「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「死刑裁判の現場」 (2)

2010年06月18日 22時28分07秒 | 死刑制度と癒し
 
(前の記事からの続き)

 当時 この強盗殺人事件で 土本氏は、 事件を調査する 「捜査検事」 を勤め、

 その後、 裁判を担当する 「公判検事」 に 引き継ぎました。

 公判の詳しい内容は、 土本氏も知りませんでしたが、 新たに調べてみました。

 一審の判決理由は わずか2枚しかなく、

 あっさりしすぎていることに 土本氏は驚きます。

 通常 死刑判決は 何度も公判を重ねて、 慎重に議論が進められます。

 「罪責が重大で、 あらゆる情状を考慮しても なお、

 極刑が避けられない場合」 にのみ、 死刑が選択されるとされています。

 被告は前科がなく、 近所の人たちの評判は 非常に良いものでした。

 裁判では 少しも弁明することなく、 罪状を認めていました。

 罪を心から悔い、 自らは 控訴することもありませんでした。

 しかし その後、 弁護士に説得されて 書いた上申書で、

 被告は初めて 殺意を否認したのです。

 ナイフは 脅すつもりで持っていたこと、

 主婦に見つかり ナイフを取り上げられたこと、

 揉み合いになって 狼狽したこと、 無我夢中で 刺し殺してしまったこと、

 その瞬間  「しまった」 と思ったことが、 はっきり書かれていました。

 しかし翌年、 最高裁で 死刑判決が確定します。

 被告は獄中で、 被害者の命日に 読経して冥福を祈り、

 事件を起こした人物とは 一致しないようだったといいます。

〔 NHK・ ETV特集より 〕

(次の記事に続く)
 
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