5月6日付の記事で、蓮沼執太さんの「シーシーウー」(HEADZ、日本、4枚組)をとりあげました。その前日に渋谷で買ったものです。
今年の1月1日に発表されたばかりですが、新作ではなく、ベスト盤です。しかも、最近ではよくある話で、未発表曲や新曲も入っています。
1枚目の1曲目、および2枚目の22曲目に収録されているEarphone & Headphone in my Headを耳にした瞬間、まず妻が「面白いね」と反応しましたが、私は「どこかで聞いたことのある曲だな」と思っていました。KDDIのCMで使われた曲だそうです。但し、蓮沼さんはライナーノーツで「2009年音楽誌『ヒアホン』創刊の付録CDのために製作した楽曲。2007年に録音し始めて、少しずつアレンジを変えていきました」と書かれています。口笛の節が特徴的で(妻は私の口笛と勘違いしました)、フレーズはシンプルですがなかなか凝った曲です。しかも、1枚目の1曲目と2枚目の22曲目では、アレンジが全く異なります。1枚目のほうがエロクトロニカ色満載で、Aメジャーを基調としたような和音なのに対し、2枚目のほうはフィルハーモニック・ヴァージョンと銘打たれた2011年1月録音のライヴ版で、口笛のフレーズなどに忠実なEメジャーを基調とした和音であり、ヴァイオリンやヴィオラが効果的に使われています。私は、どちらのヴァージョンも好んでおり、1枚目のこの曲から聴き始め、2枚目のこの曲で聴き終わります。
1枚目と2枚目ばかり聴いているのですが、私がとくに気に入っているのは、上記の他、何とサン・ラのカヴァーというDoor of the Cosmos (have a go at flying from music part 1)です。サン・ラ・アーケストラの原曲を聴いたことがないのですが(サン・ラのアルバムは2枚しか持っていません)、どう聴いてもトーシローの集団としか思えないコーラスなのですが(発声や音程などからそうとしか思えないのです。他の曲でもそうです。もっとも、トーシローの延長くらいにしか聞こえないような歌手やその集団ならば、日本にはたくさんいますが)、なかなか興味深い作品に仕上がっています。
4枚組だけあって、曲調もヴァラエティに富んでいます。一瞬、私が中学生時代から高校生時代にかけて聴きまくったウェザー・リポートの、ザヴィヌルが演奏しているのかと思うような音のシンセサイザーが鳴り出す曲もありますし、アコースティック色が強い曲もあります。口笛を効果的に使った曲が多いのも特徴でしょう。
今年発売されたCDとして、これはお勧めです。