間が空いてしまいましたが、『解説者と聞き手①』の続きです。
前回は、形勢判断の誤った解説は、その将棋の価値(内容)を歪めてしまう。例えば、A棋士が微差のリードを保ち続け、そのまま勝ち切ったという将棋があったとします。しかし、解説者が形勢を見誤り、「優勢であったBが最後に間違え、逆転負けした」という解説をしたとしたら、観戦者は「Bが惜しい将棋を落とした」とか「AはBのミスに救われ勝ちを拾った」という記憶が残ります。実際はAの会心譜であったのにもかかわらず。
こういう状況は、避けて欲しいと、力説しました。で、今回は「こういう解説(解説者)は困るなあ」と思い浮かぶ例を挙げてみたいと思います。
まず、思い浮かぶのは年が明けて開幕した王将戦(久保王将・棋王×佐藤九段)の第1局。
この将棋は、序盤、玉自ら5筋の歩を死守する▲5七玉から、佐藤九段が奔放、自在の指し回しで局面をリードし徐々にリードを広げるという会心譜であった。しかし、控室の評価は揺れていた。特に、△3三歩と先手の3四の銀を仕留めた辺りは、銀得の久保二冠が有望との声も出ていた。
中盤以降は佐藤九段が優勢との評価が固まりつつあったが、終盤、久保二冠の中央突破が受けにくくなると、俄然、形勢が怪しくなってきたとのコメントも記されていた。実際は、中央突破は肩透しの形となり、佐藤九段が順当に勝ち切った。(佐藤九段の素晴らしい指し回し、出来れば他の記事で取り上げたいです)
この辺りの解説のあやふやさは、ネット中継における解説(コメント)の体制が不明で、安易に責めることはできない。解説料を貰っての解説ならば、責任を負わなければならないが、その場に居合わせた棋士が善意で語ってくれた言葉であったり、単に控室の研究出の言葉を拾っただけということもあるかもしれない。
大概のネット中継の解説は、感想戦での結論や対局者の感想も載せてくれるので、後日、確認すれば、誤った認識は正される。ネット中継で解説を読むようなファンは、後日再チェックする率は高いと思われるので、誤った認識のままでいる危険性は低いのかもしれない。
でも、リアルタイムでのあまり的外れな形勢判断は避けて欲しい。かと言って、あまりに正確な解説も、ドキドキ感がなくなってしまう。(我儘なやつ)
最終盤、詰むや詰まざるかの局面で、ボンクラーズ(コンピュータソフト)に「25手までの詰みがあります」などと断言されてしまうのはつまらない。
この他、解説で頭に浮かぶのは、NHK杯戦の久保棋王・王将×森内名人。この将棋、序盤、森内名人の巧みな指し回し(誘導)で、久保二冠が窮地に立たされた局面もあったが、開き直りの端歩突きが森内名人の変調を呼び、機を捕らえた久保二冠が一気に森内玉がピンチに追い込み、仕留めるか逃れるかのギリギリの攻防が続いた。結局、久保二冠が押し切った形で勝利した。
解説者が米長会長。含蓄のあるコクのある面白い解説であったが、含蓄があり過ぎて、形勢や寄せ切ったのが受け損なったのかの真偽が、さっぱり分からなかった。誤った解説よりは良いが、残念な解説だった。
この他としては、先崎八段が思い浮かぶ。氏の解説は、断定的で分かりやすい。例えも巧みで面白い。
しかし、精度に欠けているように感じる。一目で大体の局勢や指し手は浮かぶのは流石であるが、名人戦や竜王戦の難解な局面においては、即断して論じるのは辛いように思われる。気風の良さは評価したいが、読み切っていないまま結論を口にして、解説を始めるが、迷走することもしばしば見られる。
羽生王位・棋聖と同年代で、羽生二冠の事をよく知っているせいか、羽生二冠の対局の解説者として声が掛かることが多いが、個人的にはガッカリしてしまう。
最後は個人攻撃みたいな記事になってしまいましたが、そのつもりはありません。元ライバルとか、よく知っているとかいう理由より、高度で難解な将棋を解説出来得るという条件で解説者を選んで欲しいと、切に思います。
前回は、形勢判断の誤った解説は、その将棋の価値(内容)を歪めてしまう。例えば、A棋士が微差のリードを保ち続け、そのまま勝ち切ったという将棋があったとします。しかし、解説者が形勢を見誤り、「優勢であったBが最後に間違え、逆転負けした」という解説をしたとしたら、観戦者は「Bが惜しい将棋を落とした」とか「AはBのミスに救われ勝ちを拾った」という記憶が残ります。実際はAの会心譜であったのにもかかわらず。
こういう状況は、避けて欲しいと、力説しました。で、今回は「こういう解説(解説者)は困るなあ」と思い浮かぶ例を挙げてみたいと思います。
まず、思い浮かぶのは年が明けて開幕した王将戦(久保王将・棋王×佐藤九段)の第1局。
この将棋は、序盤、玉自ら5筋の歩を死守する▲5七玉から、佐藤九段が奔放、自在の指し回しで局面をリードし徐々にリードを広げるという会心譜であった。しかし、控室の評価は揺れていた。特に、△3三歩と先手の3四の銀を仕留めた辺りは、銀得の久保二冠が有望との声も出ていた。
中盤以降は佐藤九段が優勢との評価が固まりつつあったが、終盤、久保二冠の中央突破が受けにくくなると、俄然、形勢が怪しくなってきたとのコメントも記されていた。実際は、中央突破は肩透しの形となり、佐藤九段が順当に勝ち切った。(佐藤九段の素晴らしい指し回し、出来れば他の記事で取り上げたいです)
この辺りの解説のあやふやさは、ネット中継における解説(コメント)の体制が不明で、安易に責めることはできない。解説料を貰っての解説ならば、責任を負わなければならないが、その場に居合わせた棋士が善意で語ってくれた言葉であったり、単に控室の研究出の言葉を拾っただけということもあるかもしれない。
大概のネット中継の解説は、感想戦での結論や対局者の感想も載せてくれるので、後日、確認すれば、誤った認識は正される。ネット中継で解説を読むようなファンは、後日再チェックする率は高いと思われるので、誤った認識のままでいる危険性は低いのかもしれない。
でも、リアルタイムでのあまり的外れな形勢判断は避けて欲しい。かと言って、あまりに正確な解説も、ドキドキ感がなくなってしまう。(我儘なやつ)
最終盤、詰むや詰まざるかの局面で、ボンクラーズ(コンピュータソフト)に「25手までの詰みがあります」などと断言されてしまうのはつまらない。
この他、解説で頭に浮かぶのは、NHK杯戦の久保棋王・王将×森内名人。この将棋、序盤、森内名人の巧みな指し回し(誘導)で、久保二冠が窮地に立たされた局面もあったが、開き直りの端歩突きが森内名人の変調を呼び、機を捕らえた久保二冠が一気に森内玉がピンチに追い込み、仕留めるか逃れるかのギリギリの攻防が続いた。結局、久保二冠が押し切った形で勝利した。
解説者が米長会長。含蓄のあるコクのある面白い解説であったが、含蓄があり過ぎて、形勢や寄せ切ったのが受け損なったのかの真偽が、さっぱり分からなかった。誤った解説よりは良いが、残念な解説だった。
この他としては、先崎八段が思い浮かぶ。氏の解説は、断定的で分かりやすい。例えも巧みで面白い。
しかし、精度に欠けているように感じる。一目で大体の局勢や指し手は浮かぶのは流石であるが、名人戦や竜王戦の難解な局面においては、即断して論じるのは辛いように思われる。気風の良さは評価したいが、読み切っていないまま結論を口にして、解説を始めるが、迷走することもしばしば見られる。
羽生王位・棋聖と同年代で、羽生二冠の事をよく知っているせいか、羽生二冠の対局の解説者として声が掛かることが多いが、個人的にはガッカリしてしまう。
最後は個人攻撃みたいな記事になってしまいましたが、そのつもりはありません。元ライバルとか、よく知っているとかいう理由より、高度で難解な将棋を解説出来得るという条件で解説者を選んで欲しいと、切に思います。
聞き手も将棋番組を面白くするかどうかの大きな要素で、NHK杯の場合、千葉女流の聞き手が一番面白かった(時に解説の先生方がたじたじになっていた)。残念ながら中倉姉妹の場合は棋力が低かった?せいか面白味に欠けた(事実、期間が短かった印象)。今の矢内女流は大人し目だが、人気・実力がともにあるので、長期に渡っているものと思われます(里見女流三冠の場合は棋力は凄いが聞き手となると多分「?」マークがつく印象)。
羽生×加藤戦の米永会長ならではの盛り上げ方でしたね。
聞き手も重要だと思います。「その3」として、聞き手を取り上げるつもりです。
早見え、奔放な棋風の千葉女流の聞き手は面白かったです。言い回しが少し婉曲的な点がマイナス点ですが。
里見女流三冠は、もう少しはっきり自分の考えを言って欲しいですね。自信を持って良いと思います。
>解説者が形勢を見誤り、「優勢であったBが最後に間違え、逆転負けした」という
解説をしたとしたら…
なかなか面白い指摘と思って書き込みました。というのも1月22日の女流名人位戦
第2局で、70手目△5五同飛に対して解説者は、「△5五同飛に▲同銀△同角の局面
は▲6一香成でも▲6六銀打でも勝ちだから迷いますね。」とコメントされました。
そして先手が手堅く▲6六銀打。中継ブログでも先手優勢だったし、この時点でも
「先手が残しているのでは」という意見や、「相当際どい」という意見が飛び交って
いたそうです。観戦している方は、これらのコメントを読んで普通第2局も「先手の勝ち」
と思うではないですか。ところがその後、詰めろ逃れの詰めろが見事に決まって逆転!
いやー素晴らしかったですね。これって解説者や検討陣が「5五の銀を抜く手がある
ということを読み切れていなかったということでしょうか。挑戦者が、「難しくて
分からず、どのあたりでどうなったかも分からなかったです」と語られていたそうで、
1分将棋で最後まで読みきるのはかなり難しかったようですね。
それと他の将棋のブログなどでも書かれていますが、ニコニコ生放送と棋戦中継の
コンビネーションは非常に素晴らしかったですね。今後「インターネットでの
大盤解説」は、非常に興味あるテーマと思いますが如何ですか?
女流名人位戦第2局はリアルタイムで観ることができず、翌日、流して観るだけでした。
この将棋は、里見女流三冠が中盤早々、清水女流六段の飛車を成り込ませる勝負手?を放ったのですが、ちょっと見、かなりの疑問手だと思いましたが、ネット解説では深く言及されていませんでした。
たぶん、これを境に清水女流が優勢になったと思いますが、里見女流三冠があれこれ勝負手を繰り出し、徐々に複雑になっていきました。それでも、シゲさんのおっしゃるように先手(清水)優勢は動いていないような解説でしたが、5五の銀を抜く筋で逆転?しました。
ただ、厳密に言えば「逆転の妙手」というものはなく、妙手が存在する時点で形勢はすでに逆転していたということになります。
局後の検討によると、▲6一香成でも▲6六銀打でも、どちらでも勝ちではなく、▲6一香成でなければならなかったようです。
感想戦での検討をまとめると、飛車を成り込んだ時点で先手が有利。その後、後手の6筋強襲を上手く受け止め、先手優勢に。ところが、大事に指そうとしたのがよくなく、一瞬形勢不明に。ところが、ここで後手が間違え、先手優勢になり、問題の局面に。
ここで、大事に指そうとした▲6六銀打がよくなく逆転したようです。
このように、リアルタイムの解説は不正確で、局後の検討や対局者の読みを確認したほうがいいようです。
ただ、ネット解説の場合は、同じ場で、訂正や修正されるので、罪は小さいです。
私が心配するのは、その修正がされずに、観戦者が誤った印象を抱いたままで終わってしまうことです。
本文にも書きましたが、コメント自体が善意の提供の場合や、控室の声を拾い上げただけという場合もあるようです。なので、不正確になるという場合が多いような気がします。
なので、正しい形勢判断や解説はサイト管理者が責任を持つべきだと考えます。
女流棋戦の解説に関しては、女流の将棋が男性棋士とは異質なので、形勢判断にずれが生じることが多いように思います。検討陣も少し頼りないことも多いようです。
里見×清水戦においては、清水女流の独特な将棋の作りに、里見女流がバランスを崩すことが多いようです。ただ、そこから、立て直して勝負、あるいは逆転に持ち込むというパターンが多いようです。
そうだったんですね。私は解説者のコメントなどから、「挑戦者のミスで惜敗」という感想と、最後超盛り上がり、「この難しい将棋を逆転したのは凄い!」と思いました。
>このように、リアルタイムの解説は不正確で、局後の検討や対局者の読みを確認したほうがいいようです。
確かにその通りで、感想戦の内容や高段者の局後解説が、後から追加で加えられコメントが訂正されると、読み返した場合有難いですね。本局の感想戦は73手目、▲6六銀打まで。もし89手目▲7九金ならどうなったのかなどは不明です。里見×清水戦などは特に検討陣の解説をもっと詳しく知りたいところです。
>もし89手目▲7九金ならどうなったのかなどは不明です。里見×清水戦などは特に検討陣の解説をもっと詳しく知りたいところです
私見ですが、▲7九金(打)には、△8八銀が必至(次に△9七銀打▲同桂△9九銀成の詰み)で、後手勝ちだと思います。
△同金 ▲同桂 △同銀 と進んで、▲6二馬 △6八歩 ▲5四金 △6六馬 ▲7五歩 △6九歩成
▲5五金 △同馬 ▲6六歩 △5六玉 となれば、結局は後手玉に上に逃げられ捕まえられずに先手必敗になるようです(坂田さんから教わりました)。すごいですね。
なるほど、玉を6五に追ってから、▲8五飛から▲7七桂打が粘りある手順で、必至がほどけますね。
ちょっと、甘く見ていました。私も調べましたが、簡単ではないけれども、▲7九金打
79手目)に△8八銀以下▲7七桂打までは必然で、△同金でも△同銀不成(成)でも後手が勝ちのようです。
やや難しいところもありますが、里見女流三冠なら問題はないでしょう。
補足説明、ありがとうございました。
訂正です。それから▲7九金の後、激指11では△8九金▲同玉△8五桂と進み、その後いろいろ変化
しても、後手が勝ちになるようです。
英さんが指摘されたように、解説によって将棋の奥の深さ、面白さを感じることができるということの
見本と思い書き込みました。将来解説者は、コンピューター併用でネット中継する時代が来るかも
しれないと思います。ではまた、次の記事を楽しみにしています。
う~ん、△8九金まったく気づきませんでした。何しろ金で桂を取る上、7九に金を打ったところだったので▲同金で何にもならないような気がしました。なるほどですね。
>コンピューター併用でネット中継する時代が来るかもしれないと思います
ネット解説でのコメントには明記されていませんが、控室などでは局面の検索だけでなく、手の検証にも使われているような気がします。特に、詰みの有無は、そのような気がします。