見込みに、富士山、たか、茄子が描かれた、やや小ぶりの石皿です。
径 25.0㎝、高 4.4㎝、高台径 11.4㎝。 江戸後期~明治。
使用された形跡はないのですが、古格は十分にあります。
また、普通の石皿より、全体が白いです。
描かれているのは、石皿で時々見かける、一富士二鷹三茄子の図柄です。
石皿の絵は、普通、皿いっぱいに豪快に描かれるのですが、この絵はかなり控えめです。
さては、チビタ絵の偽物をつかまされたか!
前回の「四階の松石皿」の例がありますから、もう疑心案義です(^^;
で、もう一度、冷静に描線をながめてみると、走るような筆使いではありませんが、ためらいなく、きっちりと引かれています。
また、空白の場所が非常に多いにもかかわらず、5個の目跡のうち2個は、絵と字の部分におかまいなくかかっています。
どうやら、この品は大丈夫のようです。
ところで、石皿として見た場合、この皿は他の品とかなり違いがあります。
まず、石皿の特徴である外周の鍔ですが、裏側へ襞状にぐるっと窪ませてあります。
もう一つの大きな違いは、手で触れたり、持ったりしたときの感覚です。普通の石皿ようなごつごつした感触と、ざらざらした土ざわりの感じがしないのです。
高台をみると、非常に肌理が細かく、白い土が使われていることがわかります。
目跡に残った土も、非常に細かく白いです。
釉薬の感触は、肌にしっとりとくる温かみがあります。これは、長石釉ですね。
石皿のほとんどは、瀬戸洞窯で作られ、釉薬は、灰と長石を混合して用いたと言われています。今回の品は、それとはちがって、長石のみが使われたため、灰釉中の鉄分による黄色が出ず、白い土と白い釉薬が、このような白い石皿を作り出したのでしょう。
高台回りをみると、赤く発色しています。志野焼にみられる緋色によく似ています。
このようにみてくると、この品は、瀬戸ではなく、美濃で作られた石皿ではないかと思われるのです。
どうしても、美濃贔屓になってしまう遅生でありました(^^;
石皿の真贋鑑定も難しいものがありますね。
また、瀬戸も美濃も、どちらも近くなので、両者は同じものと思ってしまいますが、両者の間には、かなりの違いがあるんですね。
美濃贔屓になってしまうのは、郷土愛からでしょうか(^-^;
いやー、実は私もそうだったんですよ。あやうく珍品を捨てるところでした(^^;
でも、穴のあくほどみていると、違う物が見えてくることがあるんですね。
以前、円空の繪をさる家から入手したのですが、一か月、毎日見ていたら、別の線(下書き)が見えてきました。業者に頼んで交換会に出したら、えらく高値になりました。今頃、しかるべき所に納まっているかもしれません(^^;
当人たちは、ああだこうだと必死ですが、美濃も瀬戸も、少し離れてみれば、同じようなもので、滑稽ですよね(^^;
裏面を見ると、確かに一般的な瀬戸絵皿とは雰囲気が違うように感じますが
まさに贋作と珍品は紙一重のところにあるということでしょうか。
骨董の場合、「約束事」みたいなものがあるのは確かですが
遅生さんのように、多くの品を見て触って購入した人にしか判らない感覚的な部分、これが重要なんでしょうね。(ワタシは無理)
昨日も、ある品が大偽物であることに気がつきました。まだそのダメージから立ち直れていないところです(^^;