遺伝的要因と環境的要因の 比重を調べるため、 双生児研究が行なわれてきました。
異なった環境で育った 7組の一卵性双生児と、
同じ環境で育った 18組の二卵性双生児で、
境界性パーソナリティ障害の発症が 二人の間で 一致するかどうかを調べました。
すると 一致が見られたのは、 二卵性双生児の2組だけでした。
これは、 遺伝的要因よりも環境的要因が 重要であることを示しています。
一方、 別の双生児研究では、
境界性パーソナリティ障害の遺伝率は、 5~6割だと推定されています。
ただ、 遺伝的な要因は 数十年単位で 大きく変わるものではなく、
近年の境界性パーソナリティ障害の急増を 説明できません。
すると、 遺伝的要因以外の 原因が考えられます。
〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
心子には ひとつ違いの兄がいました。
(この兄も、 心子が旅立った2年後、 心筋梗塞で急逝してしまいました。
父親と同じ病でした。)
母親は、 心子が一人で 何でもできる子だと 思っていた一方で、
兄には何かと 世話を焼きました。
逆に父親は、 跡継ぎとしての 兄の才覚に見切りをつけ、
手ひどい暴力を振るいました。
(鼻血が しぶきのように飛び散ったと、 実際に兄の口からも 僕は聞きました。)
心子の家族は皆 何かしら心の問題を 抱えていましたが、
その中で兄は 一番まともだったといいます。
父からの虐待も BPDには繋がりませんでした。
心子と兄は、 遺伝的にも生育的にも 異なっていたわけで、
ふたりの性質は 大きく隔たっていました。
でも結果的に、 ほぼ同じ命の長さに なってしまったというのは、
何という 運命のいたずらでしょうか。