ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

東急9020系9022Fと2020系2134F

2024年09月18日 21時30分00秒 | 写真

朝の高津駅(DT09)で撮影しました。

 まずは大井町線G各停溝の口行きとして運行される9020系の9022Fです。現在は主に、ホームのない高津駅の2番線および3番線を走りますが、かつては外側の1番線および4番線を通っていました。というのも、元は1992年に登場した2000系の2002Fであり、田園都市線、新玉川線(現在の田園都市線の渋谷駅から二子玉川駅までの区間)および帝都高速度交通営団(現在の東京地下鉄株式会社)半蔵門線で活躍していましたからです。ただ、2000系は東武伊勢崎線および日光線に乗り入れることができず、活躍の幅は狭まっていました。そして、5両編成化されて大井町線に移り、9020系に名を改めました。

 なお、東急電鉄の路線図では大井町線の営業区間が大井町駅から溝の口駅までと案内されており、駅番号もそれに準じて付されています(そのため、二子新地駅および高津駅には田園都市線の駅番号のみが付されています)が、正式な区間は大井町駅から二子玉川駅までであり、二子玉川駅から溝の口駅までは田園都市線の複々線区間に乗り入れる形となっています。

 次に、田園都市線急行中央林間行きとして運用される2020系2134Fです。2017年に製造が開始され、2018年春より営業運転が始められてから増備が進み、現在は10両編成30本が長津田検車区に在籍しています。また、この2020系と同じシリーズとして、大井町線急行用の6020系、目黒線用の3020系があります。

 田園都市線の平日朝ラッシュ時には、上り、下りのいずれについても、急行ではなく準急が運行されます。ただ、これを撮影したのは祭日でしたので、朝7時台および8時台には準急が運行されません。

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東京メトロ10000系10102F

2024年09月16日 00時00分00秒 | 写真

今回は、東京メトロ10000系10102Fです。有楽町線で各駅停車新木場行きとして運用されていたところを撮影しました。

 麴町駅は、かつて日本テレビの最寄り駅であり、同社の建物と直結していたことで知られた駅ですが、現在は同社の番町スタジオがあるものの、駅に直結していません。ただ、市ヶ谷駅から麴町駅までの通称「日本テレビ通り」については「日本テレビ通り沿道まちづくり協議会」による「日本テレビ通り沿道まちづくり基本構想」(2018年5月)が存在しており、おそらくはこの基本構想と関係のある「二番町再開発計画」が日本テレビから発表されています。

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東京メトロ10000系10128F

2024年09月15日 11時30分00秒 | 写真

今回は、東京メトロ10000系10128Fです。有楽町線で各駅停車和光市行きとして運用されていたところを撮影しました。

 有楽町線および副都心線のための車両として、東京地下鉄株式会社が発足してから初の新車として製造されたのが10000系です。東京メトロのサイトによると、10000系は「2004年度に搬入した東西線05系13次車をベースとしており、05系で採用した内容も含めて、快適性や使い易さの向上、リサイクル性の向上、火災対策の強化、車体強度の向上、コストダウン・省メンテナンスをコンセプトに東京メトロの標準車両として開発したものです」、「有楽町線では、1992年に投入した07系車両以来、14年ぶりの新型車両となります」とのことです(このサイトのページに書かれている内容が少し古いので、東武東上線、西武有楽町線・西武池袋線・西武狭山線、東急東横線、横浜高速鉄道みなとみらい線に乗り入れることが記されていません)。

 なお、有楽町線および副都心線ではワンマン運転となっています。また、07系は、ホームドアとの関係で有楽町線から外れ、現在は東西線で運用されています。

 東京メトロの駅では最も難しく、書きづらい漢字を使っている麴町駅の2番線から発車し、隣の市ヶ谷駅に向かうところです。仕事の関係で六番町に行くため、私は何ヶ月に一回かは利用しています。駅の真上は通称「日本テレビ通り」で、都営バス橋63系統も走行する道路であるものの、道幅が狭いこともあって、地下1階に改札口、地下2階に1番線ホーム(新木場駅方面)、地下3階に2番線ホーム(和光市駅方面)があるという構造になっています。改札口を抜ける際にホームを確認しておかないと、ホームを誤って乗り間違えを起こすこととなります。というのも、1番線ホームと2番線ホームとを直接行き来することができないためです。

 麴町駅は千代田区麴町3丁目にある駅です。麴町1丁目には半蔵門線の半蔵門駅がありますが、少々離れており、乗り換え駅にはなっていません。有楽町線と半蔵門線との乗り換え駅は永田町駅となっています。なお、有楽町線で千代田区にある駅は、麴町駅、永田町駅、桜田門駅および有楽町駅です(東京メトロの市ヶ谷駅および飯田橋駅は新宿区にあります)。

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言わずと知れた東京駅

2024年09月12日 22時45分00秒 | まち歩き

やはり、東海道本線の起点駅、東北本線の起点駅です。風格があります。

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東京駅丸の内南口で東急バスを

2024年09月11日 13時00分00秒 | 写真

 東京23区の山手線の内側は、基本的に都営バスのエリアとなっています。

 しかし、大抵のものに例外は付き物でして、東急バスの東98系統のうち、東京駅丸の内南口から目黒駅前までの区間は山手線の内側です。東急バスで千代田区を通るのは目黒営業所の所管に属する東98系統のみであり、港区を通るのは東98系統の他、高輪ゲートウェイ駅に発着する渋43系統および井50系統(いずれも目黒営業所の所管)、品川駅に発着する品94系統(池上営業所の所管)があります。

 目黒営業所のバス(M1650)が出発時刻を待っています。行先表示でおわかりと思いますが、東京タワー、目黒駅前を通って等々力操車所まで走ります。国道1号線や目黒通りを経由するので、おおよそのルートはわかるのですが、流石に全線を乗り通したことはありません。

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気にはなりますが

2024年09月10日 19時00分30秒 | デジタル・インターネット

 アップル社からiPhone16(およびPro)、Apple Watch Series 10などが発表されました。

 気にはなりますが、今のところ、iPhone15 Proで満足していますし、Apple Watch Series 7も使い続けています。

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京浜東北線のE233系1000番台

2024年09月09日 15時30分00秒 | 写真

今回は、京浜東北線および根岸線で運用されるE233系の1000番台です。快速大宮行きとして運行されているところを撮影しました。

 首都圏の人間にとって、京浜東北線および根岸線と言えばスカイブルー(または水色)です。国鉄時代の103系、101系以来、この色が定着しています。

 京浜東北線と記しましたが、実は、正確にはこのような路線はありません。京浜東北線とされる大宮駅から横浜駅までの区間のうち、大宮駅から東京駅までは東北本線、東京駅から横浜駅までは東海道本線というのが正式です。これに対し、横浜駅から桜木町駅および磯子駅を経由して大船駅までの根岸線は正式な路線名となっています。

 それにしても、この京浜東北線・根岸線の快速は、一体どれほどの存在意義があるのであろうか、と思います。このように記すのは、大宮駅から大船駅までの間で通過駅が少なすぎるからです。休日は西日暮里、日暮里、鶯谷、有楽町および新橋の5つしかありませんし、平日は御徒町を追加して6つしかないからです。快速運転が始められた1988年3月には、御徒町、神田、浜松町も通過していましたが、2002年に浜松町が、2015年に神田が停車駅に追加されるとともに、休日には御徒町に停車するようになったのでした。田端駅から品川駅まで山手線と併走するからという理由が一応はあるのですが……。

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溝の口駅(DT10、OM16)および青葉台駅(DT20)にて東急6000系6103Fを

2024年09月08日 00時00分00秒 | 写真

 今やすっかりおなじみになった、大井町線・田園都市線直通急行です。もっとも、よくよく考えると、現在の大井町線も1963年11月10日から1979年8月11日までは田園都市線でしたし、1968年8月から1979年8月11日までは、上りのみであるとはいえ大井町行きの快速が走っていました(但し、現在の二子玉川駅から大井町駅までは通過駅がなかったのでした)。現在の大井町線の急行は2008年3月28日のダイヤ改正によって運行されるようになったもので、当初は大井町駅から二子玉川駅までの間でしたが、翌年7月に溝の口駅まで延伸され、さらに田園都市線の長津田駅、さらに中央林間駅まで運転されるようになりました。現在、基本的には日中に大井町線・田園都市線直通急行が走ります(平日の夕方にはQ-Seatの大井町駅発長津田行きの急行も走ります)。

 溝の口駅1番線に急行中央林間行きの東急6000系6103Fが到着するところです。この編成にはQシート車が連結されていませんが、6000系の6101Fおよび6102Fの3号車、6020系の6121Fおよび6122Fの3号車はQシート車となっています。

 青葉台駅1番線から発車するところです。

 6000系は2008年に6両編成6本が一気に登場しました。2017年から2018年にかけて7両編成化されています。大井町線と言えば九品仏駅名物のドアカットがありますが(かつては戸越公園駅でも行われていました)、6000系および6020系は急行専用であって九品仏駅には停まらないため(戸越公園駅にも停まりません)、ドアカット機能は付けられていません。

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交通空白地の解消に向けた新たな取り組みが設けられるか

2024年09月07日 00時00分00秒 | 社会・経済

 朝日新聞2024年9月5日付朝刊9面13版Sに「『交通空白地』解消へ 官民マッチング 国交省が枠組み新設 配車効率化」という記事が掲載されていました。興味深い内容なので、取り上げておきます。

 このブログでも「2024年問題」を取り上げてきました。実際には2023年から、運転士あるいは乗務員の不足などのために、多くのバスや鉄道で減便が行われています(その最も極端な形が金剛バスの全廃でした)。さらに記すならば、公共交通機関の衰退はこの数年に限られた話でもなければCOVID-19によって引き起こされた事柄でもなく、長期的に続く現象なのです。

 そうなれば「交通空白地」が増えてくるのも当然のことです。「交通空白地」をどのように解消するのかが問題となりうる訳ですが、国土交通省が本格的に取り組もうとしているのです。

 上記朝日新聞社記事には書かれていないのですが、実は2024年7月16日に国土交通省が「『交通空白』解消本部」を設置しています(同日付の「国土交通省『交通空白』解消本部の設置に関する訓令」(国土交通省訓令第72号)を参照してください)。第1回の会合が7月17日に開かれており、第2回の会合が9月4日に開かれました。議事録がまだ公開されていませんので詳しいことはわかりませんが、資料などは国土交通省のサイトに掲載されていますので、御覧いただきたいと存じます。

 ここで「交通空白地」は、国土交通省によると「国交省は半径1キロ以内にバス停や駅がなく、タクシーを呼んでも配車に30分以上かかるような地域」です。この地域に「タクシーやライドシェアが不足する自治体と配車の効率化に取り組む企業をマッチングさせるなどして、地域交通の拡充を図る」ために「交通空白解消・官民連携プラットフォーム」(仮称)という枠組みを作り、2024年内に立ち上げることにしているようです。この枠組みには、国、地方公共団体、交通事業者、さらに配車アプリ事業者などの参加が見込まれているようです。そして、2025年度予算の概算要求にはおよそ331億円が盛り込まれています(関連費用も含まれています)。

 「『交通空白』解消本部」の第2回会合における資料「『地域の足』『観光の足』対策の取組状況等」(公共交通政策部門、物流・自動車局、観光庁)によると、現在、324の自治体においてライドシェアなどの普及が進んでいないとのことです。そこで、今後、タクシー会社管理型の「日本版ライドシェア」が全都道府県で運行されるようにすることなどが目指されており、国土交通大臣が同趣旨を指示しています(既に22都道府県で導入されているとのことです)。

 ただ、ライドシェアがどこまで普及するのかは、正直なところよくわかりません。また、最近の傾向なのか何なのか「日本版」という冠がついていますが、タクシー会社管理型では需要を満たせない地域が多くなるのではないかという懸念があると考えられます。

※※※※※※※※※※

〔東急5000系5105F。田園都市線青葉台駅(DT20)にて撮影。〕

〔同じく東急5000系5105F。田園都市線(大井町線)溝の口駅(DT10、OM16)にて撮影。〕

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鎌倉市役所の移転問題で同市監査委員が意見を出したが

2024年09月06日 04時30分00秒 | 国際・政治

 正直なところ、「これはどうなのだ?」と首を傾げたくなる話が、神奈川新聞社のサイトにありました。2024年9月5日の20時37分付で同社のサイトに掲載された「鎌倉の市役所移転、市監査委員が『政治介入』 松尾市長も困惑、波紋広がる」(https://www.kanaloco.jp/news/government/article-1107959.html)という記事です。これは有料記事であり、私は登録していないので全文を読める訳ではないのですが、この記事を基にしつつ、鎌倉市のサイトに掲載されている監査結果も参照してみました。

 鎌倉市役所の移転に向けた動きは、同市のサイトによると2015年度から進められてきたようで、現在の所在地である御成町18-10(鎌倉駅の西側と記しておけばよいでしょう)から深沢地区への移転を目指すというものです。2022年9月にまとめられた「鎌倉市新庁舎等整備基本計画」には、湘南モノレールの湘南深沢駅から西側の約31.1ヘクタールの土地を深沢地域整備事業用地として次のような方針が示されています。

 「深沢地域では、東海道本線大船・藤沢駅間新駅設置を伴う、藤沢市村岡地区との両市一体のまちづくりを目指しています。『第3次鎌倉市総合計画第4期基本計画』では、土地利用の基本方針として、鎌倉地域のほか、大船、深沢地域などの都市機能を強化し、3つの拠点がそれぞれの特性を生かした役割分担をこなし、互いに影響し合うことで、 本市全体で活力や鎌倉の魅力の向上につながる土地利用を図ることとしています。さらに「鎌倉市都市マスタープラン」では、深沢地域整備事業用地の土地利用の方針に、新都市機能導入地を位置付けています。」

 しかし、この動きは鎌倉市議会によってストップをかけられました。すなわち、2022年12月の鎌倉市議会定例会に「鎌倉市役所の位置を定める条例の一部を改正する条例」の案が提案されたのですが、同年12月26日の本会議において否決されました(賛成16、反対10。地方自治法第4条第3項により、出席議員の3分の2以上の「同意」が必要となるためです)。

 一方、2023年2月6日付で、鎌倉市監査委員に対して「市役所位置条例の改正案否決に伴う支出済額について」住民監査請求がなされました。監査委員(2名)は同年3月29日付の「鎌倉市監査委員公表第6号」において請求を棄却しています。

 そして、2024年9月2日、鎌倉市監査委員(2名。但し、1名が2023年3月と異なります)が2件の監査結果を公表しました。今回、神奈川新聞社が取り上げたのは、この2件の監査結果のどちらにも付されている付帯意見です。どういうものかを御覧いただきたいところですが、すぐに付帯意見を示すのもどうかと思われますので、まずは監査結果を概観しておきましょう。

 「鎌倉市監査委員公表第1号」は、2024年7月3日付でなされた「新庁舎等基本設計等予算執行差止」を求める住民監査請求に対するものであり、監査結果は住民の請求を棄却するものとなっています。

 住民監査請求の内容が「鎌倉市監査委員公表第1号」においてまとめられているので参照すると、次の通りです。

 ・鎌倉市長は「令和6年度一般会計予算案に、市役所移転に関わる新庁舎等基本設計者等選定審査会委員報酬及び同委員費用弁償並びに令和6年度から令和7年度までの債務負担行為である新庁舎等基本設計等の事業費(以下これらを「本件基本設計等予算」という。)を計上し、令和6年(2024年)市議会2月定例会に提案し、市議会の議決を得た」。

 ・しかし、上述のように2022年12月26日の鎌倉市議会本会議において、「鎌倉市役所の位置を定める条例の一部を改正する条例」の案は否決された。

 ・「全国の地方公共団体の例を見ると、位置条例の改正案を議会に提案しないまま新庁舎の工事に着手した事例はあるが、議会が位置条例の改正案を否決した中で、新築の庁舎の基本設計予算を執行した例は聞いたことがない。請求人が総務省行政課に照会したところ、『位置条例が否決された状態で基本設計の予算案を上程することは可能。ただし、予算を執行することに関しては司法の判断となる』との回答を得た。」

 ・鎌倉市長は「位置条例改正案が否決された直後の市議会定例会に提案する令和5年度予算案には、新庁舎の基本設計予算を計上することを見送った。これは『議会の合意が得られない以上、事業を進めるのは相当ではない』との判断であったと考えられる」が、鎌倉市長は「『市民や議会の新庁舎建設に対する理解を深める ためには具体的な形を示すことの方が効果がある』として、上記判断を変更してまで、令和6年度一般会計予算案に本件基本設計等予算を計上し、提案した」。

 ・2024年4月8日に「新庁舎等基本設計等委託事業者の公募型プロポーザル方式による応募の受付が始まり、同年7月9日の締切後、同月30日には一次審査が実施される予定である」。この「プロポーザル方式による応募の受付段階での参加資格審査は鎌倉市の職員が 行うため、今のところ予算の支出はない。しかし、今後新庁舎等基本設計者等選定審査会が開催され、基本設計者等が選出されると、本件基本設計等予算が支出されることとなる」。完全に鎌倉市議会による条例改正案の否決を無視した形になっているとしか思えませんが、既成事実を作るということなのでしょうか(かつての大分県のようです。今はどうかわかりませんが)。

 ・「鎌倉市民としては、市議会が位置条例の改正案を否決している状態で、基本設計の事業に着手した事実は看過することができない。建設関係の事業者に聞くと、設計業務は本体工事と一体のものであり、設計を実施して本体工事を実施しないことはあり得ず、後戻りできない予算との解釈であった」が、これは地方財政法第4条第1項に違反するものである。

 ・「本件基本設計等予算は、市議会の議決を経ているが、市議会が位置条例改正案を否決しているにもかかわらず、本件基本設計等予算を議決したものであり、 この議決自体が違法というべきであるから、議決があることによって、本件基本設計等予算の執行が適法となると解すべきではない」。

 これに対して、監査委員は次のように述べています。

 「地方公共団体の長は当該地方公共団体の事務を管理し及び執行するうえで広範な裁量権を有しているが、地方公共団体の事務所の位置を定めるに当たってもそれは例外ではないと考える。名古屋高等裁判所平成16年3月26日判決(平成 15 年(行コ)第14号)において、『地方自治法4条1項は、「地方公共団体は、その事務所の位置を定め又はこれを変更しようとするときは、条例でこれを定めなければならない。」と規定しているものの、条例を定める時期について何ら定めていないから、建設着工後において条例を定めても、同法違反とはならず、庁舎位置指定条例案の上程の時期は市町村長の裁量に委ねられているものと解される。』と判示されていることがその裏付けである。なお、請求人は、この裁判例は町村合併という事情のもとに判断されたもので鎌倉市には当てはまらない旨主張しているが、少なくとも地方自治法第4条第1項の規定に関係する判断の中に町村合併という事情が考慮された形跡は見当たらない。」

 「令和4年(2022年)市議会12月定例会において位置条例改正案を否決した市議会の判断は重いものであるが、他の会期に位置条例改正案を再び提案することを妨げる規定はない以上、将来にわたって可決される可能性がないと断定することはできず、上記判決引用箇所は現在の鎌倉市の状況にも当てはまるものと考える。」

 (少し脇道に逸れます。いつも思うのですが「判決を示すのであれば、掲載判例集の巻号頁くらい示せ!」と言いたくなります。ここに引用されている判決は判例タイムズ1159号176頁に掲載されています。書店で購入することが可能ですし、法学部が置かれている大学の図書館などに行けば所蔵されている雑誌です。真面目に勉強している法学部の学生には御馴染みのLEX/DBで検索するという手もあります。)

 この名古屋高裁判決の論理はおかしなもので、「こんな理屈がまかり通れば、市町村は何時、何をやってもかまわないし、市町村議会は不要である」ということにもなりかねません。条例を定める時期について何ら規定がないのは当たり前で、常識的に考えても、地方自治法第4条に従って条例の改正案を議会に提出して出席議員の3分の2以上の同意を得てから移転のための準備を具体的に進めるでしょう。また、その条例の改正案と同じタイミングで議会に予算案を提出し、議決を得るでしょう。そうでなければ、何のために特別多数決を定めているのかわかりません。裁判官の頭の中には地方公共団体の議会など存在しないのでしょうか。悪い意味で逐条的に解釈するから、換言すれば「木を見て森を見ず」という態度の解釈であるから、こういう変な理屈が出てくるのでしょう。

 そして「付帯意見」です。「鎌倉市監査委員公表第1号」のメインはむしろ「付帯意見」なのか、また、「これは監査結果の範囲を超えているのではないか」と疑いたくなるものです。全文を引用させていただきましょう。

 「新庁舎の整備に関する取組は、平成26年度策定の公共施設再編計画により昭和44年に竣工した市庁舎の老朽化に伴う機能更新が検討され、平成27年度実施の本庁舎機能更新に係る基礎調査を経て、平成28年度策定の本庁舎整備方針において移転して整備する方針とされ、平成29年度策定の公的不動産利活用推進方針において、全市的な視点から深沢地域整備事業用地を移転先とする方針とされた。その後も平成30年度策定の本庁舎等整備基本構想、令和4年度策定の新庁舎等整備基本計画と今日まで取組が進められ、この度住民監査請求の対象とされた新庁舎等基本設計及びD X支援業務委託事業費は、令和6年度から7年度までの2カ年をかけて基本設計を行う過程の中で、市民や議員に対し、防災拠点となる新庁舎のイメージを膨らませることが出来るよう発信するための予算との位置付けである。

 このように時間と労力をかけて目指してきたまちづくりは、本庁舎移転を含む深沢地区のまちづくりと鎌倉地区の市役所現在地の利活用の構想が、真に市民の安全と市の将来像を見据えた政策の柱であるとの信念から、松尾市長自らが選挙公約とし、取り組んできた政策にほかならないはずである。であるならば、松尾市長は、この政策を途中で投げ出すことなく不退転の覚悟で政治責任を全うするという姿勢を具体的に示し、課題に取り組むべきだと考える。

 そして、市民から違法又は不当などと疑念を抱かれるような事業の進め方や、市民や議会を二分する政策論争に発展してしまうような進め方はこれを改め、市民の共通課題の解決を図るためのマイルストーン(行程)を明示し、松尾市長自らが先頭に立ってその手法や政策について市民との対話や議論を重ねることにより、事態の打開に向けた一層の努力を望むものである。

 住民監査請求の審査に当たり、違法又は不当な支出の判断にとどまらず、このことを付帯意見として申し添える。」

 どのように読んでも監査結果ではなく選挙演説か市議会における質疑応答であり、監査委員の役割を超えています。地方自治法第198条の3第1項は「監査委員は、その職務を遂行するに当たつては、法令に特別の定めがある場合を除くほか、監査基準(法令の規定により監査委員が行うこととされている監査、検査、審査その他の行為(以下この項において「監査等」という。)の適切かつ有効な実施を図るための基準をいう。次条において同じ。)に従い、常に公正不偏の態度を保持して、監査等をしなければならない」と定めていますが、たとえ逆立ちして「付帯意見」を読んだとしても、地方自治法第198条の3第1項にいう「常に公正不偏の態度を保持して」いるようには見えません。

 鎌倉市の場合、2名の監査委員のうち1名は市議会議員であり、おそらくはこの1名が主導となって「付帯意見」を付したのでしょう(上記神奈川新聞社記事によれば、市議会議員である監査委員は、2022年12月26日の鎌倉市議会本会議において条例案に賛成の立場を示していました)。そもそも、このような監査委員の選任の方法こそが問題であるとしか思えませんが、地方自治法第196条第1項が「監査委員は、普通地方公共団体の長が、議会の同意を得て、人格が高潔で、普通地方公共団体の財務管理、事業の経営管理その他行政運営に関し優れた識見を有する者(議員である者を除く。以下この款において「識見を有する者」という。)及び議員のうちから、これを選任する。ただし、条例で議員のうちから監査委員を選任しないことができる」と定めており、鎌倉市は条例で市議会議員を監査委員の選任から排除していませんので、やむをえないところとではあります。それにしても、監査委員の適格性には大きな疑問符を重ねて付すしかありません。監査結果にこのような「付帯意見」を付すること自体が違法であるとまでは言えないでしょうが、不当であることは間違いのないところです。

 しかも、やはり2024年9月2日に公表された「鎌倉市監査委員公表第2号」の「付帯意見」が、「鎌倉市監査委員公表第1号」の「付帯意見」と全く同じ文言なのです。

 「鎌倉市監査委員公表第2号」は、2024年7月5日付の「新庁舎等基本設計及びDX支援業務委託事業費予算執行停止」を求める住民監査請求に対する監査結果です。念のために請求内容を示しておきます。

 ・「令和6年(2024年)2月鎌倉市議会定例会に鎌倉市長から提案され、同年3月15日に可決された令和6年度一般会計予算のうち、第3表債務負担行為『新庁舎等基本設計及びDX支援業務委託事業費 令和6年度から令和7年度まで294,965,000円」(以下「本件新庁舎等基本設計等事業費」という。)は、地盤調査を含めた、深沢行政用地(鎌倉市寺分字陣出8番8)での市役所新庁舎の基本設計を行うものである」が、「令和4年(2022年)12 月、鎌倉市役所を御成町18番10号から寺分字陣出8番8(深沢行政用地)に移転することを内容とした鎌倉市役所の位置を定める条例(以下「位置条例」という。)の一部を改正する条例は、鎌倉市議会で特別多数議決が成立せず、否決されている」から、「否決された場所へ市役所を移転するための行動、予算支出は法的根拠を欠き、無駄な支出である。したがって、地方財政法第4条第1項違反である」。

 ・それにもかかわらず、鎌倉「市は新庁舎等基本設計及びDX支援業務委託事業の契約相手方選定のためのプロポーザルへの参加者の募集を開始しており、令和6年(2024年)10月には仮契約をすることになっている」から「このままでは違法な公金の支出が行われる可能性が高い」。

 2件の住民監査請求は、詳細は異なるものの鎌倉市役所の移転問題に関するものである点において共通しているため、同じ文言の「付帯意見」を示したのでしょう。或る意味では監査委員の意見を強調したかったのかもしれません。しかし、これでは、上記神奈川新聞社記事にあるように「政治的中立が求められる監査委による庁舎移転の“支持表明”とも読み取れる記述に市側も困惑し、反対派市議も『監査委の政治介入』と反発し波紋が広がっている」のも当然です。監査委員としての「分をわきまえていない」と批判されても仕方のないところですし、私もそのように考えます。

 地方自治法第196条の改正が必要とされるところです。少なくとも、A市の監査委員に同じ市の市議会議員が入ることができるという部分は改める必要があります。

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