ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

町長ら、大野病院に産婦人科医の確保を要望

2006年03月28日 | 報道記事

****** 個人的な感想

地元の人達は、今回の事件のことを一体全体どう考えているのでしょうか?

大学から派遣されて今まで献身的に地域医療に貢献してきた1人の産婦人科医が不当に逮捕されても、それに対してはただ傍観するのみで何の行動も起こさず、代わりの産婦人科医を派遣するように要望するだけとは、一体全体どういうことなんでしょうか?

また、小児科医も麻酔科医もいない病院の1人の産婦人科医を2人に増やしただけで、はたしてまともな集約化と言えるのでしょうか?その程度の消極的な集約化策では、実質的に現状と何ら変わりがないと思われます。新たなる犠牲者を出さないためにも、むしろ、その病院の1人の産婦人科医もいったん大学に引き上げて、小児科医や麻酔科医のいるセンター的な病院に産婦人科医を集約化すべきだと考えます。

******* 毎日新聞、2006年3月28日

大野病院医療ミス:産婦人科休診 医師確保で県に町村会が要望書 /福島

 県立大野病院の産婦人科医が逮捕・起訴され、同病院の産婦人科が今月11日から休診している問題で、周辺町村でつくる双葉地方町村会(会長・横山蔵人浪江町長)の町村長と助役らが27日、県と県立医大に対し、同病院に産婦人科、小児科の常勤医師を確保するよう申し入れた。
 要請書では「医師不足が地域住民に大きな不安と危機感を抱かせている」などとしている。要請に対し、川手晃副知事は「全県内で医師は足りないが、できるだけ対応したい」と述べるにとどまった。
 同病院では、産婦人科医が逮捕された後、県立医大産科婦人科学講座から医師派遣を受けたが、打ち切られた。また、同地方の病院で唯一小児科のあった双葉厚生病院の小児科医が今月末で退職する。【坂本昌信】

******** 朝日新聞

「産婦人科医、確保を」
2006年03月28日

 県立大野病院の産婦人科が休診になっている問題で、大熊町の志賀秀朗町長ら双葉郡の町長・村長など9人が27日、県庁を訪れ、佐藤栄佐久知事に対し、同病院に産婦人科の常勤医を確保するよう要望した。また、同病院に小児科を開設して小児科医を派遣するよう求めた。

 同病院の産婦人科は、唯一人の常勤医が、手術ミスで女性を死亡させたとして逮捕された後、県立医大が産婦人科医の派遣を取りやめたため、休診になっている。双葉地方町村会の渡部宏・常務理事によると、現在、同郡で病院に勤める産婦人科医は、民間の双葉厚生病院の1人のみ。また、双葉厚生病院の小児科医が今月末に退職し、県立大野病院には小児科がないため、同郡内の病院勤務の小児科医はいなくなるという。

 志賀町長らは、県庁の前に県立医大を訪れ、高地英夫・学長あてに、県立大野病院に小児科医と産婦人科医を派遣し、双葉厚生病院に小児科医を派遣するよう、要望を行った。

****** 福島民報(3月28日)

産科医1人、隣町派遣/福医大地元要望受け調整/大野病院医師逮捕

 県立大野病院(大熊町)の産婦人科医師の逮捕、起訴を受け、県立福島医大は大野病院に近い双葉厚生病院(双葉町)に産婦人科医を1人派遣する方向で調整を進めている。27日、双葉地方町村会(会長・横山蔵人浪江町長)の要望を受けた県立福島医大の菊地臣一医学部長が明らかにした。
 双葉厚生病院には現在、産婦人科医1人が勤務している。もう1人派遣して2人体制とすることで、双葉地方の産婦人科医療の水準を維持したい考え。現在、派遣時期を含めて詰めの調整をしている。
 県立大野病院の産婦人科は、医師の逮捕、起訴を受け、今月11日から休診となっている。
 27日は横山浪江町長らが福島市の県立福島医大を訪ね、県立大野病院への産婦人科医と双葉厚生病院への小児科医の常勤医師派遣を求めた。
 菊地学部長は、産婦人科と小児科医療について「医療レベルは高度化し、細分化している。(地域ごとに)集約化が必要だ」との認識を示した。
 横山町長らはまた、県庁で川手晃副知事に要望した。川手副知事は「県全体で医師が不足している。できる限り対応したい」と答えた。


長野県の分娩施設 5年間で20施設減少

2006年03月28日 | 地域周産期医療

3月21日に、全国的な産科医師不足問題を考えるシンポジウム(安心してお産ができる体制作りのために)が長野市内で開かれ、金井誠・信州大学医学部産婦人科講師が、長野県産婦人科医会が行った県内の産婦人科医療供給体制の実態調査の結果を発表した。

** 以下、金井講師の発表内容の要約 **

調査は昨年、産婦人科常勤医がいる長野県内の医療機関119施設を対象に行い、107施設から回答があった。回答施設のうち分娩を取り扱っている施設は、病院35、有床診療所18の計53施設で、全体の半数程度にとどまった。分娩取扱い施設は年々減少し続けており、この1年間で8施設、過去5年間までさかのぼると20施設が中止した。

分娩施設減少の要因である産科医不足について、産科2次施設(小児科医が常勤し、2005年中に転院搬送依頼を受けたことがある)における産婦人科医師動向からみると、04年は「産休や育休」「県内で開業」などによって10人が退職、05年は「他大学の人事で県外へ異動」「結婚などにより県外に流出」などによって12人がそれぞれ退職した。さらに06年春には「他大学の人事で県外へ異動」などにより7人が退職を予定。これを合わせると3年間で29人が2次病院から離任することが見込まれ、「今後も分娩に携わる人材や施設の減少が危惧される」と金井講師は話した。

これに対し、こうした退職分の補充は0203年に信大へ新たに入局した14人と、0305年に県外から流入した4人と信州大の人員削減でカバーした。しかし、今後は2次病院からの離職が続いても「どこにも補充する人員がいない」(金井講師)状況。このため金井講師は、近い将来、県内で産婦人科医療供給が崩壊する地域が広範囲に出現する可能性を示唆した。

今回のアンケート調査でも、「近い将来に分娩を中止する可能性がある」と回答した施設が、分娩取扱い施設の約3割にあたる15施設に上っており、金井講師は、周産期医療に関わる医師だけでなく、助産師や看護師、行政、地域住民などによる地域周産期医療対策会議を立ち上げる必要性を強調した。