≪85%ほど完成したレビュー記事が、なぜか消失……眩暈を感じつつ再記述しました≫
明日は見えず、今日をどうやり過ごすか……
…………“生きる”とはかけ離れた日々
無戸籍、ネグレクトの母親、ドメスティックバイオレンスの父親……
「いつも目の前のことしか考えないように生きてきたんです。
先のことなんて、考えてもつらくなるだけだから」
「考えるのはやめて、“今日をどう乗り切るか”……それだけ考えようって」
「僕はすべてを抱え込み、希望を捨て、人生に絶望していました」(事件後、特命のふたりに寄せた手紙)
無責任、ひとでなしの親から押し付けられた重荷(自身の生活だけでなく、弟や幼い妹)に喘いできた少年。
そんな少年に特命係のふたりは手を差し伸べる。
「“この世の中には頼れるものなんて何もない”…そう思い込んでいるような暗い表情でした」
「今までキミはずっと、その日だけを毎日、必死で生きてきたのでしょうねえ。
苦しかったでしょう……でも、もう十分だと思いますよ。
これからは、明日を生きていきませんか?」
「俺が手伝うよ」(冠城)
………少年を抱きかかえるような右京の言葉、冠城も支援を約束(捜査段階から、真剣に少年を問い詰めていた)
重荷から解放された少年は涙を流し(感情の解放)、「ありがとう」と感謝の言葉を言う(人の情を感じた)。
≪よかったなあ≫(亡くなった妹は可哀想だったが)と思った視聴者は多かったろう(かく言う私も)
情報を隠し、断片的な事実を見せる……ミステリーの手法の一つだが、謎解きとしてはやや卑怯(私見です)
・殺人現場で、なぜ、リンゴを食べたのか?(殺害後、その場にとどまり、リンゴを食べたという捜査陣の見解だった)
・リンゴの箱の謎(少年は遺体発見直後、現場でリンゴの箱を抱え、後に、それをコインロッカーにしまった)
・半グレ集団に命令された悪事の内容は?
・少年が橋の下に埋めたモノは?
など多くの謎があったが、事実を伏せることで解明を先延ばしにした。
それでも、≪母親の部屋のカレンダーと少年が書いたスマホの番号の「8」の筆跡≫、≪埋めた後の花を添えたこと≫、≪兄弟の服装の類似点≫≪靴ひもが解けていた≫、≪胡蝶蘭の名産地と右京の鎌掛け≫、≪半グレ集団とその兄貴分の暴力団員とのやりとり≫、≪眼鏡店からのダイレクトメール≫など、推理する材料もあった。右京はかなり早い段階で、「どうやらすべてが見えてきたようですねえ」(私には見えていなかったが)
あと、少年が身元やアリバイ、半グレ集団に行動を偽る手腕もなかなかのものだった。
真犯人は“第一発見者”
“善意の通報者”を装うことで、捜査対象から外れようと思ったのかもしれないが、墓穴を掘ってしまった感がある(第一発見者は捜査対象になる)。ドラマの尺の関係で、登場させておく必要があったからなのだろう。
【疑問点など】
・リンゴの箱をけっこう無造作にコインロッカーに仕舞っていたが
・弟(後に判明)が兄のことを“おまえ”と呼んでいた(最後のシーンでは“兄ちゃん”と呼んでいた)
・ディスカウントショップで少年が品を物色する様子を防犯カメラの視点になっていたがその理由は?
・少年に100万円の前金を渡すのは気前良過ぎ(初めから、弟を人質にとる方が自然)
・半グレ集団が闇金業で荒稼ぎをしていたようには見えない
・妹の存在とその死を右京が気づけなかった
・ずっと少年をマークしていれば、解決できたように思う
それにしても、出生届を出さない母親は許せない。無戸籍状態は、社会から認知されない存在。あまりにも悲しすぎる。
しかも、3人も無戸籍。責任も愛情もなく子どもたちを放ったらかしで生活費も与えず、自分は気ままな生活。
幼い妹の死は衝撃の事実。リンゴ箱のシーンを回想すると、やるせない……やるせない。
【追記】 タイトルの「少年A」について
少年にとって本名は意味がない状況、むしろ、他人に成りすます必要に迫られることの方が多かった。“少年A”でも“少年B”でもよかった。
今回の件で、本名が価値を持ち、本名で呼ばれる権利や関わりを持てることができた。“少年A”から“創”になれた。
脚本担当の徳永富彦氏は、今シリーズ第7話「倫敦からの客人」を担当している。
徳永富彦氏については過去に『刑事7人』第3シリーズ 第8話「悪女 ~無差別殺人VS嘘まみれの女たちの危ない関係~」において、下記のように評している。
=========================================
徳永富彦氏の脚本は“虚構”をテーマにしたモノが多い。
その他の特徴としては、立体的構造(二重構造)や同時進行など凝った構造。
『相棒』
season13…第4話「第三の女」、第11話「米沢守、最後の挨拶」、
season14…第5話「2045」、第17話「物理学者と猫」
season15…第7話「フェイク」
『捜査一課9係』
season10…第8話「3つの捜査線」
season11…第8話「3つの大追跡」
『刑事7人』の今シリーズでは 第4話「死味」遺体を見て笑う男の正体!?V字の傷痕の謎!! を担当している。
==========================================
今回も少年が偽る身元……“虚構”がテーマのひとつ。
氏の脚本では、相棒 season14 第17話「物理学者と猫」が印象に残っている。
【season16 の当ブログの記事】
第1話「検察捜査」
第2話「検察捜査~反撃」
第3話「銀婚式」
第4話「ケンちゃん」
第5話「手巾(ハンケチ」
第6話「ジョーカー」
第7話「倫敦からの客人」
第8話「ドグマ」
第9話「目撃しない女」
第10話 元日SP「サクラ」
第11話「ダメージグッズ」
第12話「暗数」
第13話「いわんや悪人をや」 前編(300回記念スペシャル)
第14話「いわんや悪人をや」 後編(300回記念スペシャル)
第15話「事故物件」 15分拡大スペシャル
第16話「さっちゃん」
第17話「騙し討ち」
第18話「ロスト~真相喪失」
【ストーリー】番組サイトより
殺人事件の容疑者はワケあり美少年!?
特命係を翻弄する少年Aの正体とは?
ホステスの女性が自宅マンションで撲殺される事件が発生。現場検証の結果、犯人と思われる人物が、犯行後に12時間も部屋に残っていたという異様な状況が判明する。
そんな中、右京(水谷豊)と亘(反町隆史)は現場付近で気になる少年(加藤清史郎)を目撃。その少年は、暴力団員風の男たちから脅されていたが、何か事情があるらしく、右京たちから事情を聞かれても、のらりくらりとかわすだけで要領を得ない。
いっぽう、ホステス殺害について捜査本部は痴情のもつれの線で捜査を進めていたが、右京たちは少年が何らかの事情を知っているとみて周辺を調べる。すると、少年の素性やアリバイが、その場しのぎの嘘であることが発覚。少年は、右京たちに追究されても頑なに本当のことを話そうとせず…!?
“嘘つき少年”は一体何を隠しているのか?
少年を脅して操る暴力団員風の男たちの狙いとは!?
特命係が事件の背後に隠された驚愕の真実を解き明かす!
ゲスト:加藤清史郎
脚本:徳永富彦
監督:橋本一
明日は見えず、今日をどうやり過ごすか……
…………“生きる”とはかけ離れた日々
無戸籍、ネグレクトの母親、ドメスティックバイオレンスの父親……
「いつも目の前のことしか考えないように生きてきたんです。
先のことなんて、考えてもつらくなるだけだから」
「考えるのはやめて、“今日をどう乗り切るか”……それだけ考えようって」
「僕はすべてを抱え込み、希望を捨て、人生に絶望していました」(事件後、特命のふたりに寄せた手紙)
無責任、ひとでなしの親から押し付けられた重荷(自身の生活だけでなく、弟や幼い妹)に喘いできた少年。
そんな少年に特命係のふたりは手を差し伸べる。
「“この世の中には頼れるものなんて何もない”…そう思い込んでいるような暗い表情でした」
「今までキミはずっと、その日だけを毎日、必死で生きてきたのでしょうねえ。
苦しかったでしょう……でも、もう十分だと思いますよ。
これからは、明日を生きていきませんか?」
「俺が手伝うよ」(冠城)
………少年を抱きかかえるような右京の言葉、冠城も支援を約束(捜査段階から、真剣に少年を問い詰めていた)
重荷から解放された少年は涙を流し(感情の解放)、「ありがとう」と感謝の言葉を言う(人の情を感じた)。
≪よかったなあ≫(亡くなった妹は可哀想だったが)と思った視聴者は多かったろう(かく言う私も)
情報を隠し、断片的な事実を見せる……ミステリーの手法の一つだが、謎解きとしてはやや卑怯(私見です)
・殺人現場で、なぜ、リンゴを食べたのか?(殺害後、その場にとどまり、リンゴを食べたという捜査陣の見解だった)
・リンゴの箱の謎(少年は遺体発見直後、現場でリンゴの箱を抱え、後に、それをコインロッカーにしまった)
・半グレ集団に命令された悪事の内容は?
・少年が橋の下に埋めたモノは?
など多くの謎があったが、事実を伏せることで解明を先延ばしにした。
それでも、≪母親の部屋のカレンダーと少年が書いたスマホの番号の「8」の筆跡≫、≪埋めた後の花を添えたこと≫、≪兄弟の服装の類似点≫≪靴ひもが解けていた≫、≪胡蝶蘭の名産地と右京の鎌掛け≫、≪半グレ集団とその兄貴分の暴力団員とのやりとり≫、≪眼鏡店からのダイレクトメール≫など、推理する材料もあった。右京はかなり早い段階で、「どうやらすべてが見えてきたようですねえ」(私には見えていなかったが)
あと、少年が身元やアリバイ、半グレ集団に行動を偽る手腕もなかなかのものだった。
真犯人は“第一発見者”
“善意の通報者”を装うことで、捜査対象から外れようと思ったのかもしれないが、墓穴を掘ってしまった感がある(第一発見者は捜査対象になる)。ドラマの尺の関係で、登場させておく必要があったからなのだろう。
【疑問点など】
・リンゴの箱をけっこう無造作にコインロッカーに仕舞っていたが
・弟(後に判明)が兄のことを“おまえ”と呼んでいた(最後のシーンでは“兄ちゃん”と呼んでいた)
・ディスカウントショップで少年が品を物色する様子を防犯カメラの視点になっていたがその理由は?
・少年に100万円の前金を渡すのは気前良過ぎ(初めから、弟を人質にとる方が自然)
・半グレ集団が闇金業で荒稼ぎをしていたようには見えない
・妹の存在とその死を右京が気づけなかった
・ずっと少年をマークしていれば、解決できたように思う
それにしても、出生届を出さない母親は許せない。無戸籍状態は、社会から認知されない存在。あまりにも悲しすぎる。
しかも、3人も無戸籍。責任も愛情もなく子どもたちを放ったらかしで生活費も与えず、自分は気ままな生活。
幼い妹の死は衝撃の事実。リンゴ箱のシーンを回想すると、やるせない……やるせない。
【追記】 タイトルの「少年A」について
少年にとって本名は意味がない状況、むしろ、他人に成りすます必要に迫られることの方が多かった。“少年A”でも“少年B”でもよかった。
今回の件で、本名が価値を持ち、本名で呼ばれる権利や関わりを持てることができた。“少年A”から“創”になれた。
脚本担当の徳永富彦氏は、今シリーズ第7話「倫敦からの客人」を担当している。
徳永富彦氏については過去に『刑事7人』第3シリーズ 第8話「悪女 ~無差別殺人VS嘘まみれの女たちの危ない関係~」において、下記のように評している。
=========================================
徳永富彦氏の脚本は“虚構”をテーマにしたモノが多い。
その他の特徴としては、立体的構造(二重構造)や同時進行など凝った構造。
『相棒』
season13…第4話「第三の女」、第11話「米沢守、最後の挨拶」、
season14…第5話「2045」、第17話「物理学者と猫」
season15…第7話「フェイク」
『捜査一課9係』
season10…第8話「3つの捜査線」
season11…第8話「3つの大追跡」
『刑事7人』の今シリーズでは 第4話「死味」遺体を見て笑う男の正体!?V字の傷痕の謎!! を担当している。
==========================================
今回も少年が偽る身元……“虚構”がテーマのひとつ。
氏の脚本では、相棒 season14 第17話「物理学者と猫」が印象に残っている。
【season16 の当ブログの記事】
第1話「検察捜査」
第2話「検察捜査~反撃」
第3話「銀婚式」
第4話「ケンちゃん」
第5話「手巾(ハンケチ」
第6話「ジョーカー」
第7話「倫敦からの客人」
第8話「ドグマ」
第9話「目撃しない女」
第10話 元日SP「サクラ」
第11話「ダメージグッズ」
第12話「暗数」
第13話「いわんや悪人をや」 前編(300回記念スペシャル)
第14話「いわんや悪人をや」 後編(300回記念スペシャル)
第15話「事故物件」 15分拡大スペシャル
第16話「さっちゃん」
第17話「騙し討ち」
第18話「ロスト~真相喪失」
【ストーリー】番組サイトより
殺人事件の容疑者はワケあり美少年!?
特命係を翻弄する少年Aの正体とは?
ホステスの女性が自宅マンションで撲殺される事件が発生。現場検証の結果、犯人と思われる人物が、犯行後に12時間も部屋に残っていたという異様な状況が判明する。
そんな中、右京(水谷豊)と亘(反町隆史)は現場付近で気になる少年(加藤清史郎)を目撃。その少年は、暴力団員風の男たちから脅されていたが、何か事情があるらしく、右京たちから事情を聞かれても、のらりくらりとかわすだけで要領を得ない。
いっぽう、ホステス殺害について捜査本部は痴情のもつれの線で捜査を進めていたが、右京たちは少年が何らかの事情を知っているとみて周辺を調べる。すると、少年の素性やアリバイが、その場しのぎの嘘であることが発覚。少年は、右京たちに追究されても頑なに本当のことを話そうとせず…!?
“嘘つき少年”は一体何を隠しているのか?
少年を脅して操る暴力団員風の男たちの狙いとは!?
特命係が事件の背後に隠された驚愕の真実を解き明かす!
ゲスト:加藤清史郎
脚本:徳永富彦
監督:橋本一
ここのところ、残念な出来の回が続いていましたが、今回はツッコミどころはあるものの良かったと思いました。
あらためて見直すと、これはそういう意味だったのか、と気付くこともありました。
○アパートの部屋の奥に置かれたベビーバス
○弟の箸やスプーンの持ち方が歪(ちゃんとした躾をされていない、ネグレクトを暗示していた)
○母親殺害のニュースをテレビで見ていた兄が、弟が起きた気配を感じてテレビを消す(母親が殺されたことを、弟に隠していたから)
弟が、最初兄のことを「おまえ」と読んでいたのは、私も気になりました(最初から「兄ちゃん」や名前で呼んだらネタバレになりますから仕方ない面はありますが)。
ちなみに、Season14第17話『物理学者と猫』は私も好きなエピソードです。個人的には、現時点で冠城シリーズでは一番良かったと思っています。
>あらためて見直すと、これはそういう意味だったのか、と気付くこともありました。
「ベビーバス」「箸の持ち方」「ニュース」……私がスルーしてしまった点を補足していただき、ありがとうございます。
>Season14第17話『物理学者と猫』は私も好きなエピソードです。個人的には、現時点で冠城シリーズでは一番良かったと思っています。
緻密な組み立ては、「物理学者と猫」と相通ずるものがあります。
ところで、「冠城シリーズでは一番良かった」のは、今回の話でしょうか?それとも、「物理学者と猫」なのでしょうか?
>「冠城シリーズでは一番良かった」のは、今回の話でしょうか?それとも、「物理学者と猫」なのでしょうか?
実は、コメントしたあとで「紛らわしかったかな」と思っていました。失礼しました。
「冠城シリーズでは一番良かった」と思っているのは『物理学者と猫』です(最初見たときはよく理解できなかったのですが、繰り返し見るうちに「本当に良くできた話だ」と思うようになりました)。
>「冠城シリーズでは一番良かった」と思っているのは『物理学者と猫』です
やはりそうでしたか。
文脈とmarumoriさんの嗜好を考えると、そのような気がしましたが、最初のコメント中にあった「現時点で」という言葉に惑わされました。「現時点」とことわりがあったので、もしかしたら「少年A」かと思ったわけです。
早速のお返事で、私の疑問が晴れました。
「物理学者と猫」はかなり異質な作品でしたが、面白かったです(レビューを書くのには苦労しました)。この作品も、かなり練られていました。
『捜査一課9係』の方も、かなり凝った脚本でした。今後に期待したい脚本家さんですね。
今後に期待したい脚本家さんですね。