平成21年2月10日にご逝去された大学の恩師を偲ぶ会がありました。近くにいるのでいつでも会えると思っていましたが、もう2度とお会いできなくなってしまいました。200人近くが集まった会は、寂しいはずなのにどこかやさしい空気が流れていて、みんなも笑顔で懐かしい話をしていました。28期生の出席者5人は、みんなあまり変わっていませんでした。傍らには、今までに設計された図面やスケッチがたくさん置かれていました。残されたそれらは、先生そのもののような気がしました。
会が終わると、公開されていた先生の研究室を見に行きました。自分たちの頃に使っていた古い校舎は取り壊されて、ピッカピカの新しい校舎になっていました。それでも室の中は相変わらず散らかっていて、全館禁煙のはずなのに煙草の匂いがして、汚れたコーヒーメーカーが放ったらかされてあって、まぎれもなく先生の研究室でした。「胃が痛くて」と言って苦笑いをする先生がそこに座っていても、何ら不思議ではないようでした。先生からみなさんへのお礼ですと蔵書を1冊づついただきました。お好きな本を選んでくださいということでしたので、4年生の時に一緒に調査旅行した「近畿の民家」という本をいただきました。大切にします。
今年担当した研究室の生徒全員の卒業が決まったという知らせを聞いて、間もなく息を引き取ったそうです。いつだって生徒のことをいちばんに心配してくれた先生らしいなあと思いました。自分が研究室にいた頃もそうでした。卒業設計はきちんとやってるか?設計事務所に行きたいならここなんかどうだ?OBがいるから訪ねてみなさい。もし就職できなかったら研究室に残ればいい。そう言ってくれました。誰に対してもその人と同じ目線に立って考える。その姿勢は、先生から学んだことです。
正直言うと、今日はAXISの試合に行こうか迷ったのですが、いくら優柔不断でも大切なものの順番を間違えてはいけません。よく考えれば、それくらいのことはわかるはずです。思い直して懐かしいキャンパスへ行くことにして、本当によかったと思います。危うく大変な間違いを犯すところでした。そうしたら、先生は大雨を降らせて試合を中止にしてくれました。最後の最後、お亡くなりになられてもやさしい先生でした。自分もこういう人になりたいと思います。
御冥福を心よりお祈り申し上げます。