「ただ、俺マジでサッカー好きなんすよ。マジでもっとサッカーやりたい。ホント、サッカーって最高なところを見せたいので、これからも続けさせてください」。
昨シーズンの最終戦、16年間在籍した横浜Fマリノスから戦力外を通告された松田直樹は、サポーターへこんなメッセージを残してチームを去った。生涯マリノスを宣言し、ミスターマリノスとまで呼ばれたベテラン選手の解雇は、クラブの枠を超えてサッカー界全体へ衝撃を与えた。カテゴリーを2つ落としたJFL松本山雅でプレーを続ける姿は、かつてJ2横浜FCへ移籍したカズの姿と重なるものを感じた。それでもサッカーを続けるという姿。そんな松田直樹が、急性心筋梗塞でこの世を去った。
もう歳だし動けないからとか、チームに迷惑をかけてしまうからとか、忙しくて時間がとれないからとか、別にそういうことを考えるのはかまわないけど、松田直樹に言わせればそんな悩みなんて「ちょー楽っす!」ということでしかないのかも知れない。健康な体と恵まれた環境のおかげで、余計なことを考えすぎるんじゃないか。いつの日か、サッカーを続けたくても続けられなくなる時が来るかもしれない。その覚悟だけは忘れずに、それまでは辞めることなんて考えないで、とにかく続けることだけを考えよう。
もしサッカーをやっていなかったら、わからないことが沢山あったなあと思う。心底愛したクラブを解雇される寂しさだとか、それでも支えてくれるサポーターやチームメイトの愛情だとか、いつまでも現役にこだわり続ける気概だとか、新たな夢を志半ばで断たれる無念さだとか、松田直樹が感じていた数々の想いを、多分サッカーをやっていない人よりは理解できるのだろう。だから、とてもとても悲しいです。
謹んで松田直樹選手のご冥福を心よりお祈り申し上げます。