あれ以来 少し寝付いてしまった私である
胸にある気持ちは常に誰かが支えてくれているようだし
壊れているところにも 変調はない
けれども どこか気分がすぐれず
書き物もせずに 寝ていることばかりが多くなった
ちち ちち とプロキオンが鳴く
ある一定のリズムを持って
その声はまるで何かの信号のように聞こえる
わたしは プロキオンが誰かを呼ぼうとしていると感じた
それは間違ってはいなかった
しばらくして 大きな星がわたしのところに訪ねてきた
星はレグルスだと名乗った
アルギエバとは同僚であるとも言った
先日は あなたのお体のことも考えず
少し乱暴なことを言ってしまい 申し訳ありませんでした
と これはアルギエバからの伝言です
わたしからも 深く陳謝いたします
レグルスは礼儀正しく言った
だがその声にはアルギエバと同じように
煮えくり返っているものを無理矢理隠しているという感があった
レグルスはみやげだと言って
わたしに獅子のたてがみを編んで作った
小さな香り袋をくれた
中には星の香りを秘めた小さな光が詰めてあり
それをいつも上着の内ポケットに入れておくようにと
レグルスは言った
そうしていると あなたの胸の棘が次第にもろくなってきますから
どうです 治療もすすんで 大分棘はすくなくなりましたか
わたしは少しほほえみ ええ と答えて言った
レグルスも笑った でもすぐに
微笑みの中に悲哀が染み出てきて
彼は目を伏せ かすかに奥歯を噛んだ
わたしには 決して言えないことがあるのだなと
わたしは思った
レグルス
わたしは言った
わたしは あなたがたを苦しめているのでしょうか
するとレグルスは眼光を強め
燃える視線で瞬時にわたしを貫いたかと思うと
獅子のほえるような声をあげた
だが何も言わなかった
言わぬまま 岩戸から静かに出て行った
香り袋のおかげで 少し力がついてきたわたしは
寝床をあげ 小窓に手をついて空を見た
プロキオンが ちるちると鳴く
無性に 子犬の頭をなでたくなった
死んでしまった わたしの犬の頭を
愛していたあの犬の頭を
もう二度とあうことはできないのだな
わたしの犬