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ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

北陸鉄道石川線の命運は その3

2023年08月30日 16時21分40秒 | 社会・経済

 北陸鉄道の石川線が鉄道路線として存続することが決定したようです。今日(2023年8月30日)の12時30分付で、NHKのサイトに「金沢市と白山市を結ぶ北陸鉄道石川線 鉄道として存続決まる」という記事(https://www3.nhk.or.jp/lnews/kanazawa/20230830/3020016313.html)が掲載されています(ニュース動画も視聴できます)。

 やはり、バスの運転士不足のため、バス転換は見送られたとのことです。

 ただ、石川線については、今後も存廃を巡る議論が行われる可能性があります。「その2」において扱った「抜本的な改革案」を検討し、長期的に取り組むべき時点に来ているのではないでしょうか。

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北陸鉄道石川線の命運は その2

2023年08月30日 13時45分00秒 | 社会・経済

 「北陸鉄道石川線の命運は その1」において、石川線のBRT化について記しました。今回は、石川線を鉄道路線として残すというもう一つの選択肢について記しておきます。但し、「その1」において記したように、現在のままでは常に存廃問題が伴い続けることとなります。

 そのことは協議会も認識しており、鉄道路線として残すという選択肢を採るには「抜本的な改革案」を実現し、石川線の姿を変えることが必要であるというのが、石川県や沿線自治体の理想あるいは意識なのでしょう。最大の問題は費用の捻出ですが、国、石川県、沿線自治体、北陸鉄道のそれぞれの立場はいかなるものでしょうか。

 北陸放送のサイトに掲載されている「日常の足はどうなる? 北陸鉄道石川線 存廃のゆくえは…」という記事(https://newsdig.tbs.co.jp/articles/mro/689561?display=1)には「抜本的な改革案」として「北陸本線に直接繋げる」および「野町駅から香林坊へ延伸させる」の二つが紹介されています。記事の表現からすれば、どちらを選んでも「利便性が高まることで利用者は現状の1日およそ3000人からおよそ4000人に増える予測もでています」とのことですが、甘い予測ではないのでしょうか。また、選択肢によって予測の内容も異なるはずですので、少々粗いという印象を受けます。

 まず、「北陸本線に直接繋げる」という案は、西金沢駅(北陸本線)・新西金沢駅(石川線)の接続を行った上で、石川線の車両を北陸本線に乗り入れさせ、金沢駅まで走らせるというものです。金沢駅には北陸新幹線の全列車が停車しますし、北陸鉄道浅野川線との乗り換えも可能となります(北鉄金沢駅という地下駅です)。場合によってはさらに浅野川線にも直通運転を行うことができるかもしれません。いずれにしても、金沢駅まで運転されるのであれば、利便性が高まることは否定できません。

 しかし、この案を実現するには、いくつかの課題を解決しなければなりません。

 第一に、北陸本線と石川線は、軌間(2本のレールの幅)が1067mmで共通しているものの、電圧が異なります。北陸本線は交流20000Vで60Hz、石川線は直流600Vです。北陸鉄道の側で交直流電車を製造するというのは非現実的ですし、JR西日本から譲渡を受けられるかどうかもわかりません。おそらく、JR西日本のほうでは石川線への直通運転を行う意思はないでしょうし、そもそも2024年3月に予定されている北陸新幹線の金沢駅・敦賀駅間の開業によって北陸本線の大聖寺駅から金沢駅までの区間はIRいしかわ鉄道に移管されることとなっており、IRいしかわ鉄道が石川線への直通運転を行う意向があるという話を聞いたことがありません。あるいは、IRいしかわ鉄道と石川線との直通運転についてはこれから検討されるべき事項であるのかもしれません。

 電圧の違いを克服するには、金沢駅から西金沢駅・新西金沢駅まで、北陸本線とは別に単線を敷いて延長させるという手も考えられますが、実際のところは無理でしょう。そうすると、交直流電車か気動車かということになります。IRいしかわ鉄道は、JR西日本から譲渡された521系という交直流電車を保有しており、気動車は保有していません。これに対し、北陸鉄道は交直流電車も気動車も保有していません。つまり、どちらを導入するとしても、北陸鉄道の側に何億円という費用が生じます。石川県や沿線自治体は補助を行うつもりなのでしょうか。

 第二に、直通運転を行うとする場合の車両使用料の負担です。これは上記北陸放送記事に書かれていない問題なのですが、無視はできません。IRいしかわ鉄道と石川線との相互直通運転が行われるならば、相互乗り入れ区間の設定やダイヤ作成によって、車両使用料を相殺することが可能です(首都圏などでよく行われている相互直通運転は車両使用料の相殺が前提となっています)。これに対し、石川線の車両がIRいしかわ鉄道の西金沢駅から金沢駅まで乗り入れるだけである、つまり片乗り入れであるならば、IRいしかわ鉄道の側のみに車両使用料の負担が生じます(例として京都市営地下鉄東西線があります。同線の車両は京阪京津線に乗り入れませんが、京阪京津線の車両は東西線の御陵駅から太秦天神川駅までの区間に乗り入れるので、京都市交通局の側に車両使用料が生じます)。IRいしかわ鉄道が片乗り入れを受け入れるのかどうかが問われることでしょう。なお、IRいしかわ鉄道に北陸鉄道が出資しているかどうかは不明ですが、少なくとも大株主でないことは確かです。

 (ちなみに、片乗り入れの場合、北陸鉄道の運転士がそのまま西金沢駅から金沢駅までの区間にも乗務するというのが最も現実的ではないかと思われます。)

 第三に、上記北陸放送記事において「新幹線橋脚間の線路敷設」があげられています。具体的なことがよくわからないのですが、北陸本線の西金沢駅と石川線の新西金沢駅との間に北陸新幹線の高架橋があり、その橋脚の間に石川線と北陸本線とを結びつける線路を敷設する必要があるということでしょう。おそらく単線でということになりますが、敷設場所、費用負担の問題ということになるはずです。

 第四に、上記北陸放送記事において「JR側のダイヤ受け入れ余地の有無」があげられています。ただ、この問題は、北陸新幹線の延伸開業を考慮すると、JR側ではなく、IRいしかわ鉄道の側と考えるべきです。現在のJR西日本北陸本線には特急「サンダーバード」や「しらさぎ」が走っていますが、これらはIRいしかわ鉄道(およびハピラインふくい)への移管によって運行区間が大阪駅・敦賀駅または名古屋駅・敦賀駅に短縮されるものと考えられます(現に、北陸新幹線の長野駅から金沢駅までの区間が開業したことにより、「サンダーバード」や「しらさぎ」の運行区間が短縮され、富山駅までは走らなくなりました)。そうなれば、IRいしかわ鉄道は普通列車主体のローカル輸送線になり、ダイヤ受入の余地は広がるものと考えられます(あとは貨物輸送との調整でしょう)。金沢駅の時刻表を見ると、平日の朝7時台には普通列車の本数が5本と多くなっていますが、8時台には3本、9時台および10時台には1本、11時台以降は2本か3本(18時台のみ4本)となっています。朝ラッシュ時が最も調整に難航するところでしょうが、それ以外の時間帯であればJR西日本北陸本線時代よりも調整が容易になると考えるのは楽観的に過ぎるでしょうか。

 第五に、これは上記北陸放送記事に書かれていないのですが、北陸本線への乗り入れが実現した場合に、石川線の野町駅から新西金沢駅までの区間をどうするのかという問題があります。この区間を完全に切り捨てるということも考えられますが、野町駅にはバスターミナルも併設されており、香林坊、片町などに向かうには野町駅のほうが近いので(にし茶屋街も野町にあります)、野町駅および西泉駅を存続させるという手もあります。第四の課題との関連もあって、野町駅から新西金沢駅までの区間は存続させることが想定されているのかもしれません。

 ここまで、「北陸本線に直接繋げる」という案について述べてきました。ようやく、もう一つの「野町駅から香林坊へ延伸させる」という案について記していきます。

 何時のことか覚えていませんが、たしか、浅野川線の北鉄金沢駅から石川線の野町駅までの鉄道路線を建設するという構想があったはずです。北鉄金沢駅が地下化された理由も、この構想に関係があったのかもしれません。具体的なルートはわかりませんが、香林坊などに地下駅を設置するというものではなかったでしょうか。実現していれば、石川線の利便性はかなり高くなったはずですが、やはり会社の収益、地方自治体の財政状況などによって構想のままで終わったものであろうと考えられます。

 「野町駅から香林坊へ延伸させる」という案は、北陸新幹線などとの接続がなされないままであるという点において中途半端ではありますが、中心街活性化策との関係があるのかもしれません。金沢駅まで新線を建設するよりも現実的ではあります。ただ、石川県や沿線自治体などで構成する協議会において示された案を見ると、少なくとも野町駅から香林坊駅(勝手に仮称を付けます)まではLRTとすることが前提になっているようです。

 上記北陸放送記事においては「野町〜香林坊間延伸の主な課題」として、「犀川大橋の単線敷設による運行本数制限」、「一般車両への影響」、「低床車両導入に伴うホームの改修など」があげられています。3番目の課題は明らかにLRTを想定したものです。現在の石川線には元東急7000系(東横線、田園都市線などで運用されていた)および元京王3000系(井の頭線で運用されていた)が在籍していますから、将来的にはこれらを全て廃車し、LRTに置き換えることが考えられているのでしょうか。そうなると、福井鉄道福武線、富山ライトレール(JR西日本富山港線をLRT化した)と同様の路線になるということなのかもしれません。ただ、そうなると、野町駅から鶴来駅までの各駅もLRT用としてホームを改修することになるはずですが、これもかなりの費用がかかります。

 LRT化が想定されていると考えられるのは、1番目の課題として「犀川大橋の単線敷設による運行本数制限」があげられているところからもうかがわれます。仮に現在の石川線をそのまま延伸させるのであれば、敢えて「単線敷設」や「運行本数制限」を記す必要がないからです。鉄道車両を道路の上に走らせることも不可能ではないですが、橋梁の耐荷重性を考えるならば道路とは別に鉄道専用の橋梁を作ればよく、運行本数の制限などを設ける必要もないからです。LRT化して犀川大橋の道路の上に単線で線路を敷設することが想定されているのでしょう。ただ、そうなると、犀川大橋を含めて道路の拡幅が必要になるのではないでしょうか。

 2番目の課題としてあげられている「一般車両への影響」の意味はよくわかりません。自動車のことなのか電車のことなのかもわかりませんし、上記北陸放送記事にも何ら説明は書かれていません。

 以上は「抜本的な改革案」でした。これらは長期的な取り組みを必要としますが、今後の地域公共交通の維持などのためには、真剣な検討を行うことが求められるでしょう。

 それでは、さしあたりの改善策は何でしょうか。

 上記北陸記事には「まず利便性を高めることができることは増便や石川線とバスの乗継割引を行うことです」と書かれていますが、増便したところで利用客が増えるとは限りませんから、鉄道とバスの乗り継ぎ割引のほうが現実的です。乗り継ぎ割引にも様々な方法がありますが、容易であるのは定期券およびICカード(Suica、PASMOなど)の利用です。

 北陸鉄道はICaというICカードを発行しており、少なくとも金沢市内で運行されている路線バスで使用することができます。一方、北陸鉄道のサイトによると「鉄道は、鶴来駅・野町駅(以上、石川線) 内灘駅・北鉄金沢駅(以上、浅野川線)においてICa定期のみご利用可能です。鶴来駅・野町駅、内灘駅・北鉄金沢駅以外で降車する場合は、係員に提示ください」とのことです。定期券でなければ、鉄道でICカードは使えない訳です。無人駅に簡易改札機を設けるための費用の問題などがあると思われるのですが、乗り継ぎ割引を定期券利用以外で適用したりするには、ICカードの利用を可能にする必要があるでしょう。ICaで北陸鉄道のバスを利用するとエコポイントが貯まる、複数回乗車割引が適用される、などのサービスを受けられるようです。こうしたサービスを石川線および浅野川線でも受けられるようにすることが、改善の一つではないでしょうか。

 ここまであれこれと書いて参りましたが、石川線がどのようになるのか、注目していこうと考えています。

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北陸鉄道石川線の命運は その1

2023年08月30日 01時35分40秒 | 社会・経済

 北陸鉄道の鉄道路線については、2023年3月9日12時20分00秒付の「北陸鉄道の石川線と浅野川線 上限分離方式に移行するか」において取り上げておきました。特に石川線については、鉄道路線として存続するのか、それともバス路線に転換するのかが問題となっています。どうなるのかと経緯を見ていたところ、北陸放送のサイトに「日常の足はどうなる? 北陸鉄道石川線 存廃のゆくえは…」という記事(https://newsdig.tbs.co.jp/articles/mro/689561?display=1)が、昨日(2023年8月29日)の20時39分付で掲載されているのを見つけました。

 正直なところ、YouTubeでは有名な鐵坊主さんの暇坊主チャンネルにアップされている動画「【暇坊主の動画です】北陸鉄道石川線はBRTではなく鉄道維持が濃厚。ただ、その先にあるLRT化、北陸本線乗り入れはどうなるのか?」(https://www.youtube.com/watch?v=BOgfUfYukDI)のほうが詳しく解説されている部分が多く、そちらのほうを参考にされたほうがよいのですが、とりあえず、北陸放送の記事を基にすることとします。

 石川線については、今日、つまり2023年8月30日に、沿線自治体(金沢市など)の首長と知事が話し合うこととしているようです。北陸放送の記事によれば「年間の利用者数はおよそ89万人で、そのうち49万人が通勤、通学で利用しています。実に半数以上の人が日常的に利用しているのです」とのことですが、ここで年間というのが具体的に何時のことかが書かれていません。2022年度ということなのでしょうか。また、一日平均の輸送人員がどの程度であるのか、ということも書かれていなければならないでしょう。

 北陸鉄道の鉄道事業は20年度連続で赤字が続いているとのことで、2022年度には1億8000万円ほどでした。2014年度から2017年度までは1億円未満でしたが、2018年度に1億円を超え、2020年度には2億円を超えました。2021年度も2億円程度であったようです。この2箇年度はCOVID-19の影響によるものであろうと考えられますが、2022年度も1億8000万円ほどですから、回復は遅いとも思われますが、その辺りについては詳しい検討が必要でしょう。

 多くの地方私鉄に見られる傾向として、鉄道事業の赤字をバス事業、とくに高速バスの黒字で補塡する、いわゆる内部補助によって維持することがあげられます。北陸鉄道もその一つです。内部補助がCOVID-19によって崩壊したことは多くの鉄道会社に見られる現象で、御存知の方も多いでしょう。また、バス事業の場合は燃料費に左右されるところがあり、このところのガソリンや軽油の価格の上昇(私も近所のガソリンスタンドを見て驚いています)によって収益が減少していることから、内部補助はますます機能しなくなっている訳です。もっとも、内部補助が機能しないのは昨今に限られた話でもない点には注意を要します。

 ただ、単純に石川線を廃止すればよいという話にもならないようです。私が一度だけ、起点の野町駅から終点の鶴来駅まで利用した(実際には往復しました)時は真夏の土曜日であったのでよくわからなかったのですが、この辺りは降雪地帯であり、バスよりも鉄道のほうが安定的に運行できるのです。いや、一般的に、バスより鉄道のほうが時間に正確ですから、通学客にとっては鉄道路線が残ったほうがありがたい訳です。石川県や沿線自治体による議論でも「石川線を廃止して路線バスに転換した場合、所要時間はおよそ2倍、利用者数も鉄道の半分に落ち込み、社会が被る不利益は年間6億円にもなると推計されたことなどから『石川線の廃止は好ましくない』、すなわち大量輸送手段は残すと結論付けました」とのことです。

 もっとも、「石川線の廃止は好ましくない」ということから、直ちに鉄道路線が残るということにはなりません。昨日(2023年8月28日)に開業した「ひこぼしライン」のようにBRT化するという選択肢もあるのです。「ひこぼしライン」は日田彦山線の添田駅から夜明駅までの区間を鉄道からBRTに転換した路線で、JR九州のサイトにも時刻表が掲載されています。

 赤字鉄道ローカル線の対応策としてBRTは有望な選択肢の一つと考えられることが多く、実際に「ひこぼしライン」の他にJR東日本の気仙沼線BRT・大船渡線BRTの例もあるのですが、道路交通法による規制を緩和して最高速度を上げる、バス専用道路の割合を増やす、などの方策を採らなければ、あまり意味はないものと思われます。バスが道路渋滞に巻き込まれて何十分も遅延するというのではBRTの意味がないからです。

 そればかりでなく、昨今ではバス運転手の不足がよく言われるようになりました。新潟交通が2023年4月に行ったダイヤ改正では、運転士の不足による減便が行われています。今月には、函館市と札幌市を結ぶ高速バスの減便が発表されていますし、十勝バスも運転士の不足が理由となる減便、さらには路線の廃止を実施しています。北陸鉄道のバス部門も運転士の不足状態にあり、新潟交通と同様に2023年4月に行われた「ダイヤ改正では、平日でおよそ160便、土日でおよそ200便の大幅な減便が行われて」います。本来であれば346人の運転士が必要ですが、30人が不足しているというのです。そのような状況にあるのに石川線をBRT化するならば、一層の運転士不足になり、BRTのために多くのバス路線の減便、それどころか廃止も行われなければなりません。そうなると、金沢市内も含めて大幅な路線の統廃合が行われ、公共交通機関空白地帯が多くなる可能性が高くなります。

 ここで石川線に話を戻しますと、鉄道路線を維持するならば2両編成を1人で運転することとなりますが、バスに置き換えると5台、つまり5人の運転士が必要になります。どういうことかと言えば、電車の場合は1両あたりの定員が140人から150人ほどであり(石川線を走る元東急7000系の定員がその程度であるはずです)、2両であれば300人を乗せることができます。実際には250人くらいが利用するそうですが、バス1台では50人くらいが定員であるため、5台が必要になるという訳です。勿論、ギュウギュウ詰めにすればもっとお客を乗せることはできますが、それではかなり危険なことになります。2011年3月11日に私が国際興業バスで西台中学校バス停から池袋駅まで乗った時には途中での乗り降りができないほどの超満員状態で、バス停によっては運転士が乗車拒否をせざるをえないほどでしたが、これは緊急事態であったから許されたのでしょう。いずれにしても、バスでは大量輸送ができないということです。

 それでは、運転士の不足の問題があるから鉄道路線を維持すればよいかというと、そう簡単にはいきません。

 何しろ、石川線には縮小を重ねてきた歴史があります。石川線の鶴来駅から加賀一の宮駅までの区間が廃止されたのが2009年11月1日であり、その加賀一の宮駅から白山下駅までの路線であった金名線が廃止されたのは1987年4月29日(但し、1984年12月中旬から営業休止)、鶴来駅から新寺井駅までの路線であった能美線が廃止されたのは1980年9月14日です。それぞれの路線・区間で廃止(休止)の理由は異なるのですが、やはり乗客の減少が根本にあります。さらにたどれば沿線の人口の減少とモータリゼイションの進行という、多くの地方に共通する問題があります。鉄道を利用するのは主に通学客ということになり、学校(主に高等学校)を卒業したら鉄道を利用しなくなるという人が少なくありません。これでは、石川線が鉄道として存続する限り、常に存廃問題も残ることとなってしまいます。

 また、上記北陸放送記事には書かれていませんが、実は鉄道についても運転士の不足という問題があります。たとえば、2023年5月に長崎電気軌道が減便ダイヤ改正を行っていますし、10月には福井鉄道が減便ダイヤ改正を行います。いずれも運転士の不足が理由(少なくとも一つの)となっています。また、とさでん交通の軌道路線でも、8月中旬から平日でも土休日ダイヤで運行されています。これも運転士の不足が理由です。北陸鉄道の石川線および浅野川線がどうであるのかわかりませんが、運転士の養成、運転士に必要な免許の取得のことなどを考えると、運転士不足はむしろ鉄道のほうが深刻になるとも予想されます。

 以上とは別に、石川線に特有の事情としてあげられるのが起点の野町駅です。鐵坊主さんによる上記動画においても言及されていますが、私もこのブログの「北陸鉄道石川線野町駅」で記したように、野町駅は鉄道路線の起点としては不便な場所にあります。歴史的な背景もあるので簡単には片付けられませんが、1967年2月に北陸鉄道金沢市内線という軌道線、言い換えれば路面電車が廃止されてから、他の鉄道とは接続しない駅となったのです。同様の例として、熊本電気鉄道藤崎線の藤崎宮前駅(本来は藤崎線の終点ですが、実際には藤崎宮前駅から御代志駅までの運行系統において起点駅となります)、名古屋市営地下鉄上飯田線開業前の名鉄小牧線の上飯田駅があります。

 野町駅から電車に乗り、二つ目の駅が新西金沢駅です。ここが北陸本線との乗換駅であり(北陸本線は西金沢駅)、現在の石川線では他の鉄道路線との接続がある唯一の駅です。ただ、北陸本線の西金沢駅には普通電車しか止まりませんので、利便性の点では疑問も残るところでしょう。

 ここから、鉄道路線として残す場合の選択肢が二つ登場します。一つが西金沢駅・新西金沢駅から北陸本線の金沢駅に乗り入れるというものであり、もう一つが、野町駅から香林坊へ路線を延伸するというものです。長くなってしまいましたので、これらについては機会を改めることとします。

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