英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2024年度NHK杯将棋トーナメント1回戦 西山女流三冠-木村九段 その5

2024-07-02 17:33:08 | 将棋
「その1」「その2」「その3」「その4」………大概、「その3」ぐらいで疲れてくる……)

風向きが変わったとはいえ、形勢は互角。

 ここで龍の逃げ方に迷う。
 おそらく最善手は▲5八飛で、次いで▲5四龍。
 西山女流三冠の▲5五飛は後手の飛車の捌き(△6四飛)を防ぎも見た手だが、△8八角と打たれる手があり、やや損だった。
 この△8八角に気が進まないが▲6六銀と投入し、△8六角成にも▲6五角と中央から後手陣に対して支配力を強める方が良かったようだ。本譜は▲5六龍と躱したが、これだと0手で△7七角と打てたことになる。(▲6六銀は気が進まないが……)
 しかし、この後、木村九段も飛車の引き場所を間違えたらしく、後手有利→互角に。
 ただし、時間切迫の中、最善手を追及するのはナンセンスで、勘(大局観)を基に、指し手の方向性を見極めることが肝要。評価値や最善手という要素は、考慮時間がたっぷりある時に意味を成すのであって、時間切迫時は指し手(指し方)の分かりやすさの重要度が高くなる。第一感を信じ、読み進め、貫けることが勝利につながることが多いような気がする。もちろん、相手の読み筋(狙い筋)にもアンテナを張り、読み抜け、錯覚をなくすことも大事なので、30秒の秒読みは大変である。

 そんな均衡状態を崩す手を木村九段が指してしまう。それが、△8六角成。
 直後、▲5五角(第11図)と西山女流三冠が天王山に角を打つ。
 角にとって5五の地点は最も利き数が多い(16マス。隅にいる場合は8マス)。尤も、角は頭が丸いので5五に居ても負われることが多く、一歩譲って4六とか6四に位置して存在感を示すことの方が多い。
 とにかく、第11図の5五の角は光り輝いている。▲2五歩△同歩▲2四歩△同銀▲2三歩△同金▲3二桂成(▲5二桂成)のあき王手の狙いがあり、場合によっては▲7七銀と打ち馬の捕獲。さらに、▲7三桂成や▲7四歩と後手飛車のコビンを攻める手も見ている。その上、先手玉の弱点の3七もカバーしている。

 この角打ちは△8六角成として角の利きをそらしてしまったため生じた。代えて△8八角成とする方が良かった。ただし、△8八角成は▲5五角打に対し△同馬とする手を残したのではなく、△8九馬▲3六馬△9八馬と指す含みらしい。すぐに香を取らずに△8九馬(飛車取り)▲3六飛と後手の攻めの拠点の3六の歩を取り払わせて、△9八馬と香を取る。3八に歩があるので、次に△3三香(△3四香)が厳しいという仕組みなのだろう。
続く
コメント
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