英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2021王位戦 挑戦者決定戦 羽生九段ー豊島竜王 その2

2021-05-26 14:28:20 | 将棋
「その1」の続き)


 図の▲2四歩は新手。このタイミングだと銀で取れない(△2四同銀だと☗6四角☖同歩☗7一角☖7二飛に☗4四角成で馬を作ることができる)。△2四同歩と取らせることで、▲2五歩の継ぎ歩が生じている……しかし、現状は先手に持ち歩がない。先手はうまく歩を入手したいが、その道筋は見えない。ちなみに、AI評価値は、ほぼ互角。

 互いに自陣の整備を進め、第2図。

 後手の豊島竜王は、先の▲2四歩を時期尚早、それを咎めるべく上部を厚くしている。2三の金と3二の銀は逆形で3一には守備駒の利きはなく横からの攻めには弱いが、縦(上部)からの攻めにはめっぽう強そう。また、先手の主張の一つである1筋の突き越しも、2三の金で弱点をカバーできている。ちなみに、評価値はほぼ互角。後手は先手からの攻めの糸口をつかまさずに、歩得をキープしているので後手の方が良さそうだが、金銀逆形の評価が低いのかもしれない。
 ただし、先手陣はほぼ飽和点。後手は穴熊に組み替える余地があるし、後手なので動く必要はない。先手は銀を8六に上がっているので、穴熊に組み替えにくい。
 なので、仕掛けるなら今。と言っても、通常の▲4五歩△同歩▲同桂の仕掛けは、▲4五歩の時に△3七角成と桂を取られてしまう。よって、工夫が必要。羽生九段は▲5五歩△同歩と角道を止めて▲4五歩と突く。△4五同歩に更に▲3五歩と突く。3筋の突き捨ては角や銀の進出路を作った手だが、2三の金の意義を高めてしまったマイナスもある。
 豊島竜王は途中△8五歩▲9七銀を利かせたが、素直に3歩の突き捨てを△同歩と応じた(第3図)。


 3筋を突き捨てたことで、先手の攻撃のバリエーションは増えたが、3図から感じる後手からの圧力が半端ない。3筋は突き捨てずに▲4五同桂の方がよかった。
 5段目に3枚並ぶ歩に加え、1間の間があるが3枚の金銀の強い後ろ盾。先手の攻めが成功する気がしない。△5六歩と突かれる手も気になる。

 私が思うに、第2図では▲6五歩と突くべきだったのでは?
 角が引いてくれるなら、▲4五歩が突ける。気になるのは△6五同桂で、突いたからには▲6六金と繰り出すことになるが、桂をみすみす取られては形勢を損じてしまうので、後手が激しく反発してくるのは必至。先手の金銀はバラバラ状態なので、攻め込まれてしまう可能性も低くはない。
 それでも、そう指すべきだった。後手の逆形を咎めるには2~4筋の金銀の厚みを避け、横からの攻めを目指すべきだった。また、攻められることで駒が手に入るので、どこかで▲2五歩と突く手が有効になる可能性もある。

 第3図以下、▲4五桂△3四銀▲4六銀△4四歩▲3三歩(第4図)。

 《攻めてはいるものの……全然効いていない》……そんな感じだ。
 以下、△3三同桂▲同桂成△同金右▲2六桂と攻めるが、後手の防御力が強くて攻撃が届く気がしない。▲2六桂に△2五銀▲1四歩と歩の入手を計りながら端にも味をつけ、△1四同歩▲同香(第5図)と何とか攻めを繋げようとするが……

 △2六銀がほぼ決め手。
 △2六銀には▲1一香成とできないとおかしいのだが、△1一同飛と眠っていた飛車に大転回されることになり、何をしているのか分からなくなる。となると、△2六銀に▲同飛と取るしかない。銀を取れば、悪いながらも勝負できそうだが、△3四桂の飛銀両取りが待っている。しかたなく、なけなしの歩を3四に打ち捨てて▲2六飛と銀を取るが、3四に金を呼び込むことになり、△2三桂(第6図)と3五を補強されて、後手陣は盤石となった。
 戻って、△2五銀に対しては、▲3五銀△3四歩▲同桂△同銀▲同銀と突撃し、△3四同金直に▲3五歩から3四銀に絡みつく方がましだった気がするが、気のせいかもしれない。


 図の△2三桂は森内九段が好きそうな厚い手で、羽生九段の攻めは完全に頓挫してしまった。
 羽生九段は▲6五歩△同桂▲5四銀と何とかアヤを求めようとするが、

 豊島竜王は悠々△1四香(次に△2五香で飛車を捕獲できる)。
 以下、▲6五銀△8二角(第8図)に

 ▲5七銀と6六へ飛車の転回を計り、活路を求めたが、以下△1一飛▲7四銀△1八香成▲6六飛に△6四香▲6五歩△5四桂がぴったりで、飛車が捕獲されては大勢が決した(飛車が捕獲されなくても、駄目かも)。


 以下は形作り。



 歩で取るしかないタイミングの第1図の▲2四歩の突き捨ての新工夫だったが、豊島竜王に的確に対応され実らなかった。
 その後、3歩突き捨ても動き過ぎで、何とか繋げようとした攻めも受け止められ、完敗。
 森内九段に連敗したのもそんな流れだったし、竜王戦4位決定戦の対木村九段戦も、動き過ぎで厳しい反撃にあった。踏みとどまって形勢不明→その後、△6六歩を許し(一旦、▲6五歩と後手飛車を押さえるべき)苦戦に。しかし、最後は時間に追われた木村九段が誤り、逆転勝ち。

 もう少し、悠然と構えた方がいいように思う。まだまだ強いのだから。
コメント
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