漢方薬剤師の日々・自然の恵みと共に

漢方家ファインエンドー薬局(千葉県)
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荻原浩の作品覚書

2006-08-12 | 
最初の出会いは、「オロロ畑~」だったので、「明日の記憶」が
比較的明るいイメージで読めた。
それにしても、オロロと明日では、かなりイメージが違う・・・
さらに、「コールドゲーム」にいたって、この作家のテリトリーの
広さというか、テーマの自由さに脱帽。

しかも、どのテーマについてもかなり調査してあるらしく、
リアルな手ごたえ十分。



オロロ畑でつかまえて

広告業界の裏側がわかる。

東北の誰も知らないような小さな村をなんとか有名にしようと
宣伝対策を考えた村人と広告業者。
恐竜騒ぎを起こすのだけど、本当はその村にはもっとすごいものが
あった・・・
最後のオチが痛快。


明日の記憶

「脳みそを搾り出すようにして書いた」というようなコメントを
本人が書いていたが、まさに。

なんたって同年代。認知症に関しては身につまされる。
こんなこと「あるある」と思いながら、徐々に脳の中の連絡網が
途切れていく様は、受け入れがたい気分になる。

最後は、この主人公のように、割り切れるのだろうか・・・


コールドゲーム

子供のいじめは容赦がない。
それがクラスという集団となるとなおさら。
さらに中学生となるとやや過激。

数年後、いじめられた者が、当時のいじめた者ひとりひとりに
仕返しをしてきた(?)。そして殺人事件にも発展し・・・
仕返しを警察に言えば、その原因として、ひどいいじめをした
ことを認めなければならないという複雑な心境。

いじめてしまった記憶、いじめを無視した記憶。
いじめられた記憶、無視されて助けてもらえなかった記憶。

いまさら触れられたくない、いやな思い出をぐりぐりと掘り出す
荻原のすごさ。