「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

恩赦後、 音信不通 -- 更生への道 (2)

2010年06月29日 21時47分01秒 | 罪,裁き,償い
 
 保険金目当てに 知り合いの女性を殺害し、 無期懲役が確定した受刑者。

 13年後に仮釈放されますが、

 刑務所で義務を果たしたという、 自分本位の姿勢が見られました。

 担当の保護観察官は 受刑者に、 遺族の苦しみを 繰り返して説き、

 「月5000ずつ積み立てて、 10万円ためて 遺族に謝りに行こう」

 と提案しました。

 そして 事件から30年後、 受刑者は仏壇の前で 畳に額を付けたのです。

 遺族の男性は 穏やかに受け入れました。

 「申し訳ないという 気持ちが伝わった。

 怨んでも 死んだものが生き返るわけでもないし……」

 付き添った保護司は、 加害者と被害者でも 分かり合えるものなのだと 感激します。

 受刑者はそれから 10ヶ月おきに2回、 5万円ずつを渡しました。

 それを見て観察官は、 恩赦を申請します。

 恩赦の伝達式で、 受刑者は 初めての涙を見せました。

 ところが その頃、 受刑者の部屋で 被害者の位牌は ほこりを被っていました。

 恩赦を堺に、 保護司と会う 義務はなくなり、 音信は途絶えました。

 元受刑者は高齢で 仕事を続けられなくなり、 翌年以降は 遺族とも会っていません。

 遺族は、 あの謝罪は何だったのがと、 納得がいきませんでした。

 元受刑者は昨年 病死し、 荼毘に付されました。

 保護司は わだかまりが残ります。

 「償いを促し続ける 支えがなくなってしまったのは、

 彼にとって良かったのだろうか」

〔 読売新聞 「罪と罰 -- 更生への道」 より 〕
 
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