漢方薬剤師の日々・自然の恵みと共に

漢方家ファインエンドー薬局(千葉県)
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にぎやかな天地(宮本輝)

2006-03-15 | 
なんと、発酵食品の話題に絡めて、生と死の捕らえ方を思考するという、宇宙的な発想の物語です。
醤油や酒、酢、鰹節に糠漬など等。いったい醗酵する菌はどこからやってくるのか、数ある菌の中からなぜこの醗酵菌が居つくのか、そして醗酵菌たちの繰り返す生死の末に作り出される逸品・・・

それは偶然でもあり、絶え間なく引き継がれている必然的な生の営みでもあるようです。

人間の死はある日突然やってきて、残された者たちは、悲しみ憎しみ寂しさなどにまみれて素直に受け入れられないかもしれないけれど、それが10年後、20年後に、その死のおかげで起こった生活環境の変化によって造り出される、あるすばらしい結果があるとしたら、「その死は生の形をかえたもの」と考えられないだろうか。

そしてそこに至るまでの過程は、すばらしい発酵食品が出来上がるのと同じように、決して端折ってはたどり着けない。時間と手間がかかること。
耐え続けた人々の淡々とした生き様が印象的でした。

阪神淡路大震災を経験した彼が到達したひとつの思想でもあるでしょう。

自然界の大きな営みの中に人間の生死ももちろん含まれ、だれの死も無駄なことはなく、ある必然性の中に存在している。

このところずっと「宮本輝」に浸っているのだけど、この新作に関しても、素直な発想の人だと感心します。

でもって、日を決めて、糠浸けとご飯というあっさり食にすると腸の中がきれいになって体がすっきりし元気を取り戻すと書かれていました。
飽食にまみれた内臓を発酵食品で掃除するって、いいんじゃないでしょうか。
かといって、今の生活状況で糠浸けの面倒を見られそうもなく、売っている糠浸けを買ってくることが多くなったこの頃。
おいしいけど、流しの残飯ネットがすぐ糠で目詰まりするのがちょっと難点です・・・

こんな本いかが




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