民法テレビ番組の「外国人が尊敬する日本人ランキング」を見た。
内容は日本在住の外国人1000人弱に取材して尊敬する日本人をランキング形式に編集したものであり、番組を面白く編集する作為はあるかもしれないが興味深く鑑賞した。その中で、西郷隆盛や坂本龍馬が上位にランキングされていることには考えさせられた。尊敬する理由としては、日本人のアイデンティティを守ろうとした生き様や、国家の将来像を明確に把握していたことが挙げられていたのは注目すべきことと感じた。特に坂本龍馬は、先に高大連携歴史教育研究会(以下、「研究会」)が高校の歴史教科書で教育すべきとした提言に含まれていないために、”竜馬が消える”と取り沙汰された経緯がある。研究会は、単に教育項目を取捨して歴史教育のスリム化を図るための提言で、取捨選択に思想的な恣意は無いとしているが、明治維新以後を150年の侵略戦争と定義する油井会長をはじめとする研究会の歴史観に照らせば疑問とするものである。外国人が彼等の思想を学んで、自国民のアイデンティティ堅持や改革の指標としたいと述べていたのは、年表に従って事績を教えるのが歴史教育ではなく事績の背景と事績を為した人物を知ることによって被教育者の個性と将来に亘る精神的支柱を創造させるという、将に歴史教育の神髄を突いているものと思うとともに、研究会には決定的に欠けている思考と感じた。研究会を始めとする日本史学者について不満に思うことは、過去に「大化の改新」として教育された645年の中大兄皇子主導で行われた蘇我入鹿殺害事案を[乙巳の変」としたことである。厳密には大化の改新は翌646年の詔勅発布以後を指すのであろうが、一連の出来事であり蘇我殺害事件を別出しする必要性は無く、まして645年を中国式に表記することは極めて疑問である。なぜなら「乙巳」は十干十二支を組み合わせた表記法で、60年毎に出現するために645年をピンポイントに指すものではないからである(ちなみに2018年は戊戌(ぼじゅ、つちのえ・いぬ)。「文永・弘安の役」「平将門の乱」「本能寺の変」というように、事案の起こった元号・首謀者・場所等を冠して呼称することで、背景や当事者を浮き彫りにして情報の手っ取り早い共有が可能となると思う。日本史の一部を辛亥革命と同様に中国表記で呼称しようとする背景には、中国の歴史観と歴史家に阿る何かが作用しているのではなかろうかとさえ勘ぐるところでもある。
歴史教育に対する考えは、前に書いたことの繰り返しかとも思うが、在日外国人の言動を見て改めて書くものである。参考までに十干は(甲乙丙丁戊己庚辛壬癸)で、十二支は年賀状でお馴染みのところと思います。