もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

クルド人の独立運動を学ぶ

2018年09月25日 | 歴史

 トルコのクルド人自治区の住民投票で、クルド人のトルコからの分離独立が90%の信任を受けて1年余りが経過した。

 住民投票前後にはクルド人国家の誕生に期待が寄せられたものの、関係国や列強からの根強い反対を受けて独立はおろか既得の自治権すらも圧迫・縮小されているらしい。この際にと思いクルド人について調べてみた。現在、クルド人が多く居住している地域は旧オスマントルコ領であったが、第一次世界大戦でオスマン帝国が消失した結果、英仏露によって引かれた恣意的な国境線でトルコ、イラン、シリアなどに分断されたものである。その後、第二次世界大戦後の1946年にソ連の後押しによって、現在のイラン北西部にクルディスタン共和国として一時的に樹立されたが、中東の混乱を嫌うとともに戦勝に寄与しなかったクルド人国家ということで西側連合国を始めとする国際的な承認は得られずに現在の状態に至っている。クルド人は、国連の推計で3000万人以上とされており、カナダの国民数にも匹敵する世界最大の流浪の民とも称されているが、ほぼ同時期に2回の世界大戦勝利に貢献したユダヤ人が連合国の後押しによってイスラエル建国をなし得たのとは対照的である。イラクとシリアがクルド人とクルド人独立運動に対して化学兵器さえ使用して弾圧を加えていることは確実視されているので、国連人種差別撤廃委員会がクルド人の問題に対してどのような対応を取っているかと調べてみたが確たるものは見つけることができなかった。ここで同委員会の気になる決議を発見した。それは、韓国や北朝鮮のように単一民族で構成される国は人種差別国家として非難していることである。これは多民族国家であれば国家内で人種差別が横行しても委員会の与り知らぬところとするものであり、ウイグル族やチベット族を抱える中国は人種差別のない国と認めていることに他ならない。これでは、同委員会がウイグル人やクルド人に対する差別・人権無視・弾圧に対して中国をはじめとする関係国に是正勧告を出さない理由が理解できた。現在進行形で生々しい政治が絡む人種差別に対しては無力であることを自認しつつ実績を誇示しようとするならば、発言力の弱い日本に対して慰安婦や在日朝鮮人問題を取り上げて是正勧告を繰り返す背景を見たような気がする。人種差別と言えば南アのアパルトヘイト政策やアメリカの公民権運動等が思い起こされるが、現在でもイギリスの北アイルランド紛争に見られるように人種差別に起因する分離独立運動は、先進国を含めて世界中に見られる現象である。

 クルド人問題を知ろうとしたことが、国連人種差別撤廃委員会の『単一民族による新国家樹立は人種差別であるために容認できないので、迫害を受けている民族は現体制下で耐え忍んで下さい。数十年後においてその事実が歴史となった時点で是正勧告をしてあげます』という退嬰的な現実を知る結果となってしまった。