遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

磁胎七宝草花紋大茶壷

2024年11月18日 | 陶磁胎七宝

ここしばらく書画が続きましたので、少し趣向を変えて、骨董に移ります(^.^)

磁胎七宝の大茶壷です。

幅 14.0m、高 17.6㎝、重 1216g。明治時代。

この品は、中国製として売られていました。

それまで集めていた陶胎七宝と少し違うけど、まあいいか。底銘も、何となく中国風だし。中国でも同じような物が作られていたとして、参考にゲットしておこうと考え、そのままになっていました。

ところが、その後、この品をよく見ると、陶器ではなく、磁器に七宝処理が施されているではありませんか。しかも、底銘は、「松岡」と読めなくもない。「松岡」は、明治期に多くあった輸出陶磁器の業者の一つです。

そんなわけで、これまで集めてきた陶胎七宝の兄弟分を発見し、そちらにも目を向けだした次第です。

七宝釉は、陶胎七宝と同じく、泥七宝です。

茶壷の胴には、桔梗と、

芙蓉?の花が、大きく描かれています。

側面は、幾何学模様。

肩や、

下側面も、幾何学模様。

蓋には、レトロモダンな模様が施されています。

明治、大正時代の絵ハガキを見るかのようです。

以前に紹介した「陶胎七宝花鳥図茶壷」と並べてみると、器形や模様の配置はよく似ていますね。

右の品「陶胎七宝花鳥図茶壷」は、その銘「安田造」から、京都粟田系の品と判断されます。

では、今回の品、底銘「松岡」は、どこの産地の物でしょうか。

 

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西田幾多郎 自作五言絶句『青山連海盡』

2024年11月15日 | 文人書画

哲学者、西田幾多郎の自作漢詩です。

全体:60.3㎝x192.6㎝、本紙(紙本):47.8㎝x129.5㎝。昭和10年。

青山連海盡潮水接
天流落日烟雲外只
看富岳浮  寸心

青山連海盡
潮水接天流
落日烟雲外
只看富岳浮

青山、海に連なりて盡き、
潮水、天に接(つづ)きて流る。
落日、烟雲の外、
只看る、富岳の浮かべるを。

昭和10年春、西田幾多郎、65歳の時の漢詩です。先日紹介した作品と同様、独特のほねホネ書体で書かれています。

西田は、哲学の研究のかたわら、短歌、俳句、漢詩をつくっていました。

今回の作品は、京大を定年退官した後、哲学論集を纏めていた頃につくられたものです。

移り住んだ鎌倉の情景を詠んだのでしょうか。壮大な世界が広がっていますね。

ps.『西田幾多郎遺墨集』(昭和58年、一灯燈園 燈影舎)に未掲載の作品です。

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小原鉄心 五言絶句『治要在理財』

2024年11月13日 | 文人書画

幕末に活躍した大垣藩武士、小原鉄心の書です。

全体:43.0㎝x178.9㎝、本紙(紙本):30.2㎝x133.6㎝。幕末ー明治初。

【小原鉄心(こはらてっしん)】文化十四(1817)年 ~ 明治五( 1872)年。名は忠寛、字は栗卿。号は鉄心、是水、酔逸など。大垣藩の重臣。藩政の改革に尽力。幕末には、難しい立場に置かれていた大垣藩を新政府側へと導き、藩を救った。また、梁川星巌・紅蘭、江馬細香ら文人たちと交わり、詩、書画をよくした。酒豪として知られる。

 

治要在理財
恐他不堪苛
厳乎官貸法
其無如之何
 鐵心生小原寛

治要は財を理するに在り。
恐らく他は苛に堪えざらん。
厳なるかな、官の貸法。
それ之を如何ともするなし。

治世の要は、財貨の運用(経済)である。
おそらく、他は、人を責めさいなむようなものにならざるを得ない。
なんと厳しい事か、官の貸法は。
これではどうにもならない。

官貸法:江戸時代、凶作時に、各藩は、農民に備蓄米を貸し付けた。しかし、利息が返せず、土地を手放さざるをえない農民も多くいた。

 

印、和楽

印、寛字栗卿  印、鐵心

今回の書『治要在理財』は、小原鉄心が遺した「論政十二首」とよばれる為政の道を詠んだ漢詩の一つです。このなかで彼は、政治で最も重要なのは財貨の運用、すなわち経済であると述べています。そして、そのやり方は寛大でなければならない。官の貸付のような方法は、人々にとって過酷なものとなってしまうだろうと。

現代にも通じる卓見ですね。

鉄心は、「論政十二首」のなかでも、『治要在理財』を一番気に入っていたようで、かなりの作品を残しています。

ほとんどは、次のような詩です。

治要在理財
宜簡不宜苛
厳乎官貸法
其無如之何

今回の品とは、赤の部分が異なっています。

「論政十二首」で元々詠われている『治要在理財』はそれらとは少し異なっています。

治要在理財
理財恐成苛
貧富各至極
狺狺民訴多
厳乎官貸法
其無如之何

論旨は同じですが、ニュアンスはかなり異なりますね。

はたして、小原鉄心は、どの『治要在理財』を一番と考えていたのでしょうか。私としては、今回の品であってほしいです(^.^)

酒が入るほどに、彼の筆はすすんだといいます。以前紹介した異端の書家、三輪田米山と同じですね。ただ、豪放磊落な三輪田米山の書とは異なり、小原鉄心の場合は、字がリズムにのって踊っています(^.^)

両者は、それまでの書法の殻を破ろうとしたという点から、近代の書の先駆けと言って良いでしょう。それどころか、近代を突きぬけ、現代書へも挑発を続けていると思えるのです。

 

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ローゼルで遊ぶ(お笑いレシピ、3種)

2024年11月10日 | ものぐさ有機農業

昨年、試しに育ててみたローゼルが好評だったので、今年は一畝分作ってみました。ものすごい量になりましたが、何人かにおすそ分けして、大変喜ばれました。後は、自家消費。大半はジャムにしました。

あれだけ繁茂していたローゼルも終盤。

ポツポツと残っていた実を収穫しました。

種用に一本だけ残してあります。

さて、最後に収穫した虎の子のローゼルをどうするか?

ハイビスカスティーやローゼルジャムはもう飽きたし・・・

と、そのとき、姉から情報が。

塩もみがいけるらしいとのこと。

塩だけではイマイチの味らしいので、塩昆布を使いました。

ジップロックに入れて、まぜまぜ、モミモミ、して、冷蔵庫で一夜放置。

しっとりとした濃紅の塩もみの出来上がり。

して、お味は?

これはいける。コリコリとした子気味よい食感で、お味もグー。

ご飯のおともになりそうです(^.^)

さらにもう一品。これも、姉からの情報(さるフレンチでのドリンク)をもとに、私が作り方を推察。

カップ2杯の水に、

ローゼルを大匙2杯(一週間前から、左手でスプーンがつかめるようになりました。震えてるけど(^^;)

3分間煮て(2分で十分)、ハチミツで味を調整。

気分はもう、おうちフレンチ。何のことはない、ハイビスカスティーの一バージョン。ちなみに注文すると、野口英世さん一人強だそうです(^.^)

姉からの情報の受け売りばかりでは、男がすたります。

ここで一発挽回を、と考えたのが下のディッシュです。

土日の朝食は私が当番なので、今朝まだ暗い畑で、サニーレタスと伏見甘長をとってきて、ローゼルをサラダに添えました。

目玉焼きの方は、「裸のマハ」をイメージしたのですが(^^;  これではまるで、かわいいヒヨコさん(^.^)

ps。ローゼル塩漬けは、シソの若種を加えて、バージョンアップしました。

 

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立原杏所『水墨淡彩 飛瀑逐牛図』

2024年11月08日 | 文人書画

水戸藩の武士、立原杏所の淡彩画です。

全体:35.9cm x141.5㎝、本紙(絹本):25.0㎝x64.8㎝。江戸後期(文化7年)。

【立原杏所(たてはらきょうしょ)(天明五(1785)年ー天保十一(1840)年)】水戸生れ。彰考館総裁立原翠軒の長男。名は任。字は子遠、公遠など。杏所は号。文武両道に秀でた人格者。徳川斉昭の信頼が厚かった。絵を谷文晁に学び、渡辺崋山、椿椿山とも親交があった。関東南画檀の中心。大正・昭和初期の詩人、建築家、立原道造は子孫。

繊細な筆使いで、雄大な山水画が描かれています。

特徴的な巨岩。

温かみのある人物と牛。

作者の落款と印章。

奇怪な構図の作品ですが、緊張した画面の中に、静かな透明感が感じられる不思議な絵です。

この作品には、鑑定家、西村南岳の箱書きがあります。

このようなものは、あまり頼りにならないのですが、南岳の箱書きは比較的信頼がおけます。

さらに、この品には、鑑定家、中野雅宗の鑑定書がついています。こういう鑑定書は、いかにも怪しげ(^^; 

しかし、今回は少し事情が異なります。

中野雅宗によれば、この飛瀑逐牛図は、立原杏所、26才の時の作品とのこと。「明ノ上州ノ勝景図二倣ヒ、之二逐牛ヲ配ス、近景の断崖、落葉樹ハ晩秋ノ季節ヲ現ワシ、主山の巨巌ハ杏所独自ノ天造二シテ画興深々タリ、・・・・」と作品を評しています。

文人画の系譜に入る絵だと思います。

中野雅宗は、「杏所先生遺墨顕彰会」を主宰していて、その第11号に登録されているのがこの品です。

さらに、彼は、『日本書画鑑定大事典』(図書刊行会、2011年)全10巻を著わしていています。一巻が600頁余の大部、印影(朱色)落款約58000、写真千点以上にも及ぶ膨大な鑑定書です。偽印も対照されているので、私は図書館でよく利用します(定価が30万もするので、さすがに自前では無理(^^;)

立原杏所の項目に、今回の落款と印章が載っています。

左下の「立原任公遠作(26才)」。

上段左から二つ目「立原任印」と下段左端「杏所」

今回の品は、大著『日本書画鑑定大事典』の一部を担っているのですね。

贋物が多い立原杏所の作品ですが、今回の品は何とかいけそうです(^.^)

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