ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

福島県産婦人科医会からのメッセージ

2006年03月06日 | 大野病院事件

 福島県産婦人科医会

当医会では、3月1日臨時地区幹事会及び役員会を開催し、「加藤克彦先生を支える会」を立ち上げました。

 募金趣意書

 平成18年2月18日、福島県立大野病院の産婦人科医、加藤克彦先生が逮捕されました。容疑は平成16年に前置胎盤で帝王切開した女性が、術中出血多量で死亡した件に関し、業務上過失致死、並びに検死報告を警察に提出しなかった医師法違反のためとあります。医療に携わる我々として、この医療事故にて死亡された患者様、ならびにご遺族の方々には、大変痛ましく、また残念に思います。今後このような事故が二度と起こらないよう、今後の事故の徹底的究明、さらには地域における医療供給体制のあり方や医療内容の改善点の有無についても検討していきたいと思います。

 本事故に関しては、福島県の事故調査委員会で調査をし、昨年3月に関係者の行政処分は済んでおります。一年後の今回突然の逮捕については、私どもも大変驚いておりますし、地域医療に携わる多くの医師にも動揺が見られます。

 地域住民のため、私生活を犠牲にして連日連夜、身を粉にして働いてきた加藤医師にとって、今回の逮捕という事態は無念この上ないものと思われます。加藤医師のこの無念さを晴らすため現在できうる限りの情報収集や真相の究明がなされているところであります。加藤医師には今後多額の保釈金、公判費用等がかかることが予想されます。

 そこで今回、加藤医師の一刻も早い名誉回復のために、物心両面より加藤医師を支える会を立ち上げることと致しました。先生におかれましては、何卒私どもの意をお汲み取りくださり、募金にご協力頂きますようお願い申し上げます。

 平成18年3月1日

 加藤克彦先生を支える会
 発起人

  永井 宏、斎藤 勝、小林 高 、村田純治、川越慎之介、幡 研一、本田 任、古川宣二、鈴木幸男、大杉和雄、武市和之、野口まゆみ、新妻和雄、武田正吾、山内隆治、山田吉兵意、菅原延夫、高橋秀輔


神奈川県産科婦人科医会の抗議声明

2006年03月06日 | 大野病院事件

 抗議声明

 はじめに、今回亡くなられた患者様とそのご遺族に対し心より哀悼の意を表したいと存じます。

 平成18年2月18日、福島県立大野病院産婦人科医師、加藤克彦先生が業務上過失致死ならびに医師法違反の容疑で逮捕された。神奈川県産科婦人科医会は、この逮捕が不当であると判断し、この暴挙に対して強く抗議すると共に、今後、この様な過ちが二度と起きぬよう、司法当局に強く要望するものである。

 本件の業務上過失致死容疑の理由は、現在の医療水準をもってしても完全には予見できない癒着胎盤を、あたかも超音波断層法やMRIを施行していれば予見できたはずとの誤った前提に基づいている。また当然のことながら、剥離を開始した癒着胎盤の出血量や子宮全摘術中の胎盤剥離部の出血量は、正確に予見できるものではない。神奈川県産科婦人科医会は、このような医学的にも未だ解決されていない医療結果に、刑事介入が起こり、更には医師を不当にも逮捕するという暴挙を断じて許すことはできない。

 「異状死の届け出」については、本件は医学的に合併症として、合理的に説明できる死亡であり、臨床医の立場からは異状死とは認められない。さらに、病院長への報告・相談もしており、病院のマニュアルに従い、医療過誤ではないため届け出の必要がなかったと判断したと聞いている。以上より、加藤医師が医師法違反で逮捕されるようなことでは断じてないと考える。

 このような当局の医療結果に対する誤った介入、医師の不当逮捕により、産婦人科医師は日常の産婦人科医療に対しても常に防御的、消極的となり、産婦人科医療の衰退を招き、結果的に国民から優れた産婦人科医療を受ける機会を奪う結果になることを認識されたい。神奈川県産科婦人科医会は、加藤医師不法逮捕に対し厳重に抗議すると共に、加藤医師への全面的な支援を表明する。

 2006年3月6日
 神奈川県産科婦人科医会


日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会からのお知らせ

2006年03月06日 | 大野病院事件

 お知らせ

過日、福島県の県立病院で平成16年12月に腹式帝王切開術を受けた女性が死亡したことに関し、手術を担当した医師が平成18年2月18日、業務上過失致死および医師法違反の疑いで逮捕されたとの報道がなされました。詳しい事情は不明ですが、報道された内容ならびに関係者の状況説明による限りでは、本件が逮捕拘留の必要があったのか否か理解しがたい部分があります。産婦人科医療体制の整備向上に対し社会的責任を有する両会としては本件の推移を重大な関心をもって見守っていきます。

平成18年2月24日

 社団法人日本産科婦人科学会
  理事長 武谷雄二

  社団法人 日本産婦人科医会
  会長  坂元正一


東京都医師会の声明文

2006年03月06日 | 大野病院事件

 唐澤祥人東京都医師会会長と河北博文東京都病院協会会長は、3月3日、厚生労働省内の厚生労働記者会、厚生日比谷クラブにおいて記者会見を行った。

 この記者会見は、福島県県立大野病院で帝王切開手術を受けた女性が死亡した事例について、異状死を24時間以内に警察に届け出なければならない医師法21条違反等の疑いで担当医師が本年2月逮捕されたことを受け行われた。

 唐澤会長は、早急に関係団体および自民党と協議を行い、二度とこのような事例が起こらないように、医師法の改正を含めた法整備をすすめて行く見解を述べた。

 河北会長は、医師法21条における異状死と届出に関する明確な基準が必要であり早急に結論を出すように当局に要求するとともに、医師の偏在問題も本件根本問題であると見解を述べた。

 この記者会見で下記声明文を発表した。

          声明文 

県立病院医療ミス、医師逮捕のニュースに関して

 福島県立大野病院で平成16年12月に腹式帝王切開手術を受けた女性が死亡したことに関し、手術を担当した医師が平成18年2月18日、業務上過失致死および医師法違反の疑いで逮捕されたとの報道がなされました。

 現在詳しい事情については資料を集め検討中ではありますが、住民の生涯にわたる地域での医療を担当する私どもといたしましても、重大な関心をもっております。

*はじめに、今回亡くなられた患者さんとそのご遺族に対し深い哀悼の意を表したいと存じます。

*今回の場合は、異状死の場合には24時間以内に警察に届け出なければならないという医師法第21条に違反した容疑も逮捕の理由の一つと理解しております。

 医師法21条にある異状死とは警察へ届出なければならない死のことであり、その届出の性質については本来、殺人など犯罪の認知と通報を通じた司法警察への協力であると意識されてきました。しかし昨今、医療事故や医療過誤に対する医療界内外からの批判が高まり、医療に厳しい目が向けられる中で医師本来の業務である医療行為を警察への通報対象とする傾向が現れてきました。

 このような状態での24時間という制限は非常に大きな問題を含んでいます。まず当該医療が過誤や事故であるかどうかは、しばしば判断自体が難しい事柄であり、医療行為の評価が専門的になされてはじめて判明するような難問であることも少なくありません。判断には多大な時間と手間が必要であることがあります。

 胸を刃物で刺された人が病院に運ばれてきて死亡したといった事例と同様に扱おうというのは無茶な話です。しかしこのような事例が今後増加することは容易に考えられます。これらに対応するためには医師法21条の解釈も含めた法律の整備を早急にしなければ、医師の不安は増大し、結果として萎縮診療になり患者さんの不利益にもなります。

 私は関係団体、自民党と精力的に協議をし早急に医師法の改正を含めた法整備を最重要課題として取り組み、さらに産科医師の不足の問題も含めて、医療の安全と国民の安心の環境づくりを目指します。

  平成18年3月3日

  東京都医師会 会長  唐澤祥人
  東京都病院協会 会長  河北博文