今回の品は、日本の舞楽で使われる蘭陵王面(レプリカ)です。
先回のブログで、インドネシアの霊鳥、ガルーダを取り上げました。そして、元々、インドのヒンドゥー経の聖鳥が長い年月の後、インドネシアに渡ってガルーダとなり、さらに仏教に取り入れられて守護神、迦楼羅と変化してきたことを述べました。
日本では、迦楼羅像の他に、古代に大陸から伝わった伎楽で使われる迦楼羅面が知られています。
迦楼羅面(東大寺、重要文化財)
これは後に烏天狗面へと変化していきました。
一方、伎楽の後、日本独自の舞踊として、舞楽が興りました。舞楽に用いられる仮面の中でも、飛びぬけて特異な物が蘭陵王面(羅陵王面、陵王面)です。
幅 20.2㎝x 長 34.5㎝ x 奥 15.2㎝。重 712g。木粉-樹脂製。現代。
蘭陵王は、よく演じられ、我々には馴染み深い舞楽です。
『仮面の美』(熱田神宮、平成16年)
名古屋の熱田神宮での大規模な展示会の図録です。熱田神宮も古面を多く所蔵しています。
蘭陵王面はどうして生まれたのでしょうか。一説によれば、この面は、たぐい稀な美男であった北斉の蘭陵王長恭が、兵士達を鼓舞するために醜い面をつけて戦いにのぞんだという故事に由来しているとのことです。
事の真偽はさておき、この面は日本の仮面の中でも、飛びぬけて奇怪です。
醜い顔にくわえて、
吊り顎がブラブラ動きます(本来は、眼も動く)。
今回の品はレプリカですが、経年の剥げなども表現されています。
いったいこの品は何でできているのでしょうか。木製にしては重いし、質感も冷たい。
片隅に傷をつけて(^^; 顕微拡大してみました。
表面の黒塗料の下に赤塗料、その下は白粉が塗られています。奥に見えているが本体。どうやら、木の粉を糊か樹脂で固めてあるようです。水で濡らしても軟化しませんから、樹脂ですね。触感はひんやり、木にしては重い、という手取り感覚がうなずけます。
面の裏側には、粗い布(麻?)が貼り付けてあります。どうやら、乾漆の面を模しているようです。確かに、古代の伎楽面には、木造の他に乾漆造の物があり、裏面は布で補強されています。しかし、少し後に興った舞楽で用いられる舞楽面は、ほとんどが木彫です。蘭陵王面も当然、木彫。やはり、レプリカの時代考証は、中途半端なのですね(^^;
さて、今回のブログの本題はこれからです。
奇怪な蘭陵王の頭の上には、さらに奇怪な生き物が乗っています。
上の図録の蘭陵王面にも、必ずこの生き物が。
どうやら、生き物がグッと頭をもたげている面(右頁)と這っている面(左頁)とに大別できるようです。
この生き物は龍とされています。龍が王権を象徴しているからです。
しかし、翼を広げた様子は、どうみても龍ではなく、鳥に見えます。霊鳥ガルーダと考える方が自然だと思うのですが・・・・・。
先回の本家、ガルーダと並べてみました。
頭の上の生き物だけでなく、眼が飛び出た顔自体もガルーダ的ですね。こりゃあまるで、ダブルガルーダ(^.^)
2体のガルーダが、
トイレの悪霊を退治してくれるので安心です(^.^)
迫力があるお面ですね!レプリカといえど古い雰囲気もでていていいですね。
顕微鏡が活躍してますね!
そして遅生さんの解説がとても勉強になり読んでいて面白かったです。
お面書籍70冊は伊達じゃない!!笑
ダブルガルーダで安心のトイレ美術館ですね(^^)
それが、ガルーダのおかげで日の目をみたわけです。ガルーダの威力はこんな所にまで及んでいるのですね(^^;
泥棒を驚かすために、どこか適当な掛け場所を考えてみます(^.^)
でも、それは、相当に本を読み、勉強もしないと分らないですね。
研究の成果ですね(^_^)
なるほど、ダブルガルーダです!(^-^*)
やはり参考にする物があったのではないでしょうか。
疑問が少しずつほぐれて、自分なりに納得できるとうれしいです。
けれど、あまりにも時間と労力を要します(^^;