 金もちでひげする人(金持ちで卑下する人)
同 江戸へ欠落して尻据る人(江戸へ欠落して尻据える人)
【欠落】駆け落ち
行司 せつきの払に仕かけせぬ人(節季の払いに仕掛けせぬ人)
【仕掛け】だまし。ごまかし。
昔も今も、あまり変わらないですね(^-^*)
ただ、一つ、「芸子の爪長」というのは、三味線の稽古などする芸子は少ないので、「芸子には爪の長い者が多い」と読んでしまいました。
「長爪」というのは、「非常にケチな人」のことを言うのですね。
これなど、解説がないと、全く意味を取り違えるところでした(~_~;)
そのせいか、何とか赤無しでクリアーできました(少し不安なのもあります(^^;)
「爪長」は以外でした。こういうのは俗語でしょうか。自分は、「爪中」でしょうか。一度でいいから、「爪短」になってみたいものです(^^;