(前の記事からの続き)
人を殺めた者に、 命を持って償わせる 死刑。
犯した罪に対する 刑罰の目的には、 次のふたつの 考え方があります。
教育刑 …… 刑罰は 犯罪者を教育・ 更生するために科す
応報刑 …… 刑罰は 犯した罪に相応する 報いとして科す
土本氏の恩師は 一貫して、 刑罰の目的は 教育刑であると主張していました。
土本氏は その教育刑論に共感し、
検事に任官する前は 死刑廃止を真剣に考えました。
しかし検事になって、 悲惨な事件を 目の当たりにするようになり、
教育刑は理想論だと、 死刑への疑問を 封印しました。
恩師はなぜか 死刑問題に限っては、 終生 多くを語らなかったといいます。
教育の主体をである 被告を抹殺してしまう 死刑は、
教育刑と矛盾するから、 なぜ恩師は 声を大にして 死刑反対を叫ばなかったのか。
今の土本氏は、 できれば 墓を掘り返してでも 聞いてみたいと言っています。
死刑への疑問を封印した 土本氏の心を、
死刑囚からのひたむきな手紙が、 再び揺さぶり始めました。
手紙には、 罪と罰、 被害者と加害者、 命というものを真剣に見つめ、
懺悔する 被告の言葉が綴られています。
土本氏は、 被告が社会に戻ったとしたら、
再び罪を犯す恐れは 一点だにないと感じます。
そういう人を 刑場へ送らなければいけないのだろうか?
〔 NHK・ ETV特集より 〕
(次の記事に続く)