「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

萎縮した 自己愛を抱えている (3)

2009年11月08日 19時25分54秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
(前の記事からの続き)

 誇大自己と親のイマーゴが バランスよく成熟し、

 現実と折り合いを付けていくことが、 自己を現実化していくことになります。

 しかし 境界性パーソナリティ障害の人は、

 親のイマーゴの ネガティブな支配が強すぎます。

 そのため 自己肯定感が培われないだけでなく、

 誇大自己の願望も 幼くして打ち捨てられ、 顕示的願望を内に秘めてしまいます。

 自己否定と自己顕示の アンバランスな葛藤の中にいるのです。

 うつ状態に陥りやすいのも、 誇大自己が 貧弱すぎるからだと言えます。

 気分や対人関係の不安定さは、

 親のイマーゴが 誇大自己とのせめぎ合いに打ち勝ち、

 罪悪感や自己否定感に 駆られてしまうからです。

 心の中で 親を求めながら、 うまく甘えられないのも、

 発達途中の 親のイマーゴから 卒業できないことと関係しています。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子は、 カウンセラーとして 良い働きをした話とか、

 子供がなついて 心子といると 能力を発揮するという話とか、

 ともすると 自慢とも取れることを よく話しました。

(ただ全然 鼻につくようなものではなく、 楽しい有意義な話でした。)

 後から考えると、

 関心を買おうとする 演技性だったり、 誇大自己だったかもしれません。

 また心子は 僕に怒りや批判をぶつけるとき、

 自分は正しく 僕より上であるという 立場でいました。

 秘められた顕示的願望が 表に出ていたのでしょう。

 怒りは 誇大自己が萎えてしまわないための 手段でもあります。

 でも 誇大自己が萎縮すると、 一遍に落ち込み、

 猛烈な自己否定に 陥ってしまいます。

 自己肯定とのバランスが 余りに極端で、 揺れ動いてしまうのですね。
 
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