もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

国連人種差別撤廃委員会と新疆ウイグル自治区

2018年09月18日 | 中国

 8月末の国連人種差別撤廃委員会でアメリカの委員がウイグル族に対する差別について意見を述べた。

 発言の大要は『新疆ウイグル自治区で100万人を超えるウイグル族が拘束されて収容所に収容されている』とするものであるが、50人を超える中国の大デレゲーションによる反論によって是正を求める決議にまでは至らなかったものの、珍しくも中国が『100万人という数は不当』としながらも『宗教的過激派に染まった者は移住と再教育の支援を受けている』と認めた。以後、収容所と収容対象者について幾多の報道を耳にしたが、収容者の選別については驚くものであるらしく最悪の場合、治安警察員が路上で2・3の質問をして収容の要否を判断する場合もあるらしい。密告制度と顔認証システム網によって各個人の漢民族に対する不満とイスラム教信仰の程度を把握した上での処置であろうが、スターリン粛清や文化大革命時でも曲りなりにも裁判という手続きがあったことを思えば、中国のウイグル人に対する弾圧と差別は言語に絶するものに感じられる。唯一比肩できるのはヒットラーのユダヤ人根絶思想と、都市生活者という理由だけで迫害したポルポト位ではないだろうか。新疆ウイグル自治区(中国は新疆省)は元来中国の領土とするには疑問な地域であり、蒙古族の元が統一するまでは“西域”と称され、漢民族と異なる民族と独立した文化のもとで生活していた別の国であったと思う。1949年以降、チベット侵攻とともに西域も中国の版図に組み込まれたが、当初はチベットと西域には1国2制度による現状維持が約束されていたにも拘らず、漢民族の膨張・入植に応じてなし崩しとなって現在の人種差別に至っているものと思う。いま香港が1国2制度の空文化に喘いでいることを見れば、漢民族の異文化・異人種支配は一定の法則があるもと考えて差し支えないものと思う。

 チベットと西域の帰属について正義を行うことができなかった国際社会としては、せめて同地域における人種差別に対する中国の横暴・無法は阻止しなければならないと思う。ライダイハンや原爆投下からは目を逸らし慰安婦と南京問題については声高に非難する国連人種差別撤廃委員会の存在価値が問われる時であると思う。しかしながら、慰安婦・南京に対しては当事国である日本のNPOやNGOの主張・活動が、委員会の決定に大きく影響しているとされるのは気がかりな一面でもある。