遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

古面44 バリ島ガルーダ仮面(補遺版)

2024年02月16日 | 古面

ブログをアップした後、なにげなく図録を繰っていたら、天理大学の所蔵品のなかに、故玩館のガルーダと非常によく似た品を見つけました。末尾に追記として載せましたので御覧ください(2024/2/16)。


 

今回は、よく知られた品、ガルーダです。

幅 25.6㎝x 長 20.8㎝ x 奥 26.3㎝。重 672g。インドネシア。20世紀前半。

ガルーダは鳥の姿をしたヒンドゥー教の戦いの神で、神鳥、聖鳥とされています。長い年月を経て、インドから東南アジア、東アジアに広がっていきました。ガルーダは、人間の身体、鷲頭、嘴、鉤爪、大きな翼をもつています。不老不死で、毒のある蛇を退治してくれることから、無病息災、家内安全の神として大変人気があります。
なお、伎楽で使われた迦楼羅面は、仏教に取り入れられて変化したガルーダ面です。

原色で毒々しく彩色された金ぴかのガルーダが、我々が普通に目にする物です。歴史風土の違いを考慮しても、感覚的にはなかなかなじめない人が多いと思います。

今回の品は、古いガルーダ面です。色は退色し、塗りは剥げ、木部の風化がすすんでいます。かなりの年月を経ているので、ケバケバしい感じは全くありません。故玩館の日本の古面に混じっても、それほど違和感を感じません。

戦前に請来された品でしょうか。

手の込んだ彫りです。

長~い舌や入り組んだ牙は、くっ付けてあります。

 

少し小さいですが、被れないことはありません。

が、上部に二つ穴があいているので、壁などに掛けたのでしょう。

なぜか内部にも赤彩色が。

耳も付けてあります。

聖鳥の風格は十分ですね。

 

【追記】

故玩館には仮面関係の書籍・図録類が70冊以上あります。そのうちの一冊、『変貌の道具 仮面』(天理大学、昭和55年)に、今回のガルーダとよく似た面が載っていました。

すべて、天理大学所蔵の仮面です。

この頁は、インドネシア、バリ島の神事劇で用いられる仮面です。

その中の一つを拡大してみると、

ガルーダではありませんか。

しかも、今回の品と非常によく似ています。

赤、黒、白、金泥を用いた彩色も同じです。

図録の解説によると、「バロンとランダ」という神事劇で、悪の魔性、ランダに立ち向かうため、善の象徴、バロンが、いろいろな仮面をつけて踊る場面で使われます。ガルーダ、豚、牛、虎、獅子などです。霊鳥であるガルーダをつけたバロンの舞いは、悪の力と対決するにはうってつけなのでしょう。

故玩館のガルーダも、バリ島で実際に使われた物と思われます。一度、これを被って、悪に立ち向かいたいものです(^.^)

追追記:故玩館には100枚ほどの古面がありますが、素性のわかる品はほんの数枚です。今回のガルーダで一枚増えました(^.^)


コメント (14)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 野生の眼覚め!正月菜 | トップ | 古面45 蘭陵王面はガルーダ!? »
最新の画像もっと見る

14 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
遅生さんへ (Dr.K)
2024-02-12 10:03:27
長~い舌や牙は、1本の木からくり抜いたのではなく、くっ付けてあるのですか。
ここまで退色し、風化が進みますと、ケバケバしい感じがなくなり、日本人にも馴染みますね(^_^)
返信する
Dr.Kさんへ (遅生)
2024-02-12 11:55:06
こういう物は、一歩間違うと、通俗的で下品な品に堕してしまいます。
それを、結構に風格のある物に仕上げてくれるのですから、時間の力は偉大です。
ずっと、舌や歯も、一木から掘り出したのだとばかり思っていました(^^;
冷静に考えてみると、そこまでの品物なら、文化財級の工芸品ですね(^^;
返信する
Unknown (ぽぽ)
2024-02-12 13:38:28
遅生さんへ
かっこいい品ですね!龍に見えます。
やはりアジアに寄ってくるとかなり親近感がでてきますね!
アフリカ面の神秘的な造形も魅力的ですが
このお面はなんとなく日本的な要素も多く感じすんなり入ってくる感じがします(^^)
日本的というより日本が影響を受けているんでしょうけども(^_^*)
返信する
ぽぽさんへ (遅生)
2024-02-12 14:48:37
やはり、アジアとアフリカはだいぶ趣が異なりますね。

能面など一部の物を除いて、日本の古面の由来などは不明です。
あらゆる文化は、中国、朝鮮を経由して入ってきたわけですから、日本の古面も当然大陸の影響を受けているはずです。
インドのガルダがそのまま迦楼羅面になったのはその典型例でしょう。さらに、長い間に日本流のアレンジ、変化加わり、いわゆる日本風の面が多彩に作られていった点は興味深いです。
返信する
遅生さんへ (酒田の人)
2024-02-12 20:41:04
これは龍のような造形で迫力がありますね~
宗教や土俗文化がこのような想像力を生むことを思うと
そのエネルギーの大きさは半端なものでないのを感じます。
返信する
酒田の人さんへ (遅生)
2024-02-12 21:07:52
ほんとですね、この迫力はどこから出てきたのでしょうか。
やはり仮面には、人智を超えた力をもたせたかったのだと思います。ガルーダの原型は相当昔に作られたと思うのですが、今でも十分に威力があるのは不思議でもあり、当然という気もします。
返信する
遅生さんへ(その2) (Dr.K)
2024-02-16 10:18:48
天理大学所蔵の仮面のガルーダと非常によく似ていますね(^_^)
また、このガルーダの素性も分ってよかったですね(^-^*)

それにしても、「故玩館には仮面関係の書籍・図録類が70冊以上」もあるのですか!
それだけでも凄いですね(^-^*)
返信する
Dr.Kさんへ (遅生)
2024-02-16 10:48:37
柴田コレといっしょで、普段、なかなか見ようと言う気になりません。ところが、いざ調べるとなると、途方もない量で大変です(^^;

天理大学の所蔵品は、世界への布教がらみで集めたらしいです。かなりの量です。今らなら民博などに明族仮面は多くありますが、大谷大学のコレクションも含め、先駆的な民族コレクションには宗教の力が大きかったのですね。
返信する
Unknown (ぽぽ)
2024-02-16 11:53:27
遅生さんへ
Kさんと同じく70冊にびっくりです!
やはりコレクターは勉強必須ですね。。
私も最近伊万里の本ちょこちょこ買ってるいるのですが、置き場所が、、
ついに家族からクレームがでてきました。
武士の情けがなくなりそうです笑
品物はまさに本に載っているものと同手ですね!
この見つけた時のスッキリ感と嬉しさが私も好きです(^^)
返信する
ぽぽさんへ (遅生)
2024-02-16 13:02:59
何事も情報です。
ネット時代とは言え、本はとても役に立ちます。記憶の質が違いますね。ネットの情報はバラバラでとりとめがなく、自分の中でこなすのが大変です。その点、本からの情報は、自分の中で系統的なつながりが作りやすいです。
私の所は、ガラクタ品物にはいい顔はされませんが、本はノーチェック。
最近は書籍の値段が滅茶滅茶低いですから、いくらでもOK。
置き場所は,
たとえば、トイレ図書館(^.^)
返信する

コメントを投稿