「周産期死亡数」とは、「妊娠満22週以降の死産数と、生後1週間未満の早期新生児死亡数を合計した数」をいいます。「周産期死亡率」とは、「出生1000に対して妊娠満22週以降の死産率と生後1週間未満の早期新生児死亡率を加えたもの」をいいます。
日本における周産期死亡率は年々減少し、過去20年間で約4分の1、過去10年間で約2分の1に減少し、平成16年の周産期死亡率は3.3(妊娠満28週以降の死産率:2.2、早期新生児死亡率:1.1)です。最近の日本の周産期死亡率の少なさは、群を抜いて世界一の水準となっています。それは、日本の周産期医療が世界に誇れる勲章と考えられます。
かつては日常茶飯事だった死産や新生児死亡も、近年では非常にまれなこととなりました。しかし、世界で一番少ない早期新生児死亡率とは言っても、1年間に111万人生まれる中に、1184人の早期新生児死亡があり(平成16年)、それらを分娩に立ち会った産婦人科医の責任として処罰や莫大な賠償金請求の対象にしようとする動きが近年ますます強まってきました。
そのため、現在、日本では、多くの現役の産婦人科医達が産科の現場からどんどん離れています。また、若い新人医師が産婦人科を専門とすることを嫌う傾向が非常に顕著となっています。全国的に、産婦人科医数の減少、高齢化が急激に進行しており、いまや日本では、産婦人科医は絶滅危惧種とまで言われています。
多くの産科施設が分娩取扱いを中止して、都会でも田舎でも産科施設がどんどん減っており、日本全国に産科空白地帯が急速に広がりつつあります。この国で、現在の周産期死亡率の水準を、今後も維持してゆくことは非常に難しいのではないか?と多くの人が考え始めています。