10日、渋谷の東急百貨店本店にあるジュンク堂に行く用があったので、文化村の地下1階にあるナディッフ・モダンにも寄りました。そこで4枚のCDを買ったのですが、とくにオランダのレコード会社から発売されている(日本では東京エムプラスが輸入している)CDを気に入ったので、紹介しておきます。
InnerAct, Canto Ostinato Audio Visual Canto Ostinato, a composition by Simeon ten Holt (EtcetraNow, KTD 6007)
税込みで2700円でした。
オランダ人の作曲家、シメオン・テン・ホルト(1923~2012)が1976年から1979年までの間に作曲した「カント・オスティナート」という曲を、ハープとエレクトロニクスとヴィジュアルで演奏したものが収録されています。もっとも、ヴィジュアルはCDで楽しめませんので(英語の解説が書かれている紙に掲載されている写真がヴィジュアルによる「演奏」の一部かもしれません)、ハープとエレクトロニクスの音響に包まれて体験をすることとなります。CDに付くタスキには、同曲のハープ独奏、2台のピアノによる演奏、このそれぞれのCDも発売されていると書かれていました。
この「カント・オスティナート」という曲は、106のループ(何小節かを組み合わせた一節というべきでしょうか。英語では細胞や小区画を意味するcellという言葉も使用されています)から構成されています。それぞれのループは、演奏者の解釈により、何回でも繰り返されるようになっています。また、繰り返すとともに、演奏者がアーティキュレーション(articulation.音のつなげ方や切り方などを意味する)、フレージング(phrasing)、強弱法(dynamics)を決めていきます。また、どのループを演奏するかも演奏者の自由に委ねられているようで、このCDでは1から84までと106が演奏されています(一応は5トラックに分けられていますが、休止は一切ありません)。
どのループも4分の5拍子か8分の10拍子か、いずれにしても5拍子系です。変拍子(複合拍子とも言われる)の一つで、ロックやポップスでは極端に少ない上に不自然に聞こえるものばかりですが、クラシックや一部のジャズではそう聞こえないのです(ジャズではTake Fiveが有名ですね。クラシックならチャイコフスキーの交響曲第6番第2楽章を代表例としてあげられるでしょう。余談ですが、チャイコフスキーの弦楽四重奏曲第1番第1楽章、バッハの無伴奏ヴァイオリンソナタ第1番第4楽章は8分の9拍子で、これも見事なものです)。「カント・オスティナート」の5拍子はストレートな5拍子で2+3とか3+2となっていないのですが、ハープとエレクトロニクスが醸し出すハーモニーのために、美術館などでBGMとしてかかっていても何の違和感もない仕上がりとなっています。書店などでかかっていてもよいでしょう(但し、なるべく小さい音量とすることが条件です)。ナディッフ・モダンで売られていたことも納得できます。
勿論、部屋でのBGMとするにも絶好の曲です。
このCDでの演奏者を記しておきしょう。
グウィネス・ウェンティンク(Gwyneth Wentink):ハープ
ウーター・スノイ(Wouter Snoei):エレクトロニクス
アーノート・ハルスカンプ(Arnout Hulskamp):ヴィジュアル
(今回、音楽用語については、湘南弦楽合奏団のサイトにある「音楽用語英和辞典~音楽の英語表現~」を参考にさせていただきました。〕
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