2018年12月10日に終了した第197回国会(臨時会)において、参議院議員提出法律案の中に「財政法の一部を改正する法律案」がありました(第44号)。2つを除き、ことごとく審議未了となってしまった参議院議員提出法律案ですが、気になったものをこのブログであげてみようという訳です。
改正法律案は、次のようなものです(衆議院のサイトを参照し、引用させていただきました)。
「財政法(昭和二十二年法律第三十四号)の一部を次のように改正する。
第四条第一項中「以て」を「もつて」に改め、同項ただし書中「但し」を「ただし」に改め、「公共事業費」の下に「、文教・科学振興費」を加え、同条第三項中「公共事業費」の下に「及び文教・科学振興費」を加える。
第二十二条中「外、左の」を「ほか、次に掲げる」に改め、同条第二号中「公共事業費」の下に「及び文教・科学振興費」を加える。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
(文教・科学振興費の財源に充てるために発行した公債等の速やかな償還)
2 政府は、この法律による改正後の財政法第四条第一項ただし書の規定により文教・科学振興費の財源に充てるために発行した公債及びなした借入金については、国家公務員の人件費の削減等の徹底した歳出の削減のための措置等を通じてその償還財源の確保を図り、その速やかな償還に努めるものとする。」
提案理由は、次の通りです。
「文教・科学振興費の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行すること等ができるようにするとともに、政府は、徹底した歳出の削減のための措置等を通じてその公債等の償還財源の確保を図り、その速やかな償還に努めるものとする必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。」
この改正法律案の通りに財政法が改正されたとすると、該当条文は次のように改められていたことになります(赤字が変更されるはずであった部分です)。
第4条第1項:「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入をもつて、その財源としなければならない。ただし、公共事業費、文教・科学振興費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。」
第4条第3項:「第一項に規定する公共事業費及び文教・科学振興費の範囲については、毎会計年度、国会の議決を経なければならない。」
第22条:「予算総則には、歳入歳出予算、継続費、繰越明許費及び国庫債務負担行為に関する総括的規定を設けるほか、次に掲げる事項に関する規定を設けるものとする。
一 第四条第一項但書の規定による公債又は借入金の限度額
二 第四条第三項の規定による公共事業費及び文教・科学振興費の範囲
三 第五条但書の規定による日本銀行の公債の引受及び借入金の借入の限度額
四 第七条第三項の規定による財務省証券の発行及び一時借入金の借入の最高額
五 第十五条第二項の規定による国庫債務負担行為の限度額
六 前各号に掲げるものの外、予算の執行に関し必要な事項
七 その他政令で定める事項」
読んでみて「なるほどね」とは思いましたが、建設公債(財政法第4条第1項但し書きの公債をこう呼びます)の範囲を拡大してよいものなのかという疑問は湧きます。
この条文よりも、財政法第3条および第10条を改正するほうが先でしょう。何せ、第3条は死文化していますし、第10条に至っては未施行なのですから。