いまや、産婦人科の新人医師の7割は女性という時代になっています。また、卒後研修の最初の頃は産婦人科志望だった女性研修医が、2年間の卒後研修期間中に産婦人科医達の激務ぶりを目の当たりにして、途中から他科志望に変わってしまう事例も少なくないように聞いてます。
これからは、女性医師が産婦人科を一生の仕事として選択しても、結婚・出産・子育てと仕事を無理なく両立できて、子育てをしながらでも、仕事を中断しないで、十分な研修・臨床経験を積んで、医師として成長してゆけるような魅力ある職場環境に変えていかなければならないと考えています。
******* 読売新聞、2006年3月25日
産科 厳しい現実に尻込み
「産科や小児科の現場を見て、尻込みしました」
医師になって2年間、今月まで金沢大などで臨床研修を受け、来月から内科に進む島田幸枝さん(26)は、複雑な表情で語る。
(中略)
島田さんは今月結婚した。いずれ子供が欲しいが、仕事も中断せずに続けたい。産婦人科や小児科は魅力的だが、仕事と家庭を両立できるだろうか。
「産科や小児科では、若い間は身を粉にして働けるかもしれないが、燃え尽きてしまいそう」。結局、内科医を目指すことにした。
日本産科婦人科学会の調査では今春、臨床研修を終え、大学や研修指定病院の産婦人科に入る医師は約310人。最近数年に比べ1割以上減った。東北地方12人、北海道7人、北陸9人など、特に地方は少ない。
調査をまとめた藤田保健衛生大産婦人科教授の宇田川康博さんは「現場を体験して進路を決められる研修は、研修医には望ましいが、働く環境が厳しい産婦人科や小児科の医師不足を加速させてもいる」と話す。
全国の80大学病院の産婦人科のうち、入局予定者ゼロは14か所あった。金沢大もその一つだ。
同大産婦人科医局長の田中政彰さんは「島田さんのように、熱心に産科研修に取り組んだ人に来てもらえないのは残念だ。魅力ある産婦人科診療の体制をどう整えるかが問われている」と言う。
今春、産婦人科に新たに入る医師の7割が女性だ。それだけに女性が働きやすい環境作りが望まれる。産科や小児科を志す医師をどう育て、支えていくか。課題は多い。(田村良彦、坂上博、中島久美子)
大学産婦人科への入局予定者数 今年1月の日本産科婦人科学会調査で「ゼロ」と回答したのは、旭川医、弘前、東北、東海、富山、金沢、愛知医、京都府立医、島根、山口、産業医、福岡、久留米、琉球の14大学。一方、10人以上だったのは、慶応、昭和(各14人)、東京(12人)の都内3大学だった。