産婦人科研修の必修知識2004(日本産科婦人科学会)、267~271頁、より抜粋
癒着胎盤 placenta accreta
(1) 定義
胎盤の絨毛が子宮筋層内に侵入し、胎盤の一部または全部が子宮壁に強く癒着して、胎盤の剥離が困難なものをいう。組織学的には、床脱落膜の形成が欠如しているものを癒着胎盤という。絨毛は、筋層から漿膜に達することもある。なお胎盤が子宮壁に付着しているが、筋層との結合が蜜ではなく、床脱落膜の欠損を伴わない真の癒着ではないもを付着胎盤 adherent placenta と呼ぶことがある。臨床的には、胎盤用手剥離に伴い大出血をきたすことから、二次的にショックやDICを引き起こす。母体死亡に占める割合も約3%にものぼり、産科的に重要な疾患である。
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(4) 頻度
付着胎盤を含めて約0.3%の発生率で、癒着胎盤だけでは約0.01%とまれな疾患である。癒着胎盤の中では、楔入胎盤が最も多く約80%を占める。次に嵌入胎盤が約15%で、穿通胎盤は5%とまれである。癒着面の広さについては胎盤面の部分癒着および焦点癒着が多く、全癒着は少ない。初産経産別では、経産婦に多い(約80%)。
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(6) 診断
分娩以前には、その診断は不可能である。しかし、分娩後に胎盤遺残を認め、胎盤娩出促進法を行っても胎盤剥離徴候が認められない場合には、癒着胎盤が疑われる。分娩後の超音波診断法では、正常胎盤付着部に認められる retroplacental hypoechoic lesion の欠如または消失する所見として、癒着胎盤が認められる。確定診断は摘出子宮または胎盤の病理組織学的な検索によってのみ得られる。
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「産婦人科研修の必修知識」は、日本産科婦人科学会が刊行した本であり、我が国においてコンセンサスが得られた内容と考えられます。全文を参照したい方は、各自、原本にあたって調べてみてください。上記文献では、癒着胎盤の頻度は0.01%(1万分娩に1回)と記載されてます。