************* 私見
癒着胎盤の術前診断は不可能で、治療難度が最も高い産科疾患であり、対応が極めて困難であることは、多くの産婦人科専門医達が一致して主張しているところである。今回の症例は、たとえ高次医療機関であったとしても救命できたかどうかわからないと考えている。多くの専門医達が口をそろえて同様の主張をしているのに、なんで医学には全くの素人である地検検事が、「大量出血は予見できたはずで、予見する義務があった。判断ミスだった」などと断言できるのだろうか。
現時点では、癒着胎盤の術前診断が不可能である以上、今後、(少なくとも福島県では、)産科業務を継続することはあまりに危険すぎる。不可能なことを要求され、理不尽な逮捕が堂々とまかり通るようなところでは産科は消滅するしかない。
加藤医師不当逮捕・起訴の暴挙に対し厳重に抗議すると共に、微力ながら加藤医師への全面的な支援を表明する。
********** 読売新聞
帝王切開手術中に死亡、福島県の産婦人科医を起訴
福島県大熊町の県立大野病院で2004年12月、帝王切開の手術中に同県内の女性(当時29歳)が出血性ショックで死亡した事故で、福島地検は10日、手術を執刀した産婦人科医師の加藤克彦容疑者(38)を業務上過失致死と医師法(異状死体の届け出義務)違反の罪で福島地裁に起訴した。
起訴状によると、加藤容疑者は、事前の検査で胎盤が子宮に癒着し、大量出血する可能性を認識していたにもかかわらず、本来行うべき子宮摘出などを行わず、胎盤を無理にはがして大量出血を引き起こしたとされる。さらに、医師法で定められた24時間以内の警察への届け出をしなかったとされる。
この事件を巡っては、医師や関係団体が加藤容疑者の逮捕に抗議する動きを見せている。同県内の開業医らで構成する「福島県保険医協会」は3日、「(逃走や証拠隠滅の恐れはなく)逮捕は人権を無視した不当なもの」とする異例の抗議文を県警に送付。日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会なども抗議声明を出している。
一方、同地検の片岡康夫次席検事は10日、「罪証隠滅の恐れがあり逮捕した。血管が密集しているところを無理にはがした。大量出血は予見できたはずで、予見する義務があった。判断ミスだった」と起訴した理由を説明した。医師法違反罪については「通常の法解釈をした。大量出血しており、異状死にあたる」とした。
********** 毎日新聞
福島県立大野病院(同県大熊町)で04年12月、帝王切開手術中の女性(当時29歳)が死亡した医療事故で、福島地検は10日、同院の産婦人科医、加藤克彦容疑者(38)を業務上過失致死と医師法(異状死体の届け出義務)違反の罪で福島地裁に起訴した。
起訴状によると、加藤被告は04年12月17日午後に帝王切開手術中、女性が胎盤をはがせば大量出血の恐れがある「癒着胎盤」と知りながら、子宮摘出手術などに移行せず、手術用はさみで胎盤をはがし、失血死させた。加藤医師は関係者に「こんなに出血があるとは思わなかった。医師として最善の努力をした」などと話しているという。【坂本昌信】◇産科婦人科学会などが声明
起訴を受け、日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会は連名で「本件は癒着胎盤という治療の難度が最も高い事例。全国的な産婦人科医不足という現在の医療体制の問題点に深く根ざしており、医師個人の責任を追及するにはそぐわない」との声明を発表した。
********** 共同通信
帝王切開の執刀医を起訴 福島県立病院医療事故で
福島県大熊町の福島県立大野病院で2004年、帝王切開した女性=当時(29)=が死亡した医療事故で、福島地検は10日、業務上過失致死と医師法違反の罪で、執刀した医師加藤克彦容疑者(38)=同県大熊町=を起訴した。
起訴状などによると、加藤被告は04年12月17日、帝王切開の手術を執刀した際、胎盤の癒着で大量出血する可能性があり、生命の危険を未然に回避する必要があったにもかかわらず、癒着した胎盤を漫然とはがし大量出血で福島県楢葉町の女性を死亡させた。また女性の死体検案を24時間以内に警察署に届けなかった。
日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会は、加藤被告の起訴について「術前診断が難しく、治療の難度が最も高い事例で対応が極めて困難。産婦人科医不足という現在の医療体制の問題点に根差しており、医師個人の責任を追及するにはそぐわない部分がある」との声明を発表。
福島産科医師不当逮捕に対し陳情書を提出するホームページ
http://www006.upp.so-net.ne.jp/drkato/index.htm